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世界樹は夢を見る  作者: 深月
アルディア第一学園
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「お嬢様がお探しなのは、真鍮の管、でございましたか?」


「ええ。理想を言えば、長さがあって他の管と折れ曲がってつなげるようなジョイントがあれば、それも」


目的のものは、驚くほどあっさりと見つかった。既に真鍮のポンプが普及しているのだからあってもおかしくはないと思っていたが、あまりにあっさり過ぎて拍子抜けしてしまうほどだった。


後の問題は、蛇口に当たる部分をどうするか、である。筒状になってさえいれば霊石に触れてオンオフをするつもりなので、前方にある程度の距離伸びる管と、霊石を組み込む部分があればそれでいいのだが、霊石を組み込むためには金属に穴を開けるなり凹ませて溝を作るなりしなくてはいけない。その場合ある程度の太さや厚みが必要になる。

かといってそれらをどう加工するかという問題が残る。簡単に加工ができるならインゴットでいいのだけれど・・・


真鍮の塊を前に考え込む私を、店主が珍しそうにじっと見ている。この各種金属のインゴットを扱っているということは、加工の仕方も知っているかも知れないし、話を聞いてみることにしよう。


「店主さん、お話をうかがってもいいですか?」


「なんだ、随分丁寧なお嬢さんだな。

何か作りたいのかい?」


「ええ、真鍮を使って作りたいものがあるんですが、どうやって加工するのがいいですかね?」


大体これくらいのサイズでこういう感じで、と簡単に説明すると、店主は当たり前のように結論を出してくれた。


「お嬢さんは土魔法は使えないのかい?」


「いえ、使えますけど・・・」


「じゃあ魔法を使えばいいだろう。

インゴットを買っていくのは大体熟練した職人か、魔法で加工する技術者のどっちかだよ」


金属も土魔法の効果範囲だったとは盲点だった。言われてみれば、魔法でもなければ機械技術のないこの世界で、これだけの金属製品が安値で普及しているわけがない。その上並んでいる商品はそれぞれに径や長さに規格があるようで、サイズや品質が一定だ。そうじゃなければ組み立て式のジョイントが存在するわけもない。

魔法技術を甘く見ていたと思い知った瞬間だった。


しかしそれならば、私が思っていたよりも加工は容易であるし、実現不可能だと思っていたあれこれも可能になるということだ。真鍮以外も買いたくなってしまうが、資金が調達できる目処がつくまでは、散財はできない。


結果、大量の真鍮製のパイプと、それをつなぐ各種ジョイント、それから真鍮のインゴットをそれなりに買い込んで家路についた。

インゴットが多少高価ではあったが、それでも全部で銀貨一枚でお釣りが来る程度。日本円にして3、4万円くらいだろうか。7歳児が出すには十分高額ではあるのだが。


ほくほく顔で帰宅してセルガにお礼を言うと、私は早速訓練所へ移動して土魔法で簡単な机と椅子を作り出し、インゴットを取り出した。デザインには自信がないので、無難な円筒状の右側面に霊石を取り付ける窪みをつけることにする。将来的にはお湯も出せるようにしたいところだが、今は未だ実験段階なので窪みは1つあればいい。霊石がついた蛇口に当たる部分から、下方向にまっすぐにパイプが伸びて、前面にも水が流れるようにパイプを。うん、構想としては多分これでいい。あとは大まかな形が出来てから微調整すればいいだろう。


インゴット1つでは大きすぎるので、一旦半分に切断する。魔力をインゴットに通して左右に引きちぎれるように魔法を発現し、両手で左右に引っ張ると簡単に切断することが出来た。

魔法って便利。

同じようにインゴットに魔力を通し、今度は先程の構想どおりの形をイメージしていく。すると、私が魔力の形を変えるとその形へと真鍮の形が変化する。自分の魔力を鋳型にしているような感じだ。


できあがった円筒状のパーツを見て、細部をチェックしていく。水が通る穴もちゃんとあいているし、あとはパイプを接続していけば問題なさそうだ。

細かい機構なんて必要なく、形状と作りがしっかりしていればいいというのは魔導具の利点だと思う。あとは付与魔法が成功して、しっかりと機能してくれれば大丈夫。


さて、どの段階の霊石を使うか。

今回付与するのは、井戸から水を汲み上げて前方のパイプに流す、それだけの魔法である。水を生成することを最初は考えたのだが、それでは霊石はかなり大きくて質のいいものが必要なのではないかと思って、汲み上げる方式に変えたのだ。別に試してみてもいいのだけれど、最初の一歩は堅実にいきたい。

井戸の深さによっても要求される出力は多分変わってくる。料理をするときの水流は多いに越したことはないし・・・霊石の中でも込めた魔力量の多い、濃紺のものを巾着袋から取り出すと、それを机の上に置く。

魔導具にすると出力が落ちるのだから、最終的に流れ出る水の量は、滝のような水流をイメージ。そうして魔法を付与すると、また魔力が一気に、魔法と一緒に引っ張り出されるような感覚があった。この感覚は慣れなくて気持ち悪いけど、これがあると付与が成功したのだろうと思える。


実際に円筒に取り付けるのは、パイプも全部組み終わってからのほうがいいだろう。別の巾着袋にその霊石を分けて入れて、私は厨房へと向かった。


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