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それからおよそ二ヶ月、私は力の流れを感じ取る訓練を続けていた。
屋敷では魔法は使えないが、力を感じることとそれを一箇所に集中することだけはできた。どうやら王宮を囲む魔導具は、魔法が発現する段階に作用しているらしい。
同時に訓練場では、ジルと一緒に実際に魔法を使う訓練もしていた。
いざというときに魔法を使えるというのは、言うのは簡単だが訓練するとなると悩ましい。いざというときが訓練ではそう起こるものではないからだ。
そこで、ジルに頼み込んで剣術を教えてもらい、その手合わせをしながら魔法を使う、という方法をとった。
ちなみに今年学校を卒業したジルは、騎士見習いとして騎士団で訓練を行う予定だったが、レイの指導を受けられるということで騎士団入りを先送りにしたらしい。
その指導というのがあれだったのだから、1年を無駄にしたような気もしなくもないが、そのおかげで訓練相手がいるわけだから、良しとする。
6年間屋敷に引き篭もって読書ばかりしていた私が、まだ12歳とはいえ家庭教師付きで剣を習っていたジルの動きについていけるわけがない。
まず基礎体力が違う。6歳になってからは毎日走り込みや筋トレをしているものの、その差は依然縮まる気配すらない。
・・・まだ2ヶ月だし当然か。
そこで考えたのが、ファンタジーでお馴染みの身体強化というやつだ。
最初は、精霊の力で筋肉繊維を太く・・・とかややこしいことを考えて魔法自体が発動しなかった。
剣術の特訓中、剣を振る筋力にばかり頭がいってしまってそういう発想になっていたわけだが、ジルに、”力を抜いてまずはきれいに剣を振るように”と言われてからというもの、無駄に力を入れることをやめて、型通りに剣を振れるようになってきた頃。
このままの動きで素早く剣を振るためにはどうすればいいかを考えた結果、編み出したのが”加速”という魔法である。
力を込めるのではなく、剣の動きを加速させる。
この魔法の成功によって、私の剣は運動エネルギーを手に入れたわけだ。
この”加速”だが、思いの外使い勝手がいいのだ。
剣の動きを加速するのと同様に、足運びを加速させれば素早く動けるし、上体の動きを加速させれば鋭い剣の動きも避けられる。まぁ、ジルの剣さばきが見えなくてほとんど避けられないのだけど。
どういう仕組みで加速しているのかはわからない。
魔法はイメージだというから、何がどうして起こるのかを事細かに考えすぎていたようだ。結構ざっくりでいいらしい、便利。
ざっくりでいいということに気づいてから、私の魔法の腕は急上昇していった。
ジルの剣筋も見えるようになった。魔法のおかげで。
動体視力を強化!とかができたわけではない。ただ、時間を加速するという荒業を成し遂げたのだ。
私の時間だけが加速する。
結果、私の動きは加速した分だけ早くなり、相手の動きは遅くなる。
見えさえすれば避けられる。便利。
加速した時間の中で、加速した剣を振る。ついでに剣に重量を乗せてみる。
場合によってはジルの受ける重力自体を強化して動きを鈍らせる。
・・・もはやジルに負けることはなくなった。
レイの力は偉大である。
一方ジルも魔法の修行には励んでいて、ジルが使える水と土の魔法を、二人で話し合いながら強化している。
例えば最初に見せてくれた氷の矢。
ジルがやったときには水が氷に変わるまで時間がかかっていた。
あのときジルも言っていたように、”水の温度を下げていく”イメージだったからだ。
これを、”水の持っている熱を奪う”イメージに変えたところ、一瞬にして氷にすることができたのだ。
しかし、いつまで経っても水と土以外の魔法が使えない。
火をおこすとか、イメージしやすいと思うのだけれど。
使えない理由がわからない以上、手詰まりだ。
こんなときこそレイ先生の出番である。というかこんなときくらい役に立ってほしい。
「ジルは火に関する記憶や知識がなさすぎるのよ。風も同じね」
「僕の記憶や知識?僕の精霊の力が問題なんじゃなくて?」
「宿る精霊の力に個体差なんてないわよ。
違いがあるのは宿主のほうだわ」
精霊の力の強さで魔法の威力が決まっているというのが常識であるのに、レイの発言はそれを根本から否定している。
レイは自分の力を散々自画自賛していたはずだし、実際にジルと私の魔法では、明らかに私の魔法のほうが幅広く、強力だ。
ジルが、呟く。
「これ、研究者たちが聞いたら発狂ものだぞ・・・詳しく聞いていいのか僕にはわからないよ、もう・・・」
同感である。
ジルとこっそり話し合い、この話題は国のトップである両親の同席のもとで聞こう、と決めた。




