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2-5


 天羽にやって来た翌日、村に突然の来訪者があった。

「おーい。誰か出てこい」

 辺りにバカみたいな大声が響く。

 何事かと外に出て、声がした方に歩いていくと、村の入り口に馬車が止まっていた。

「平伏せ、賎民ども!」

 ぶしつけ呼び出されて、挙句頭を下げろ命令される村人たちを見て、全くどこのバカ貴族が現れたのかと思った。だが、声の主を見ると、そこには知り合いの姿があった。

「おいおい、平伏せと言っているだろ……」

 と俺にそう言いかけた貴族は、俺の顔を確認するや、驚いた表情を浮かべた。

「なんだ、白河リュウじゃないか。なんでこんなところにいるんだ」

 声の主は、烏崎ハルだった。その後ろには、烏崎の弟子になった、例のボンボン娘、御堂ユキの姿もあった。

「それはこっちのセリフだ。なんでお前がここに」

「馬車が壊れてな。それでこの村が見えたものだから、直してもらおうと思って」

 なるほど、後ろを見ると、確かに馬車の車輪が一つ壊れていた。それでも無理やり引っ張ってきたからだろうか、馬車を引く二匹の馬を見ると、どこか疲れているようにも見えた。

「いや、俺が言ってるのは、なんでお前が弓の国にいるのかってことだよ」

 もう答えはわかりつつあるのだが、あえて聞く。すると思っていた通りの答えが帰ってきた。

「なんでって、天馬を守る任務のためさ」

 なるほど、俺以外にもう一人街を守る任務に就くといっていたが、結局こいつが任されたのか。

「お前こそ、なんでこんなところにいる? お前も天羽を守る任務を任されたんだろ?」

「色々あってな。この辺りで見張りをしているんだ」

 俺が言うと、烏崎は「ああ」と一人で納得したようだった。

「大方、赤眼の弟子なんて連れてるから国司に嫌われたか。まぁ無理もない。お前たちのように貧しい者たちには、賎民の村がお似合いだな」

 烏崎は息を吐くように俺たちを煽ってくる。全くもって、今すぐ殺してやりたいくらいだが、しかし相手にするだけ無駄だ。

「まぁ、お前ほどの(・・・・・)武人がいれば街も安泰だな。貴族同士、国司殿とせいぜい仲良くやって、街を守ることに精を出してくれ」

 俺はそう言って踵を返す。これ以上やつの顔を見ているのは不快だった。

 いつか大将になった暁には、真っ先に流刑にしてやると心に誓った。


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