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世界樹は夢を見る  作者: 深月
アルディア第一学園
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夕食後、ザルツは王城に割り当てられた賓客用の部屋へと戻った。第一学園の視察は終わったが、明日からは第二、第三学園の視察に行くらしい。

視察の目的は教師陣の指導力の強化で、今回の視察の結果を持ち帰って学術都市の教師陣で問題点の洗い出しとその改善案を話しあうらしい。3年に一度の恒例行事と言うだけあって、チェック項目みたいなものが既に作られているのだそうで、ある程度の基準がある分それほど大変ではないんです、というのがザルツの弁だ。


5日間かけて残りの二校の視察を行った後、次のアルの日にお土産などを買う観光の時間を少し設けて、それから帰路につくらしい。ちなみに時期的にはギリギリ海路が解禁されているらしく、往復とも海路だ。陸路に比べて護衛なども不要であるし、第一普段鍛えていない人にとっては陸路は酷だろう。


まだ日数があるのなら、折角だからあの霊石がどうなるか見せたかったが、ザルツはあくまで仕事できているのだし・・・と思ったが、ザルツの方から最終日のアルの日はご一緒しませんか?とお誘いを頂いたので、喜んでその申し出を受けることにした。

その様子を見たシエラが「デートなんて素敵ね!」と張り切っていたので、多分私は久々にきせかえ人形にされるんだろう。



充実した休日を終えて、学校へ。ザルツが来ているかもという楽しみが無くなったせいか、なんだか学校へ行く意欲も減退気味。理由はまあ、それだけではないんだけれど。


「おはよう」

いつも通り、が無くなってしまった教室は、なんだか急に殺風景なものに見えた。変わらないのは、始めからフルネームを知っていたガルヴァくらいのもので、私の素性は既に噂で広まってしまったようだった。クラスメイトどころか、学校中が敵にまわったような、そんな気にさえなってしまう。勇者と呼ばれた頃の親近感が嘘のようだ。


心が既に諦めてしまっているせいか、私は友人たちに対する興味すら失っていた。アイラの家のレストランも、くるくるとその髪を結い上げるティナの手の器用さも、アレンのちょっと抜けた発言も、全てがもう他人事。誰かと話している自分を、冷めた自分が後ろから眺めているような、そんな気分だった。


実習は自分の作業に没頭できる分だけ、楽しかった。今日も黒くなった霊石に魔力をじわじわと注ぎ込む。黒くなってしまってからは色の変化ももうわからない。それでも、何か変化があったら家族やザルツに報告できる。



2日後、みんなの霊石が出来上がってきた頃。遂に授業は次の段階へと進んだ。


「まだ霊石ができていないものは、空いた時間を見つけてなんとか作っておけよ。

ひとまず授業では見本のほうの霊石を使うから、まだ時間はあるぞー」


そう言ってガルヴァが取り出したのは、一本の杖。いや、杖と言う割には短いし作りが簡素すぎるが、その先には小さな霊石が埋まっていた。


「この杖は松明代わりに使われる魔導具だ。まぁ想像通り、先端が光るようになってる。

ここからは魔導具づくりの実習だ、練習にこれと同じものを作るぞ」


ガルヴァが先端に埋め込まれた石に軽く触れると、杖が明るい光を点す。おおーと漏れる生徒たちの声。


「魔導具づくりの通常の魔法と大きく違う点は、2つ。

まず完成した道具の形状をイメージしなくてはならない。光る、だけじゃなくて、杖の先端で光る、とイメージしないといけないってことだ。

それからもう一つは、付与の仕方に関わることだが・・・

光を点す魔法のときはまずどうする?」


「周囲が明るく照らされるのをイメージして、精霊の力を周囲に広げます」


Aクラスの子が手を挙げながら答える。名前は知らない子だ。


「そうだな、あるいは光源になるなにかをイメージして出現させてもいい。

しかし霊石に魔法を付与する場合は、精霊の力を外に漏らさないのがコツだ。

魔法を発現させるのとは感覚が違うから、その辺は苦労してマスターしてくれ」


視察が終わったあとでよかったね、ガルヴァ先生・・・


つまり、魔法をイメージしたらそれを発現させるように力を使うのではなくて、その力を霊石に集中させる、ということだろうか。


「こういうのは習うより慣れろ、だ。

取り敢えず付与してみろ。終わったら俺のところに来るように。

霊石の穴をあけた杖をやるからな」


うん、実際にやってみないとよくわからないし、はやく試してみたくてうずうずしているのだ。ガルヴァの方針は非常にありがたい。


私は見本の霊石を取り出し、机に置いた。魔導具に魔法を付与する場合は出力が極端に落ちると以前に習っている。ならば、通常の光源をイメージするよりも、もっと強い光をイメージするべきだろう。イメージするのは、持続的に光って、その光量が強いもの。・・・太陽?でもそれで熱を持ってしまっては困る。

色々なものを思い浮かべる。電球、では弱すぎる。懐中電灯は確かその形状で光を増幅させているはずだから杖の先端ではイマイチ。ミラーボール・・・あれは光を反射しているだけか。

そうして私が最終的に思い描いたのは、スポットライトの光だった。

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