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3-5


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 試験の三日前の夜、ようやく後任の武人が街に現れた。

 それでようやく俺たちはお役御免。

 翌朝、太陽が登りきる前に村を出た。

「飛ばすぞ」

「はい」

 街までは二日。試験まで余裕はない。万が一到着が遅れれば、試験を受けることはできない。

 俺たちは、都への道を全速力で駆け抜けた。

 最低限の休息で、ひたすら無駄口も叩かずに、馬を走らせる。

「ちょっと待ってください」

 突然、スグが馬を止めた。

「なんだ」 

「あそこ、みてください」

 スグの細い人差し指が指す先に目をやると、黒い煙が数本見えた。

「何かあったんじゃないですか」

 確かにちょっと不自然ではあった。この辺りには大きな街はなく、あるのは小さな村だけだ。普通に風呂を沸かしたり、飯を炊いているにしては、煙が大きい。

「確かにそうだけど、時間がない」

 俺が言うと、スグは険しい表情を浮かべて言った。

「距離的に大したことないです。様子を見るだけ見に行きましょう」

「おいおい、何言ってんだ」

 舌打ちする。

 こいつ、どこまでお人好しなんだ。

「火事でもあったんだろう。剣で火事は止められない。俺たちにはどうしようもないさ。先を急ごう」

 俺がそう言っても、スグは煙をまっすぐ見たままだった。

「嫌な予感がするんです」

「おいおい、試験まで時間がないんだぞ?」

「あそこまで行くだけなら、まだ間に合います」

 確かに、あそこに行って帰るだけなら間に合う。だが、それは本当に「行って帰るだけ」ならの話だ。

 もし何か足止めを食らったら、試験には絶対に間に合わない。もし誰かがそこで困っていたとして、それを助けている時間はないのだ。

 逆に、何も不幸が起きてなかったとしたら、単に時間の無駄になる。

 どちらでも俺たちが得することはないのだ。

「行きましょう」

 だが、スグの意思は変わらない。

「おいおい、マジかよ」

 と、スグは俺が渋るのを無視して、馬を煙の方へ走らせた。

 ――全く、どこまでバカなんだ、こいつは。


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