本性
翌日、おれ達は迷宮の三階層に来ている。
昨日はあれからユースケが何かとぶつぶつ言ってうるさかった。
それは日付が変わってもそうだったが、今は迷宮だ。
流石にユースケも黙って迷宮に集中している。
いい心掛けだ。
「来た」
フェミリアが敵の接近を告げる。
三階層の魔物はオークだ。
今更オークなんぞに苦戦するはずもなく、サクサクと倒していく。
オークの肉は売れるので、倒した死体はきっちりアイテムバッグに収納する。
途中罠もあったが、フェミリアが事前に察知し、無事回避する事が出来たおれ達は、迷宮に入って三時間程で運よく転移魔法陣を見つけた。
「ここで一旦休憩だな」
前日のように、見張りに悪魔達を召喚したおれは、違和感に気付いた。
悪魔達が一回り大きくなっているのだ。
「どういうことだ?」
おそらく昨日ゴブリンの死体を与えた事が関係あると思うのだが、ゴブリンの死体なら以前も与えた事がある。
それに前世でも、ここまで急に成長する事はなかった。
この違いはなんだろうか?
ゴブリンの死体が急成長する程有益なら、以前与えた後も成長していておかしくはないはずだ。
以前との違い……あっ!
魔石か!?
以前は魔石を取り除いた死体を与えた。
そして今回は、魔石はそのままだった。
魔道具の燃料となる程に魔力が含まれているのが魔石だ。
前世では存在が確認されていなかった魔力だが、悪魔も"魔"に列なる者として魔力を糧に成長したっておかしくはないだろう。
試しに魔石だけを与えてみよう。
おれはアイテムバッグからオークの死体を取り出し、魔石を抜き取っていった。
「これで最後か」
全ての死体から魔石を取り出したので、それを悪魔共に与える。
これで次召喚した時に成長していたら、確定だろう。
「ふぅー。休憩中になにやっているんだおれは」
これでは休憩になっていない。
休憩時間を延長するか。
「ユースケ、フェミリア、今回の休憩は少し長くとるぞ」
「了解。なんか魔石回収してたけど、どうしたんだ?」
「あぁ。悪魔は血肉を貪って成長するんだが、いつもと比べて成長率がよかったんだ。それで魔石が原因だろうと思い至って、ちょっとした実験をしてるのさ」
「へぇ。そいつら成長するのか。いいなぁ。おれも可愛い使い魔欲しいぜ」
可愛い?
この悪魔共が?
「ユースケ、悪魔はあくまで動物に擬態しているだけだ。実態は薄汚い化け物だ」
「それシャレ? 寒いよ?」
……。
「悪魔よ、ユースケにその本性を見せてやれ」
おれの命令に従い、悪魔達はユースケの前に移動して擬態を解いていく。
おれは顔を背けた。
「う、うわあああぁあぁあああぁーーー!!!」
ユースケの悲鳴が木霊する。
悪魔の本当の姿を見て驚愕しているのだろう。
え? どんな姿かだって?
それは知らない方がいいぞ。
勝手に想像してくれ。




