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それから数日を実験に費やした。
物理的手段にも手を出した。高温の炎で原石を融かして土魔法で作った鋳型に流し込み、冷やし固めるという方法だ。しかし、最初の融かすという段階で既に挫折した。融ける前にぼろぼろに崩れてしまったのだ。
簡易ウォーターカッターで削る方法。これもうまく削れず砕けてしまった。
その割に地道に研磨しようとするとヤスリのほうがすり減るだけ。
小さな原石ばかり使っているとはいえ、こう大量に破壊しては在庫も減ってくる。そんなわけで、今日はセルガと一緒にいつも原石を譲ってくれる宝石商のもとを訪ねている。
一応丁度いい形の原石がないか探してみるが、見つからない。
そもそもこんな加工しにくいものをどうやって球状に加工しているのだろうか。まさかこんな綺麗な球体の状態で産出されるのか?
「原石って、どういう状態で採掘されるんです?」
「既にこの状態になっているか、あるいは石の中に入った状態のまま取引されますな」
宝石商によると。原石が石の内部でどのような形で存在しているのかは正確にはわかっていないのだそうだ。何故かというと、原石は採掘されて空気に触れた瞬間に丸みを帯びたなめらかな表面の、つまり出回っている原石のような状態に勝手になってしまうから。原石がこぼれ出た後の石の残骸を見るに、採掘される丸い状態で存在しているわけではないことはわかっているものの、液状で存在しているのか固体なのか、あるいは気体なのかわかっていない。そのため"この石の中に高確率であるだろう”という前提でギャンブル的に取引されることもあるそうだが、そんな賭けをする人が多いわけもなく、その数は極端に少ない。
一応この店にもそういった石はあるとのことで見せてもらったが、なんの変哲もないただの石にしか見えなかった。石を割ってみて大きな原石が出てきたらラッキー、何も出なかったらアンラッキー。完全にギャンブルだ。とはいえ、それならそれで試してみたいことはある。
ギャンブル石を5個購入し、ついでに減った原石も補充して屋敷に戻った。
ちなみに霊石は無駄に実験ばかりしてるわけではなく、ちゃんと魔導具も作って小遣い稼ぎはしている。それなりに人気があるのがドライヤーもどきだ。作りが簡素でコストがあまりかかっていないのだけれど、元々魔導具は庶民向けの商品ではない。お金の有り余ったご家庭では身だしなみにそれなりのお金を使うのだろう。私なら50万円もするドライヤーなんて絶対に買わないけど。
あとは水を入れてセットするとお湯が湧く電気ポットもどきを売ってみたり、水道の魔導具の魔法付与のアルバイトもいいお小遣いになっている。権利などは売り払ったので、本当に魔法付与の技術のみのお値段だが、それだってできる人が多いわけではないので仕事に困ることはなかった。
資金には余裕があるので、ギャンブル石にも手が出せたわけだ。
さて、早速ギャンブル石を割ってみようと思う。
空気に触れると、という条件が本当に合っているのか多少の疑問はあるが、ならば真空条件下で割ってみればいい話。
机の上に石を置き、魔法でその周りの空気を排除する。排除し続けるのは集中が必要だし疲れるので、急いでその石の真上からノミを当て、ハンマーで叩く。
・・・まさかのハズレである。念の為もう少し細かく砕いてみたが、原石は出てこなかった。残念。
2個め。同じようにして割ってみると、石の断面に何かが入っていたような空洞のあとが見えた。原石は転がっていないが、砕いた石をどけてみると、そこには水銀のような質感のぷるんと丸い液体が。
これを空気に触れさせると固まって原石になるのだろうか・・・周囲の空気全てを排除していた魔力をコントロールして、原石の一部分だけが触れるように、じわじわと空気を戻していく。ほんの一部分の真空の層がなくなると、銀色の液体全体が一気に固まって、透明になった。
一箇所でも空気に触れると完全に固まってしまうらしい。
しかし、怪我の功名とでも言おうか、私にとっては非常に有難いことに、机の上に置かれた状態で固まったその原石は、底の部分は平で上部は丸い理想形である。これなら形を整える必要がないので、どんどん割ってどんどん固める。
ギャンブル石の中に超大当たりはなかったが、大小様々な原石が加工しやすい形で誕生。大きいもので直径3cmほど。小さいものは、購買で買えるようなものが多数。1cmから1.5cmの使いやすいサイズのものは少ないが、それでも4つをゲットした。5個のギャンブル石からこれだけの成果が出るなら十分だ。今度お願いして仕入れておいてもらおう。
1.5cmサイズのものを指輪に使おうかな。まずはこれを最上級の霊石に変えるところからだ。




