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役得

「アル、怖すぎ……」


 ユースケが股間を抑えながら近づいてきた。

 なにをそんなに恐怖しているのだろうか?

 エリーに襲い掛かったんだし、まだこの程度でも生ぬるいくらいだ。


「アル様」


 む。もしやエリーにまで怖がられてしまったか!?

 もしそうだとしたらどうしよう……


「アル様」


 いくらエリーを襲った事への復讐だとはいえ、やりすぎたか!?

 残酷な人は嫌いですわとか言われたらどうしよう……


「アル様!!」


「はいっ!」


「助けてくれてありがとうございました。私、アル様が来てくださらなかったらどうなっていたことか……」


「いえ、大したことはしていませんよ。エリーなら自力でもなんとかなっていたかもしれ」


「アル様」


 なんだろう。

 エリーが話を遮ってきた。


「私一人ではどうにもなりませんでした。アル様が駆け付けてくれなかったら私は惨い事になっていたでしょう。素直に私の感謝の気持ちを受け止めて欲しいですわ」


「そう……ですか。では、エリーからの感謝を受け取っておきましょう」


「はい。それと、出来れば他の方に話すように普通に接してくれないかしら」


「それはどういう……?私は至って自然体ですが?」


 別にこの口調は無理をしてしている訳ではない。

 単に余所行きの口調というだけだ。


「そうかしら? あの方々と話しているアル様は殿方らしくて格好良かったですわ。そちらが素ではなくて? 出来れば私もあのように接して欲しいですわ」


 そう言って、エリーはユースケ達を見る。

 あの命令口調を言っているのか?


 確かにあれが素かと言われれば、そうだろうが、あんな話し方をエリーにしてもいいのだろうか?

 まぁ、そのエリーが望んでいるのだが。


「お願いしますわ、アル様」


 そこまで言われたら仕方ないだろう。

 だが、出来るだけ紳士的な対応を忘れないように心がけよう。


「分かった。これでいいかエリー?」


「はいっ! これですわ! あぁ、なんて新鮮なのかしら」


 新鮮?

 こういう話し方をされた事がないということだろうか?


「それで、エリーはなんであんな状況に陥っていたんだ?」


「それはですわね……最初は様子見のつもりでしたの。階層主の部屋は扉が閉まると出れなくなると聞いていたので、荷物を挟んでいつでも戻れるようにして中を伺ってみましたの」


 そういえば扉に革袋が挟まっていたな。


「ですが、中にいたのは色が違うとはいえ、ゴブリンでしたので、思い切って入ってみましたの。どちらにしても倒さなければいけませんし。」


 レッドゴブリンを普通のゴブリンと同一視してしまったという訳か。

 しかし、実際には……


「ですが、思ったよりあの赤いゴブリンは速くて、魔術を放つ前に迫ってきましたの。だから私、逃げ回って、そうしているうちに入り口から離れてしまって、そして……うぅ……」


 確かにレッドゴブリンは、ゴブリンキングやゴブリンアサシンには及ばないが速かった。

 前衛無しに、魔術師だけであいつらを相手取るのは大変だろう。

 敵は五匹もいるのだし。


「そうか。怖かったな」


 そう言っておれはエリーの頭をなでる。

 少しでも恐怖が和らげばいいのだが。


「あぁ、怖かったですわアル様!」


 エリーは抱き着いてきた。

 余程怖かったのだろう。

 役得、役得。

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