偽宝箱
四階層はあの後、結局罠ばかりで魔物も出ず、無事に転移魔法陣を見つけることが出来た。
だが、結構な時間が経っていたので、おれ達は五階層には進まずに、地上へと帰還した。
「オークが三十匹か。魔石は抜かれているな。という事は依頼の肉だけか。一匹分丸々あるし、この量だと金貨六枚ってとこだな」
おれ達は今ギルドの解体場の受付に来ている。
オークは肉が食用素材なので、もしやと思って掲示板を探したら依頼があった。
なので、ギルドの通常の受付で処理しようとしたところ、こんな所でそんなに出さないで下さいとオークの死体を取り出している時に言われて、結局裏手に来ている。
ここで討伐証明を書いてもらい、後に通常の受付で報酬を貰うという仕組みらしい。
面倒くさいが、依頼を受けないとオーク肉の買取価格は下がるだろうし、仕方ない。
男がサラサラと紙に何かを書き、渡してくる。
見てみると、[オーク肉金貨六枚 オース]と書かれていた。
そのままだな。
オースというのはこの男の名前だろう。
筋骨隆々のスキンヘッドの男だ。
どこかの猫好きと被っているが、顔は奴ほど怖くはない。
これからも世話になるだろうし、名前くらい覚えておこう。
「オースというのか。おれはアルだ。これからも世話になる」
「おれはユースケだ! よろしくなオースのおっちゃん!」
「フェミリア」
各々自己紹介する。
親しくしとけば便宜を図ってくれるかもしれないしな。
「おう! オースだ! よろしくな!」
オースが差し出してきた手を握り返したところで、ユースケが発言する。
「なぁ、アル、あれ出さねぇのか?」
「あぁ、そうだな。オース、これは買取可能だろうか?」
そう言っておれは、アイテムバッグからミミックの死体を取り出した。
「これは……!?」
オースが驚いている。
まぁ、冒険者がミミックの死体を持ち込むのは珍しいのだろう。
普通に倒せば、傷だらけか、大破するからな。
「運よく傷つけることなく倒せたんだ。外見は綺麗な宝箱だし、買取出来ないか?」
「あ、あぁ。もちろん買い取らせて貰うぜ。ちょっと加工すれば売り物になりそうだしな。欲しがる奴はいるだろう。今まで買い取った事がないから、おれの目利きになるが構わないか?」
「大丈夫だ。頼む」
そう言うと、オースは真剣に箱を見分し始めた。
外だけでなく、中もだ。
見るだけではなく、手で触って確認もしている。
五分ほど経った頃、オースが顔を上げた。
「いくらか小さな傷もあるが、まぁ、それは構わねぇ。おれの見立てでは金貨三枚ってところだが、どうだ?」
おぉ、結構な金額になったな。




