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世界樹は夢を見る  作者: 深月
アルディア第一学園
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翌日の昼休み。教室棟から食堂へと向かう途中、そして食堂に入ってメニューを厳選している間、席につくまでの短い距離を進む間。

なんだかちらちらと私のほうを振り返って見ていく人が多いような・・・

いや、自意識過剰と言うやつだろう。湧き上がる疑問を振り払い、いつも通りランチをとってから実習へ。


同じような視線は、次の日も感じた。

そしてその次の日も、そのまた次の日も。


なんだか自分が注目されているような居心地の悪さを、数日間ずっと感じ続けていた。ときには教室のドアから中を覗う子もいて、そういう子たちは私と目が合うと一瞬ぱっと顔を輝かせた後、すぐに走り去って行ってしまう。見覚えのない子だから、C、Dクラスの子かあるいは違う学年の先輩なのか・・・


ここまでくると自意識過剰で済ませるわけにもいかなかった。

今日も昼休み、食堂で感じる視線は相変わらずだ。


「なんだかここ数日視線を感じるの」


耐えかねた私は、アイラたち3人にそう悩みを打ち明けた。

3人は顔を見合わせてきょとんとした表情を浮かべ、そして・・・盛大に笑いだした。


「今更!?今更それ言い出すの!??」


アイラとアレンはもうお腹を抱えるような勢いで大笑いしている。ひどい。


「ティエラはすっかり有名人・・・」


「なんで!?」


ティナが笑いながら溢した言葉に、即座に質問を返す私。


「翌日には1年生の間にはすっかり広まってたよ、あの事件」


「あの事件?」


「Bクラスの女子が、Aクラスのアイヴァンとその取り巻きとやりあって、あのアイヴァンが謝ったらしいぜー!!・・・ってね」


アレンが、多分聞いたままのセリフを再現してくれたのだろう、芝居がかった口調でそう言って、再び笑う。


「それで・・・ついたあだ名が、勇者」


「なにそれすっごい嫌!!!」


心底嫌だ。どうして他のクラスの子とちょっと言い合ったくらいで勇者呼ばわりされなくてはいけないのか・・・


「まあ、それだけアイヴァンと取り巻き3人が有名だったってこと。悪い意味でね」


「Aクラスの中でも偉そうにしてたらしいし、取り巻き3人のあの剣幕はやっぱ怖いよなぁ」


俺には歯向かう勇気はないよ、とアレンが付け足した。


「・・・アレンのヘタレ具合は別として・・・

悪評の分だけティエラの勇姿は有名になった」


ヘタレって・・・とアレンがまたダメージを受けている。さすがティナは容赦がない。

しかしなるほど、あの4人組は学年通してあんな振る舞いをしていて、そのせいで評判が悪かった、と。


「だからってなんで勇者なの・・・?」


「俺と同じように思ってた男子は少なくないんだよ・・・

女子ってなんでああ怖いんだろうね・・・」


「あんな子たちと一緒にしてほしくないわよアレン!

まあ、勇者って呼び始めたのは一部の男子だったみたいだけど。

それが見事に広まったのね」


アイラはとても楽しそうに、フォークを軽く振りながら説明してくれる。他人事だと思って・・・!


「最近ではティエラの見た目も話題を呼んで、他の学年からも有名になってるしねぇ」


「喧嘩するには小柄だってこと?」


自分の背の低さには自覚がある。


「それもあるのかもしれないけど、ティエラは美人だからねぇ」


おお・・・日本人の美的感覚では確かにティエラの顔は美人に分類されると思ってはいたけれど、実際にこの世界の人にそう評価されるのは初めてだ。

素直に嬉しい。


「それは・・・ありがと」


顔が熱い。多分真っ赤になってると思う。


「やだかわいいわこの子!赤くなってる!」


「あああうるさぁい!」


「はいはい、卵焼きあげるから機嫌直してねー」


何故私の周りの人は食べ物で私を懐柔しようとするのだろうか。もらうけど。


「あ、甘くておいしい」


卵焼きは砂糖派の私だが、ほどよい甘みでとってもおいしい。


「あらありがと。

それわたしが作ったの」


さすが毎日家の手伝いをしているというだけあって、料理は得意であるらしい。

ティナといいアイラといい女子力高いなぁ。


「アイラの家のレストラン、行ってみたいなぁ」


卵焼きのおいしさにすっかり機嫌を直した私は、まだ見ぬこの世界のレストランというやつに思いを馳せていた。


「別にそんないいもんじゃないけど・・・

子供だけで来れるような雰囲気の店ではないわね」


「なかなかの高級店だよ、アイラの店は。

俺にはちょっと敷居が高いなー・・・」


そういう言い方をするということは、行ったことはあるのだろう。


「私やアレンの誕生日のときは、アイラのお父さんが招待してくれる」


幼馴染ならでは、ということか。しかし羨ましい話だ。


「いいなぁ、幼馴染ってなんかいいよねぇ」


日本でもそういう存在はいなかった。もしいたとしたら、私の人間関係は少し違っていたのだろうか。面倒くさがって変わらなかったかもしれないけれど。


視線の疑問は解決されたが、視線自体はなくならない。

席を立ってもやはりどこかしらから視線が飛んでくる。

・・・こればかりは、時間が解決してくれるのを待つしか無かった。

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