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翌、ソルの日。付与魔法の実習の内容は前回と同じ。既に杖を完成させた私は実質自習の時間だ。
追加でもらった5つの霊石を前に、私は悩んでいた。
霊石には既に魔力を注ぎ込んであって、青、紺色、濃紺、透明感のある黒、そして透明感すらない黒にそれぞれ色が変わっている。これらに同じ魔法を付与して、出力の違いを見るのが目的だ。
悩んでいるのはその方法についてだ。杖があるのでトーチを作るのが一番楽ではあるのだが、光の強さは光量を測る機械がない以上、感覚的に評価することしか出来ない。できれば数値化したいのだ。
数値化できるものは、長さ、時間、重さ、体積・・・
いくつか案は考えた。早く動く魔法を付与してタイムを測る、遠くまで移動する魔法を付与して距離を測る、あるいは重さを増す魔法を付与して重さを測る、などなど。
「よし」
方針を固めて、私は家から持ってきた真鍮のインゴットを取り出す。昨日の残りである。
自分の魔力を鋳型にして、インゴットを薄い円盤型に加工する。一部は厚みを残し、霊石をはめる溝を作った。ちなみに授業とは関係ないことをする許可は取ってある。
同じものを、5つ。
そして5つの霊石に、円盤の上に乗せた物を10cm程度浮遊させる、という魔法を付与。これは全く同じイメージを付与できるように連続して一気に行った。
円盤の溝に嵌め込み、淡く光ったことを確認。よし、魔導具自体は出来た。
試しに上に霊石を入れていた巾着袋を乗せてみる。5つ全ての円盤に乗せてみたが、同じくらいの高さにしっかりと軽い巾着袋が浮かんだ。
あとは少しずつ乗せるものの重さを変えて、それが浮遊できなくなるまで増やしていくつもりだ。取り敢えず残りの真鍮を円盤より一回り小さい円筒状に加工。
できるだけ高さを出したいので、残っていたインゴットは全てこの円筒を作るのに使用した。
直径10cm、高さ1mくらいの円筒ができる。
これに水を注いでいけば、水位だけ測って比較ができるはず。
嬉々としてそんな実験を続ける私を、ガルヴァが面白いものを見る目で見つめていた。物好きだな、とか考えているのだろうか。いいじゃない、リケジョ舐めんな。
真鍮製のあれこれが完成したところで、水を注ぐ道具が無いことに気づいたが、どうにでもなる。魔法で水を作れるのだから道具などいらないのだ。
徐々に水を注いで、重さに耐えきれず容器が下に敷いた円盤に触れたところで水位を測る。定規はあるので大丈夫。欲を言えばメジャーが欲しかった。
早速測定を開始。見本のままの青い霊石では1cmに満たないくらいですぐに容器は落下してしまった。紺色で10cm弱、濃紺のもので35cm。黒い霊石のものは、2つとも測定不能。・・・容器の高さが足りなかったのだ。これは想定外。
取り敢えず濃紺までの3つのサンプルの結果は、「魔導具の出力は霊石に注いだ魔力の量に対して指数関数的に増える」というもの。魔力量は魔力を注いだ時間を単純に比較しただけである。つまり小さな霊石でも、時間をかけた分だけ効率は飛躍的に上がる。10倍の時間を掛ければ100倍の成果が上がるということだ。
うん、すごくすっきりする実験結果が出た。満足。
実はこの実験を急いで行ったのには理由がある。
ひたすらに魔力を込め続けていた黒い霊石に変化があったのだ。光沢のある黒い石のようであったその表面に、白い光が星型に見えるようになった。中心に小さな光源があるかのように。
地球でも写真とかで見覚えがある、猫目石の星型バージョン?確かスターサファイヤとかそういう名前の宝石があったはず。
その光が入っただけで、霊石は非常に美しい宝石のようになった。多分アクセサリーとして売り出しても需要があるだろうと思うくらいに。
もっと魔力を込めれば光が強くなったり、あるいは完全に白く光る石になるのかもしれないが、割れる可能性があると思うと勿体なくてそれ以上注ぎ込むのをやめてしまったのだ。別にまた作ればいいのだけれどね。どうせならもっと大きな原石を使って。
とはいえ、霊石の性能にも期待が持てる。具体的にどれだけの差が出るのか、その霊石を使う前にある程度知りたかった。実現可能な範囲にも影響が出るだろうし。
そんなわけで実験を行ったわけだが、その結果から言うならば、見本の霊石の1000倍以上の出力が予想される。これを使えば相当な物が作れそうだ。
折角見た目も綺麗なので、身につけるもので何か作りたい。アクセサリーにしてもいいし、あるいは時計とか、バッグとか・・・
色が黒なので、これで大きかったらちょっと無骨なデザインのアクセサリーにも合いそうだ。石が小さいので現実的なのはピアスとか指輪とかペンダントに限られてくるのが残念。
魔導具にするなら霊石に触れる必要があるから、指輪が一番だろうか。
問題はどんな魔法を付与するかだが、これがなかなか思い浮かばない。
アイディアを出すのって、難しい。




