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世界樹は夢を見る  作者: 深月
アルディア第一学園
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午後の実習の時間いっぱいまで、私もクラスメイトたちも真剣な顔で霊石を作ることに集中していた。ガルヴァが言っていた通り、作る過程で石が割れてしまう生徒もちらほら出てきて、予備の石をもらってまた最初から。

実習が終わった段階でのみんなの霊石の色もそれぞれだ。

見本の霊石と同じくらいのもの、うっすら青みがかったもの、その中間などなど。そんな中私の霊石はというと、紺色を通り越して、しかし濃紺とまではいかないくらい。最初にあった透明感もだいぶ無くなってしまって、一見霊石とは別の何かじゃないかと思うほど。透き通った青い見本の霊石はとても綺麗なのに、色が濃くなりすぎてなんだかあまり綺麗じゃなくなってしまった。それでも光にかざすと吸い込んだ光をわずかに放出するかのようにきらめいて、神秘的ではある。暗いところで見るともうただの濃紺の石だけれど。


それだけ色を変えても、霊石は割れることはなかった。注入していた感覚では、まだまだ魔力が入る余地はあると思う。限界までいったらこの石はどんな色になるのだろうか。

それにしてもこれが限界でないとしたら、一個の霊石を作るのに時間がかかりすぎる。空いた時間にこまめにやればいいのかもしれないけれど、もっとささっと作ることはできないのだろうか。霊石の色と出力にどれだけの相関関係があるのかも知りたいし、できればいくつかサンプルを作っておきたい。


「霊石の材料はどこで手に入りますか?」


サンプルを用意するためには素材が必要だ。


「同じサイズの原石なら購買で売ってるぞ。お前らの小遣い稼ぎ用だな」


なるほど、購買で原石を買って霊石に変えて、それを買い取ってもらうのか。差額分が作成者のお小遣いになる、と。ひとまずはそれをいくつか購入しよう。

しかし、私の目標はマジックボックスの作成だ。それにはこの小さな霊石ではちょっと頼りない。


「それ以外は?」


「魔導具工房に行けばあるだろうが・・・譲ってもらえるかはわからんな。

アルディアではほとんどがケルネル産だ」


ケルネル。東の山脈沿いの鉱山都市だ。つまり鉱山で採掘されているわけか。

・・・それは入手が難しそうだ。うーんと悩む私に、ガルヴァは小声で言う。


「お前ならいくらでも入手するツテはあるだろうに」


確かにヴォイドやシエラに頼めば、あるいはセルガに一言お願いするだけで入手は可能かも知れない。でも、自分の実験のために権力を使うのは、なんだかなぁ。それをしてはいけない理由は別に無いのだけれど、なんとなく嫌だった。


「それは、最終手段ということで」


同じく小声で答える私に、ガルヴァは笑う。


「ま、それがお前のいいところだな、フォルティエラ」


そういって実習室を出ていくガルヴァの背中を見送って、筆記用具をカバンに詰め込みながら私はまだ思案していた。


ほとんどがケルネル産、ガルヴァはそう言っていた。ではケルネル以外の産地とはどこだろう?

仮にリューイやクロウの街で手に入るならば、空間転移でちょっと行って買ってくるという手も・・・とはいえ値段がわからないのでできれば自力で入手したいところだ。いや、霊石を作るアルバイトを地道にしてお金を貯めるというのも可能ではある。

うん、取り敢えずは購買に行くことにしよう。


帰り支度を整えて顔を上げると、残ってるのは生徒だけ。そのほぼ全員が、私を囲むように立っていた。視察団は授業の途中で既に他の教室へ移動したようで、とっくにいなくなっている。ガルヴァも先程去ってしまったし、この状況で頼れるのはアイラたちだけ・・・なのだが、そのアイラたちは私を囲む輪の最前列にいた。


「説明してもらうわよティエラ」


にこにこと私に詰め寄るアイラ。そしてその状況を見守りつつ、私からの説明の言葉を待つクラスメイトたち。別に隠し事をするつもりはないので説明するのは構わないのだが、一体何から話したものだろうか。


「えっと、先程の方はシルザリッツ様。以前お父様と旅でご一緒したことがあるの」


ふんふん、と頷くクラスメイトたち。その動きが完全にシンクロしているので、見ていてちょっとおもしろい。


「ガルヴァ先生が言ってた王族っていうのが、そのシルザリッツ様。

トリス国王の弟君だってお父様は言っていたわ」


段々私よりも私の父が何者かということに興味が移っていく。うんうん、それでいい。


「で、私のお父様っていうのが、アルディアの国王なのよね」


なんでもないことのように、できるだけさらりと私は言った。


「それは、つまり・・・」


「うん、私のフルネームは、フォルティエラ=カナデ=アルディア。

最初の自己紹介で名乗り忘れて、そのまま話す機会もなかったからそのままにしてたんだけど」


沈黙がその場を包む。なんだか居た堪れない気分だ。

そんな中、ティナがぼそりと呟く。


「勇者は、実は姫だった・・・」


「その勇者っていうのは忘れて!?」


思わずツッコミを入れる私。

これから皆の態度が変わらないことだけを、心の中でこっそりと祈っておこう。

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