骸骨
現れたのはスケルトンだった。
「これが五階層の魔物か」
「やっぱりいたんだなスケルトン」
「うぅ……」
「フェミリア、あれは魔物だ。お化けじゃない」
スケルトンはあくまで魔物の一種だ。
金になる素材がない上に、魔石まで骨の中にあって取り出すのが大変だから、冒険者には嫌われている存在だ。
「先手必勝! 氷投槍!」
ユースケの魔術が三体いるスケルトンを全て巻き込むように命中した。
「よっし! やりぃ!」
「ユースケ! まだだ!」
「え?」
一度はバラバラに崩れ落ちたスケルトンだったが、逆再生でも見るかのように、骨が浮かび上がり元の形に戻っていく。
「スケルトンは頭蓋を破壊しない限り再生する! 狙うのは頭だ!」
「よし! 分かった! 今度こそ……氷投槍!」
今度は一体に狙いを定めたようだ。
氷の槍は真ん中のスケルトンの頭に命中した。
頭蓋骨が粉々に砕け散り、胴体も力を失ったように崩れ落ちる。
これで残るは二体。
おれは駆けだして残り二体のスケルトンの頭を纏めて剣で薙ぎ払う。
「おおりゃああぁ!!」
斬る事は出来なかったが、無事にスケルトンの頭蓋骨は砕け散った。
大した強度はないようだ。
だが、おれとユースケの攻撃は良くとも、フェミリアには相性が良くないだろう。
「スケルトンは大した強さではないが、フェミリアの短剣では分が悪いだろう。この階層はおれとユースケが主体で行くぞ。フェミリアは索敵と罠の発見に注力してくれ。戦闘になったら後ろに下がるように」
「うぅ、分かった……」
どこかほっとした様子でフェミリアが頷く。
まだ怖がっていたのか。
魔物には怯えないで、お化けを怖がるとは変わった奴だ。
いや、女とはこんなものか?
エリーもお化けは怖いのだろうか?
おれは思考がエリーに向かうのを自覚し、頭を振って気持ちを入れ替えた。
ここは迷宮だ。集中しなくては。
「この骨は売れそうにないな……」
ユースケがぼやいた。
まぁ、気持ちも分からないでもない。
罠ばかりで魔物が出てこない四階層に続いて、金にならないスケルトンが出る五階層だからな。
こんなのばかり続いてもらっては、冒険者稼業も上がったりだ。
「そうだな。魔石も取り出すのは大変そうだし、骨だが悪魔の餌にするか」
おれはアイテムバッグにスケルトンを仕舞った。
そういえば、悪魔達は成長しているだろうか?
休憩の時が楽しみだ。
「さて、進むぞ」
おれ達は迷宮探索を再開した。
先頭を行くフェミリアが、スケルトンが怖いのかへっぴり腰だが、こればかりは我慢してもらうしかないな。
おれ達の中で罠を発見できるのはフェミリアだけなのだから。




