階層主
「おぉ! すげえ! たった一匹で金貨三枚だなんて!!」
ユースケが喜んでいる。
確かに一匹でこの金額だとおいしい。
オーク一匹の何倍もの価値だ。
「それで構わない。買い取ってくれ」
「はいよ。こいつは依頼にないから、金はここで渡す」
そう言ってオースは金貨三枚を渡してきた。
どうやら依頼とそうでないのとで、きっちりと分けるようだ。
「なぁ、アル! 明日からこいつ狙いでいかねぇ? 一匹で金貨三枚なんだ! 沢山倒せば大金が手に入る!」
「馬鹿かユースケ。こいつは散々四階層を彷徨って、唯一出会った魔物だ。そんなに沢山どうやって見つけるんだ。それに、傷つけることなく倒せたのも偶然だ。次回はあんな上手くいかない。大人しく五階層に進んだ方が賢明だ」
「そっか……。うーん、仕方ねぇか」
ユースケは大人しく引き下がってくれた。
こいつは馬鹿だが素直だからな。
道理を説けばちゃんと分かってくれる。
「なんだ、お前ら五階層に進むのか。五階層には階層主がいるから気をつけろよ」
階層主?
なんだそれは?
「階層主ってのは、五階、十階、十五階と、五階層毎にいる普通より強い魔物の事だ。こいつらを倒さねぇと次の階層へは進めなくなってる」
「そんな魔物がいるのか……」
「まぁ、ダンジョンにボスがいるのはテンプレだよな」
「頑張って倒す」
「まぁ、五階層の階層主はそんなに強くねぇはずだ。確かレッドゴブリンっていう、ゴブリンの亜種が五体だったか。連携してくるからソロじゃ厳しいだろうが、お前らみたいにバランスの良さそうなパーティなら問題ねぇよ」
そう言ってオースはガハハ笑う。
レッドゴブリンか……。
まだ戦ったことがない相手だが、ゴブリンキングより強いという事はないだろう。
それにオースも問題ないと言っているのだ。
たぶん、大丈夫だろう。
もちろん油断はしないけどな。
オースに礼を告げて、ギルド内へ戻った。
これから報酬の為とはいえ、受付の行列に並ぶのは嫌になる。
オースの所で依頼報酬まで貰える仕組みになればいいのに。
まぁ、普通の冒険者はアイテムバッグなんて持っていないだろうから、素材だけ剥ぎ取って持ってくる。
そのくらいの量ならこの受付でも十分なのだろう。
おれは思わずため息をついた。
「アル、あれ」
「ん? なんだユースケ?」
ユースケが指差す方を見ると、服が土まみれのエリザベスがいた。
よく見ると小さく破れている所もある。
体中傷まみれってことだ。
大変だ!!
「エリザベスさん!?」
おれは慌てて駆け寄った。




