35 タリムの憂鬱
私は旅の中、日々苛立ちを募らせていた。
護衛はまともに役に立たないし、盗賊には襲われるし。
大体なんだあのカチアとかいう女は!護衛だというのにまるで戦えないではないか!探知魔法とやらを使うのはいいが、襲われるのを防げないのでは敵を察知したところでなんの意味もない。その上人質に取られるなどと!私が殺されるところだったではないか!
バイゼル将軍が護衛を連れてくると言うから期待しておったのに、全くもって使えない連中だ。大体転生者など、ちょっと過去のことを覚えているというだけで尊敬される不愉快な連中だ。
アルディアの王も甘すぎる。たかが護衛一人のためになぜ剣を捨てる?そのまま戦っておれば盗賊など蹴散らせたであろうに。戦えない護衛が一人死んだところで調査に支障などないであろうが!
何よりもあいつだ。
アルディアの王が連れてきた小娘。
言葉を話す精霊を連れているというだけで、小娘自身に価値などない。にも関わらず私は役に立っていますというような大きな顔をしおって!精霊の力が無ければ何もできないくせに!
あの小娘とて他の転生者と何ら変わらない、ただ前世の記憶があるというだけ。
ただそれだけのことで強い精霊を宿すことができるのだから、随分と運だけはいい連中だ。
運だけで成り上がる者など腐るほど見てきた。
その中でも転生者というやつは最悪だ。
なんの実力もないくせに、精霊の力だけで偉そうにミドルネームなどを名乗り、それを声高に強調する。尊敬されるに値するほどの実力など無いくせに、だ。
特に転生者のガキというやつはすぐに調子に乗るから始末が悪い。大人たちが無駄に褒めちぎるものだから自分はすごいと思いこむのであろうな。
尊敬されるならばそれだけの実力がなくては話にならん。
そう、私のように実力も実績もある人間こそが必要なのだ!
・・・転生者が幅を利かせるようになってからというもの、真に力のある人間が軽視されるようになった。庶民どもも愚かなものだ。転生者が現れるとその名前に惹かれて持て囃し、力あるものを忘れていく。
あれほどに世界に貢献してやったというのに!
嘆かわしいことに、私の作った魔導具たちがどれほど役立ったか、愚民たちは忘れてしまったのだ!
あれも転生者のガキがちょっと目立ったせいだった。
私の魔導具を教材に、学校では付与魔法を教えていた。授業の一環で私と同じ魔導具を作ったあのガキの作品は、ただ単に転生者であったから私の魔導具よりも強い効果を発揮した。
精霊の力が強いからだ。
だがそれはただのレプリカ、模造品、模倣に過ぎない。
魔導具職人の真価は、新たな機能を持つ魔導具を生み出すことにあるというのに!
それを理解しない愚民どもはクソガキを一流の魔導具職人だと持ち上げ、調子に乗らせた。その結果あのクソガキがしたことは、世に出回るありとあらゆる魔導具を模倣すること。なんの独創性もない、ただ出力が強いだけの模造品はまたたく間に世間に広がっていった。
それまで魔導具を生み出してきた職人たちを蔑ろにして、クソガキは、世間は、愚民どもはそうした転生者たちの作品ばかりを評価する!
ああ嘆かわしい!
この世は愚か者で溢れている!
果ての異変はきっとこのような愚か者ばかりになってしまった世界のあり方を嘆き、元の正しい価値観の世界に戻そうとする自浄作用のようなものに違いない。
今はまだ世界からの警告の段階なのだ。
ここで愚民どもがそれに気づかなければ、果ての異変はきっと世界中に広がってしまうだろう・・・誰かが目を覚まさせなければ!転生者による世界の破壊を食い止めなくてはならない!
善人ぶったあの小娘も、使えない護衛たちも、世界を歪める害悪なのだ!!
それに気づいているのは、恐らく私だけなのだ・・・私が世界を救わなくては・・・
・・・世界を救えるのは、私だけなのだ!!




