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世界樹は夢を見る  作者: 深月
幼少期
10/201

「ジルお兄様、魔法を見せてもらえませんか?」


実は私はまだ、魔法を見たことがなかった。

いや、もしかしたら皆は使っていたのかもしれないが、私がそれと気づくことはなかったのだ。


「構わないけど、王宮の敷地内は訓練場以外魔法は使えないよ?」


なるほど、魔法を見たことがないのは当然だった。

この屋敷は王城の離れとして建っており、うっかり間違えて城の訪問者が迷い込まないよう、かなり奥まった場所に位置している。とはいえ、王宮の敷地内、という括りであれば、一応はここも敷地内に当たる。


「魔法の特訓をすることは父上もご存知なのだから、使用許可はすぐに降りるはずだよ」


困り顔に気づいて、大丈夫だよ、とジルが笑う。

昨日のうちに、家族にはレイのことを話してある。留学中の二人は無理だが。

同時に屋敷にいるメイドさんたちにも、事情を知らなければ驚かせてしまうし、なにより大半の時間を過ごす屋敷ではレイが自由にできるように、レイが私の精霊であること、言葉を話すこと、魔法の特訓をすることだけは伝えてある。もちろん口止めした上で、だ。


ジルは一人のメイドさんに声をかけ、セルガを呼んで、と伝えると、私のほうを見てもう一度笑う。


「父上に直接お願いに行くわけにはいかないからね。セルガに手続きをしてもらって、できるだけ早く訓練所を使えるように急かしてもらうことにしよう」


セルガは、この屋敷のメイドさんを束ねる執事長だ。少し白髪混じりの初老の紳士で、執事服を着て控える姿は、まさに執事!という雰囲気。いや実際執事なのだけど。


ドアをノックする音にジルが返事をすると、今日もぴしっとした執事服を纏ったセルガが現れた。


「ジル様、フォルティエラ様、魔法の特訓のことでございましょうか?

昨日のうちに訓練場の使用申請は済んでおります。

王城内の訓練所は他人の目もございますゆえ、王宮の敷地内に独立した第三訓練場を押さえてあります。

今後フォルティエラ様が学校に入学されるまではそちらをお使いください」


既に手配済みだった。さすが執事長。


「助かります。ありがとうセルガさん」


お礼を言うと、


「私に敬称など不要でございます。セルガ、とお呼びください」


ダメ出しされてしまった。

立場上はこちらが上なのだろうけれど、目上の人を呼び捨てにするのは抵抗がある。


「・・・善処します」


もとは日本の小市民なのだ、そう簡単に一国の姫という立場に慣れることはできない。なので、とりあえず保留である。



さて、折角セルガさんが手配してくれたのだ、早速訓練場に向かうことにする。

訓練場以外魔法が使えないのは、防犯のためなのだそうだ。確かに、誰もが精霊の力を持つこの世界では、武器を持っていないからといって安心はできない。武器よりもよほど強力な魔法という力を封じることで王宮の安全を確保しているのだ。

そしてそれを成しているのは、魔導具の力なのだそうだ。一つの魔導具で広い王宮をカバーし切ることはできないため、複数の魔導具を要所要所に設置することで王宮全体に効力が及ぶようにしてあって、いくつかある訓練場だけはその範囲外になるようにしてある。


第三訓練場はまるで体育館のような建物だった。

中に入ると、地面はきれいにならされた土。体育館の床がなくて壁と天井だけがあるような状態だ。魔法の訓練ということならば、床を傷つける心配が無い分実用的なのだろう。


「さて、じゃあ魔法だけれど・・・

僕が使えるのは水と土の魔法くらいなんだよね」


ジルが両の手のひらを向かい合わせに胸元で掲げると、軽く息を吐き出した。

両手の間に、握りこぶし大の水球が出来上がっていく。


「これは単純に水を生み出しているだけだよ。

でも、これをこうして・・・」


水球が矢のように形を変え、急激に凍りついていく。

氷でできた鋭い矢が一本。ジルが両手を前に突き出すと、その方向へと矢は飛んでいき、地面に突き刺さり、跡形もなく消えてしまった。


「水の温度を下げるイメージを加えると、こうやって凍らせることができるんだ。

水で矢を作っても攻撃という意味ではほとんど威力がないからね」


土の魔法はもっと単純だよ、とジルが見せてくれたのは、訓練場の土に穴を開けたり、逆に穴を塞いだり。先程氷の矢が刺さって穴が空いていた部分も、魔法の力できれいにならされていた。


「すごい・・・」


こうして魔法を間近に見て、異世界なんだなぁと改めて認識させられる。

ジルの使った魔法は初歩のものであるらしく、そのため派手さはない。けれど魔法というもの自体が存在しない地球で育った私から見れば、それは奇跡というに十分なものだった。


「さぁ、ここから先はレイの出番だろう?

実は僕も一緒に教わろうと狙っていたんだ」


ティエラの方から誘ってくれて助かったよ、と笑う兄は、いたずらが成功した子供みたいな顔をしてレイの方を向いた。


「1年といわず、1週間で一人前にしてあげるんだからっ!」


レイは相変わらず肩の上でふんぞり返って、スパルタ宣言をする。

お手柔らかにお願いしたいです・・・

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