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世界樹は夢を見る  作者: 深月
幼少期
3/201

1歳になった私は、今日も赤ちゃんにべったりの母親に愛想笑いだけを浮かべて過ごしていた。

少しずつ言葉がわかるようになって、私の罪悪感はうなぎ登り。

私が意識を握る赤ちゃんがどれだけ望まれた存在か、どれだけの立場の子供なのかがわかってしまったのだ。


別に自分が望んで赤ちゃんに成り代わったわけでもないので、罪悪感を感じたところでどうしようもないのだが、そんなふうに割り切れるわけもなかった。



両親の髪の色を組み合わせたような、少しピンクの入った銀色の髪。

父親によく似た緑色の瞳。


美醜はわからないが、この髪と目の色だけで両親の愛情を一身に受ける要素は十分だったようで、母親は暇さえあれば私を抱っこしにきて、父親もまた仕事にほんの数分の空きでもあろうものなら顔を見にやってきた。



父の名はヴォイド=アルディア。

母はファルティシエラ=アルディア。

なんと、国王様と王妃様、であるらしい。


2人の子どもたちは男ばかりの4人兄弟で、世継ぎとかを考えたらそれでいいのだろうけれど、あまりに潤いがない!と嘆いていたらしい。

そこに生まれた初めての娘。可愛がられないわけがなかった。


フォルティエラと名付けられた”この子”は、早くも母シエラのきせかえ人形と化していた。

ちなみに、名前の後ろの方を愛称として取るのがこの国の習慣らしい。


私は”この子”・・・ティエラを、自分とは切り離して考えることにしていた。

全くそんな気配はまだないけれど、いつかティエラの意識が目覚めるかもしれないと思って。

もしティエラが本来この体の持ち主であるならば、私は間借りしているだけだ。

それが不確かな状態で、仮にも一国のお姫様が好き勝手に振る舞うわけにはいくまい。


だから、生前に身につけた、周りにあわせてとりあえず笑っておくスタイルを貫いている。

本当は話せるんだけどね。多分流暢に。

それは私の役目ではない、と自分に言い聞かせて日々を過ごしているわけだけれど、かといって全くの無言というわけにもいかない。

子供を育てた経験なんてないから、1才児がどの程度話すのが普通かはわからない。でも、どうしても、感謝と謝罪だけはきちんとしないといけないと思うんだ。ありがとうとごめんなさいは、きちんと。それ以外は、ママ、パパ、くらいしか喋らない。

言葉を覚えるのが遅い、とか心配されないといいんだけど。



兄たちが訪ねてくることもある。

見目麗しい4兄弟もまた、ティエラのことが可愛くて仕方ないようだ。少し年齢が離れていることも、”初めての妹かわいい病”に拍車をかけているのだろう。


4男のジルは7歳。

この国では7歳になると学校に通いはじめ、12歳で卒業。15歳で成人となるらしい。

新入生で学校内では一番下で面倒を見てもらう立場であるが、その反動からかティエラに対してはお兄ちゃん風を吹かせて色々世話を焼きたがる。

絵本を読み聞かせてくれたり、文字を教えてくれたり。読み聞かせがたどたどしいのはご愛嬌だ。


正直、このちいさな兄の気遣いは本当にありがたい。

はっきりいって、暇なのだ。

簡単な文字だけでも読めるようになれば、自分で本を読みあさることもできるだろう。

知りたいことはたくさんあるのだ。

このアルディア国がどこにあるのか。

地球でアルディア国なんて聞いたことがないし、もしかして、本当にもしかして。

浮かんでは否定してきた疑問の答えが、本を通じてわかるかもしれない。



ここは、異世界ってやつなんじゃないだろうか。

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