3-1
街を魔物が襲ってからも二週間は、本当に穏やかな日々が続いた。
俺は直接確認してはいないが、街に毛皮を売りに行っている村人に聞いたところでは、壊されたり火事で燃えた建物も、少しずつ復旧されているそうだ。
一安心、と言ったところだろう。
「スグ、今日は出かけるぞ」
その日、朝ごはんを食べた後俺はそう宣言した。
「天羽へいくんですか?」
スグの予想は外れだった。
「いや、国都に行く」
弓の国の国都は、天羽から四半日ほど馬を走らせた場所にある。日帰りも十分に可能な距離だ。
「国都に?」
「弟子入りの儀式をするんだ。俺の姉に会いに行く」
俺がそう言うと、弟子は少し表情を濁らせた。
「天羽を守るのがわたしたちの任務なのでは?」
「国司の命令で街を追い出されたんだ。一日くらい街の近くを離れてもバチは当たるまい。街には烏崎もいる。無能なやつだが、一応剣師様なんだから街は彼に任せれば良い」
俺が言うと、スグは完全に納得した様子ではなかったが、しかしそれ以上抵抗はしなかった。もしかしたら、師匠として少しは信用されてきたのかもしれない。
「すぐに準備してくれ。昼には着きたいんだ。先を越されたら最悪だからな」
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