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世界樹は夢を見る  作者: 深月
幼少期
4/201

無口を貫き通して、また2年の月日が経った。


3歳。長距離は無理だけど、自分で屋敷の中は歩き回れるようになったし、幸い屋敷には書斎があった。

そうなればもちろん、やることは一つ。ひたすら読みあさるのみだ。


とはいえ、シエラのきせかえ人形になる時間は多かったし、毎回新しい服を嬉々として持ってくる母の姿に、この国の財政は大丈夫なのかと笑顔が引きつりそうになることももはや日常であった。



今読んでいるのは、簡素な装丁の絵本である。

いや、実際は絵本ではないのかもしれないが、絵本かと思うくらい文字が少ない。そして厚みもない。

これを読むのはもう何度目かわからないくらい。


おとぎ話に近いような、創世記だ。


遥か昔、この世界の文明は一度滅びたのだという。

空は暗く世界を闇が多い、あらゆる種が滅亡の危機に陥り、人間も例外ではなかった。

草木も枯れていき、それを糧とする動物も姿を消す。


そんな中、偉大な魔術師が一本の若木に、自身の魔力と自我を与えた。


若木は闇の中でも生き延び成長し、いつしか大木となり、周囲は広大な森になった。

その恵みを受けて、わずかに生き残った動物たちも生命をつないだ。


その大木、世界樹は、今もなお世界を支えてる。




魔術師、世界樹。

初見のとき、ファンタジー小説に出てくるフレーズたちに、目の前が暗くなったのは言うまでもない。


異世界、確定です。



この本はこの国だけではなく、世界中に広く普及しているらしい。

立派な装丁の本ばかりが並ぶ書斎の棚に、どうしてこの本があるのか不思議に思っていると、顔に出ていたのかお付きのメイドさんが教えてくれたのだ。

一般にも広めるために、敢えて簡素な作りにして単価を抑えているのだとか。

とはいえすべての家庭に常備されるほど安価ではないようで、それでも学校や公共施設など、人々の目に留まりそうな主要な施設に、誰でも閲覧できる状態で置かれているのだそうだ。



所詮おとぎ話に、随分大層な扱いだなぁと思ったが、どうやらこの世界では世界樹という一本の木に世界が支えられ、また世界樹により世界が拡がってるというのは一般常識であるらしい。


世界が拡大するというのは信じ難いが、西の彼方に、世界の果てと呼ばれる領域があり、文字通りその先には何もない、海も大地もない、無の領域があるのだそうだ。

この領域、じわじわと変化しているのだとか。

そうしていつの間にか新たな土地や水場ができる。つまり、文字通り世界が広がっているのだ。

ゆっくりと、しかし確実に西に新たな資源が生まれていく。そのため、世界の果ての手前には、新たに生じる領域を開拓して一攫千金を狙う人々や、そういった人々の街を作るための職人たちが集まって一つの国を形成している。



もう一冊、興味深い文献があった。

精霊に関する本である。


魔術師とか世界樹とか、そんなキーワードがある以上、精霊の存在も事実であってもおかしくない。・・・ただ、未だ目にしたことはない。


精霊はすべての生物に宿り、その力を貸す。

その力を意思で具現化するのが魔法という現象で、宿った精霊の力が強いほど魔法もまた強く発現する。

そして宿主が亡くなると、精霊はその魂を世界樹に捧げ、世界樹が世界を支える力になると信じられている。


力の強い精霊は目に映ったりもするらしいけど、現在確認されているのは100に満たないほど少なく、かなりのレアケースと言えるらしい。



私にはまだ精霊は宿っていないからどんな存在なのか、魔法がどんなものかもわからない。

6歳になったら精霊を宿すための儀式を行うらしい。


ちょっとだけ楽しみ。

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