3-20
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書類仕事をなんとか片付けた頃には、日はすっかり暮れていた。
机の上を片付けることもせず、書き終えた書類をゴウの机に置いて、帰路につく。
遅くなってしまった。スグはお腹をすかせて待っているだろうと思うと、以前と早足になった。
だが、そんな彼を、ちょうど通りかかったゴウが呼び止めた。
「ちょっと待て」
「なんですか師匠。俺急いでるんです」
「いや、スグの試験のことなんだが」
と、ゴウの口からスグの名前が出たところで、俺は立ち止まった。
「何かあったんですか?」
「それが、スグが試験を辞退したそうなんだ」
「……なに?」
俺は驚きすぎて目眩を覚えた。
「辞退? なんで?」
「いやわからん。だが、試験を受ける前に監督官に申し出て、試験をそもそも受けてないらしい」
意味がわらからない。名前さえ書けば合格するのに試験を辞退するなんて。一体何が起きたんだ。
ふと頭をよぎったの――もしかして烏崎にでも脅されたか? じゃなきゃ試験を辞退するはずがない。
「今スグはどこに?」
「それは知らないが、多分武衛府にはいないぞ」
俺は何も言わず、走り出した。寄り道をするような場所はないはずなので、多分自宅に戻っているはずだ。
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