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世界樹は夢を見る  作者: 深月
幼少期
41/201

40

ヴォイドに宿の女将から聞いた話を掻い摘んで話すと、一緒に1階の食堂へと降りた。すでにザルツとバイゼル将軍がテーブルに向かい合って何か話している。その様子はなんだか親しげに見えたが、そんなにあの二人は打ち解けていたっけ?


私がザルツの隣に、ヴォイドがバイゼル将軍の隣に座ると、私を挟むような形でティテスが隣に座った。今日の私達の部屋の担当はティテスだったので、一緒に降りてきたのだ。ザルツとバイゼル将軍がいるのだから、カチアとジェロスも既に起きているはずなのだが・・・


二人の姿が見えないことに思い至った頃に、通りに面した宿のドアが開いた。冷えた風が一瞬通り抜ける。

外から姿を見せたのは護衛の二人だ。


「おお、寒い寒い。この辺は一気に気温が下がるな」


「ぐるっと見て回ってきたけれど、やっぱり街の規模に比べて人が少なすぎるわ。

魔物が増えて人が減っているんでしょうね」


外の様子を見てきてくれたようだ。二人がテーブルについて、残るはあと2人。

正直、タリムに早起きは期待できない。場合によっては、あとで嫌味を言われるのを覚悟で先に話を進めて置いたほうがいいかもしれない。


「朝、宿の女将さんにいくつかお話を伺ったんです。

揃い次第それを共有したいのですが」


「私も詳細はまだ聞いていないが、皆の意見を聞きたいこともある。

朝食を摂りながらでも話をするとしよう」


ヴォイドが私の言葉を肯定して補足してくれる。皆が頷くのを見届けてから、階段の方を眺めるが、それからしばらく経っても人が降りてくる気配はない。


「・・・ちょっと見てこよう」


席を立ったのはバイゼル将軍だった。このメンバーでタリムを起こしても軽い嫌味程度で済むのは将軍くらいだろう。申し訳ないがお任せすることにした。


少しして将軍が戻ってくる。その背後には、マティスと・・・いや、マティスしかいなかった。そのマティスは疲れ果てたような顔をしている。理由はなんとなくわかるが。


「タリム様は、貴様らと食事などとれるか!!・・・だそうで。

護衛だから離れるわけにいかなくて俺部屋にいたけどさ・・・将軍が来てくれなかったらずっと離れられなかったよ・・・

将軍、本当にありがとうございます・・・」


やはり、原因はタリムか。それにしても、その”貴様ら”の範囲が非常に気になるところである。主にそこにヴォイドとバイゼル将軍が含まれるのか否か、という点で。

マティスが席について、これで一応は揃ったと判断する。来ないと言っている人間をいつまでも待ったところで時間の無駄だ。


「やはり、魔物が年々増えているそうで、それが原因で街の人口は減っているそうなんですが・・・」


私は最近住み着いたという学者の存在、この街の物資の供給事情、そして北側のルートの話をする。


「ふむ・・・どれも興味深いな。話を聞きに行く価値はあると私は思う」


「僕も賛成です。魔物の増加が果ての異変と無関係とは、どうしても思えませんし・・・

それにしてもカナデ様は情報収集にも長けていらっしゃるんですね」


急に褒められて、ぶんぶんと首を振る。

私はただ、偶々早く起きたから女将さんと世間話をしただけだ。それを胸を張って情報収集と言えるほど私は自己アピールが得意ではない。


「では、今日は学者を訪ねてから兵舎に向かう、ということでよいか?」


ヴォイドの言葉に頷く。


「タリム様には・・・1日滞在しますのでゆっくりしていてくださいませ、とでも伝えておくよ」


マティスが演技がかった口調で言うと、ごちそうさま、と女将に声をかけて階段を上がっていった。その足取りは軽いとは言い難いが、1日タリムから離れられると考えれば私としては大歓迎。早く出発したくなってしまうほどだ。と言ってもマティスもただこれからタリムに会うのが気が重いだけで、滞在を伸ばすことは気にならないのだろうけれど。


30分後にもう一度集合することを決めて、私達は部屋へと戻った。ジェロスが言っていた通り、気温は一気に下がって、肌寒い、から寒い、というレベルに変わっていた。いつものもこもこマントだけでは出歩くにはちょっと不安だ。鎧の上にも何か着込もうと荷物を漁る。マントの下も若干もこもこになったところで、ふとレイを見ると、いつもどおり薄布をまとっただけの姿。

レイの着替えを用意していない以上当然のことなのだが、見ているだけで寒々しい。本人が寒さを感じないのだから気にしなくてもいいのかもしれないが、本当に寒々しいのだ。

私は無言で部屋を出る。お手洗いに駆け込み鍵をかけると、アルディア王都にある屋敷の自分の部屋へこっそりと転移すると、引き出しから厚手のスカーフを数枚持ち出して戻り、空間を閉じる。


部屋に戻るとスカーフを無理やりレイに巻き付けた。

・・・これくらいの抜駆けは、許されてもいいと思うのだ。

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