落ちる
「ちょっと! 私の報酬がこれっぽっちだなんて、どういう事ですの!?」
「だーかーらー、あんた新米じゃん。銀貨三枚もあげてるんだから感謝して欲しいぐらいよ」
「な、なにをおっしゃいますの! これじゃ宿にも泊まれませんわ!?」
「知らねーよそんな事。男のとこにでも転がり込めばいいんじゃねーのキャハハ」
「なんて破廉恥な!?」
どうやら女冒険者同士で言い争っているようだ。
どうでもいいが、大声を出さないで欲しい。
女の喚き声は耳に響く。
「不快だ……」
「お、おい、アル、落ち着けよ。顔が怖いぞ……」
ユースケが心配してくる。
おれが何かやらかさないか不安なのだろう。
だが、まぁ、別におれは絡まれてもいないのに、自分から面倒事を起こしたりはしない。
用も済んだし、ここは立ち去ればいいだけの話だ。
「だいたい、あなた達は私に任せっきりで、碌に戦闘もしていないじゃありませんか!? それなのにこの報酬の配分はおかしいですわ!」
「なんだと? あたい達がサボってたとでも言いたいのかい?」
「三等級だからとパーティに入りましたけど、本当は実力がないんじゃありませんこと?」
「なんだとコラァ!?」
「キャッ!?」
おれがギルドから出ようとすると、誰かが人込みから飛び出してぶつかってきた。
さっきから大声で垂れ流されている会話を聞くに、報酬が少ないと言っていた女が、他の女たちに押し飛ばされたのだろう。
イラっとした。
喧嘩なら外でやれ。
ここは両方纏めて魔法の餌食にしてやろう。
「お前ら、いい加減に……」
そこで、倒れている女を見た。
いや、見てしまった。
縦ロールの金髪に、透き通るような緑の瞳。
全体的に均一の取れた顔。
スレンダーだが、出るところは出ている体つき。
剣なんてとてもじゃないが振れそうもない、細い腕。
真っ白な肌。
「おい、アル! キレてるのは分かるが、相手は女の子なんだ。落ち着いて……」
「大丈夫ですかお嬢さん?」
「はぁ?」
ユースケうるさいぞ。
おれは今忙しいんだ。
おれは、倒れている女性にそっと手を差し出す。
「っ!? す、すみません。ありがとうございます。ぶつかってしまい、申し訳ありませんわ」
「いいえ、お気になさらずに。あなたのせいではありません」
そう言って、おれは言い争っていた女冒険者達をキッと睨む。
「な、なんだよ! あたいらの揉め事に、出しゃばってくるんじゃ」
『サレット』
おれは問答無用で魔法を使い、女達を黙らせた。
「さて、これでようやく静かになりました。お怪我はないですか?」
おれは可憐な女性に問いかけた。




