五階層
「二人共、今日は五階層だ。階層主なる魔物が出るそうだから、いつにも増して気を引き締めておいてくれ」
「おう!」
「了解」
やる気は十分だな。
昨日の報酬が効いているのだろう。
オーク肉の金貨六枚と、ミミックの金貨三枚で合計金貨九枚が昨日の儲けだ。
ユースケには一割の大銀貨九枚を渡すところを、おまけして金貨一枚渡した。
一日で金貨一枚だ。
給料として月に大金貨一枚渡してる上に、ボーナスとして一日で金貨一枚だから十分だろう。
フェミリア共々、昨日は宿で夕食を取らずに、外食に出かけていた。
ユースケは貯金出来ないタイプだな。
おっと、忘れずに借金の返済もして貰わないとな。
だが今の給金から引くと、損したような気になるだろうし悩むところだ。
どうするべきか……
いつかデカい稼ぎをした時に引くことにするか。
「おいアル、お前が集中してないでどうすんだよ」
ユースケに注意されてしまった。
不甲斐ない……。
気持ちを入れ替えるか。
今は金の事は忘れよう。
「すまん。もう大丈夫だ。行くぞ! 五階層へ!」
浮遊感の後、転移の光が収まると、やはりそこは洞窟だった。
「また洞窟か」
「たぶん、次の階層から変わると思うぜ。その為の階層主なんだろ」
ふむ。ユースケの言う事にも一理あるな。
ならますます張り切って階層主を倒さないとな。
「きのこ生えてる」
ん?
フェミリアの視線の先をたどると、確かにきのこが生えていた。
「これ、食えんのか?」
「分からん」
「アルでも知らないのか……」
なんだ、ユースケ。
おれだって何でも知っている訳ではないぞ。
「くんくん。たぶん食べれる」
フェミリアが匂いを嗅いで断言した。
信じていいのだろうか?
「そう言うなら一応採取しておくか」
おれ達はきのこを採取しながら進んだ。
そんなに大量にある訳ではないが、一定の間隔で生えている。
普通こういうものは纏まって生えているものだと思うのだが。
なぜ少量ずつ一定間隔毎に生えているのだろう。
一体迷宮の生態系はどうなっているのか。
まぁ、考えるだけ無駄か。
「ん。前から音がする。敵かも。だけど、匂い感じない」
フェミリアが何か感じ取ったようだ。
全員その場から動かず、静かにしていると、確かに前方からカタカタと音が聞こえる。
魔物だろうか?
「なにかいるな。フェミリア、おれ達の傍へ来るんだ。纏まって動くぞ。慎重に少しずつ進むんだ」
おれ達が進んでいると、前方の音も近づいてくる。
動いているな。やはり魔物か。
ある程度進んだ時、敵の姿が見えた。
「お化け!?」
フェミリアが怯えている。
ふむ。骸骨か。




