10
「あたしの力を、どういう現象を起こしたいのかっていうイメージで形を作って発現するのが魔法よ。
まずはあたしの力を感じ取れないとダメよ!
あたしはこうして姿を見せているけど、それは力のほんの一部を使ってあたしという存在を身体の外に映し出しているだけ。
あたし自身はカナデの中にあるわ。
さぁ、探しなさい!」
探しなさいって・・・レイは先生には向かないかもしれない。
苦笑してジルが助け舟を出してくれる。
「目を閉じて、自分の体の隅々に意識を集中させるんだ。
自分の心臓の鼓動や呼吸と一緒に、自分の中にもう一つ脈打つものが見つかると思うよ」
目を閉じる。
自分の体のいろんなところに意識を向ける。
指先の脈を感じる。心臓の鼓動が聞こえる。胸が上下して呼吸しているのを感じる。
泉の水を飲んだとき、胸のあたりがあたたかくなったんだよな。
その感覚を思い出すように、意識を集中する。
聞こえた。
鼓動と連動するかのように、身体中ををあたたかいものが流れていく。
「なんとなく、これかなっていうのは、見つけた」
「その力に、方向性をつけてあげるの。
ジルがやったみたいに水を生み出してみましょ。
大事なのはイメージよ!」
またしてもざっくりすぎる説明だが、とりあえずやってみる。
ジルがしていたように手のひらを向かい合わせにして胸の前に掲げる。
先程感じた力が、両の手の間に広がっていくイメージ。
そこに水が生じるイメージ・・・
「でき、た?」
そこにはジルが作り上げたものよりかなり小さい、指先ほどの大きさの水球が出来上がっていた。
「随分小さいけど、たしかにできているよ。
・・・本当に随分小さいけど」
うん、小さい。何が悪かったのか、指摘を求めてレイを見る。
「んー、どうやって水球ができるか、考えた?」
「うん、空気中の水分が集まるようなイメージ、かな」
「ジルは?」
「僕は自分の中の力が水に変わる、って考えてるかな。
どこからその水がきてるかなんて深く考えたこと、ないかも」
なるほど、過程の違いか。
「効果でいうなら、ジルのほうがよっぽど高くなるわね!
ただ、知識が無駄なわけじゃないわ。
考えすぎるのは良くないけどね」
体内をめぐるこの力がそのまま水に変換されるならば、ジルのように考えたほうが効率的だ。レイという精霊の強さから考えれば、ジルよりも多くの水を生み出すことができるはずなのだし。
もう一度、今度は両手に集めた力が水に変化するイメージで。
すると、水球は見る間に大きくなって、バスケットボール大くらいになり、そこからさらに大きくなっていく。
「ちょ、ちょっとこれどうやって調節すればいいの!?」
「力を集めるのをやめればいいじゃない」
わたわたと水球の拡大をなんとか止めると、ついレイに恨みがましい目を向けてしまう。止め方聞いてなかったんだから仕方ないじゃない。
そのセンス無いの?みたいな視線はやめていただきたい。
「できれば最初に、これくらいの水球を作る、って大きさもイメージしたほうがいいね。
そのイメージができていれば、勝手にそのサイズで止まってくれるはずだから」
さすがジルお兄様。アドバイスが非常にありがたい。
「これ、例えばだけど、海から大量の水を持ってくるようなイメージであれば一気に津波みたいなことになるの?」
過程の違いで得られる魔法の効力が違うのなら、そういうことも可能なのかと思って聞いてみた。
「そうなるわね。
といっても、すごく遠くから水を持ってくることになるわけだから、それ相応の強い力が必要よ。
まぁあたしがいるわけだからそれくらい余裕だけどね!」
やはり言葉を喋る精霊の力というのは、相当に強いらしい。
そもそもそんな精霊がどうして私に宿ったのだろうか。
水の魔法は結構得意だったんだけどなぁ、と呟くジルを横目に、レイの自画自賛は続く。
「あたしが規格外にすごいだけなんだから、ジルが落ち込む必要なんてないのよ!」
それはなんのフォローにもなっていないことに、レイは気づいていない。
レイにそういった気遣いを求めるのは無駄なようだし、まずは修行だ。
「次はどんな練習をすれば?」
「え?魔法の使い方は教えたじゃない。
これ以上教えることなんてないわ。
あとは、いざというときのために瞬時に魔法を出せるようにするくらいかしら?
あたしの力を常に感じ取れるようになれば、それも問題ないわね!」
まさかの卒業宣言である・・・
ジルと私の、もうちょっとなんかないのかという視線を感じ取って、レイは続けて言う。
「魔法はイメージ。水球を生み出したのと同じようにあらゆるものを生み出したり、変化させたりできるわ。
難易度とかそんなものはないの。
うまくイメージできるかどうかで、魔法が発動するかどうかが決まる。
本人の想像力次第なんだもの、これ以上教えることなんてあると思う?」
拗ねたように言うレイの言葉は、それが本当なら確かに納得がいくものだ。
発現の仕方さえわかっていれば、あとはどのように発現するのか。それは使い手次第なのだ。
すぐに魔法を使えるかどうかも、つまりはすぐに精霊の力を感じ取り、うまくイメージを乗せられるかどうかということ。
反復あるのみ、かな。
連載開始記念(?)の連続更新はここまでです。
今後は1日1話以上更新を目安に書き連ねて参ります。
おつきあいいただければありがたく存じます。




