初依頼
翌日、おれは朝から冒険者ギルドに赴いていた。
といってもすぐに依頼を受けた訳ではない。
昼間際まで昨日受付嬢に勧められた"解体と素材"という本を読んでいた。
この本のおかげで主な魔物の剥ぎ取り方が分かった。
そういえば素材を入れる袋を買ってないな。
狩りにいく前に買っておこう。
よし、そろそろ行くか。
「読み終わりましたのでお返しします」
本を管理する職員にそう告げ、依頼が張り出されているボードの前に行く。
えーと、五等級の依頼は常時依頼のゴブリンの討伐に薬草の採取。他にはドブ掃除や街中での荷物の運搬に迷子の猫探し……。
うーん。これって冒険者のする仕事なのか?マシなのが常時依頼しかないのだが。
本当に五等級は駆け出しなんだなぁ。
まぁいいや。ゴブリン討伐と薬草採取をやってみるか。
薬草はなぜか"解体と素材"の本にも記載されててどういうものか分かるし。
いや、初めての依頼だしここはゴブリン討伐だけにするか。
依頼書を剥がして受付へ向かう。
昨日と同じ受付嬢がいるのでそこへ並ぼう。
「この依頼を受けたいんだが」
「はい、ゴブリン討伐ですか。フォングラウスさん、昨日言うのを忘れていましたが、常時依頼は剥がさないで口頭で伝えるようにお願いします」
「そうか、それはすまない。それと呼び方はアルグラウンでかまわない」
「ではアルさんと呼ばせて頂きます。それと申し遅れました私はエリスといいます。何か困ったことがあったら気軽に話しかけてください」
「分かった」
「はい。では依頼の受注ですが、この用紙を持って行ってください。その用紙は冒険者ギルドの依頼中である証明になります。その用紙と冒険者証を門番に見せれば、入場税は取られません」
「ほう、それは助かる。ちなみにゴブリンはどの辺りにいるか分かるか?」
「ゴブリンは主に南の森近くに出没します。有益な素材は魔石と角ですね。討伐証明部位は右耳になります」
「そうか、ありがとう。では行ってくる」
「はい、行ってらっしゃいませ。頑張ってくださいね」
冒険者ギルドを出て、一旦宿の方へ引き返し、昨日見かけた雑貨屋で袋を買ってから門へ向かう。
ついでに昼飯を近くの屋台で済ませた。
門に近づいた所で依頼証を出そうとしたが、どうやら門番は出ていく者には税を取っていないようだ。
そのまま門を抜け、南の森の方へ歩いていく。
幸いそこまで距離があるわけではなさそうだ。
三十分ほど歩けば着くだろう。
さて、ゴブリンか。
話には聞いたことがあるが見たことはない。
親父や兄貴の話では魔物の中では最弱の部類で、一体に対し大人二人いれば一般人でも勝てるそうだ。
ならここは魔法ではなく剣術を試してみるか。
実戦は初めてだしな。




