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世界樹は夢を見る  作者: 深月
プロローグ
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プロローグ

処女作です。至らない点ご指摘いただけると幸いです。


人間は嫌いだ。

悪意や敵意がどこに潜んでいるかわからない。


仲良く話していたのに、その子が離れた途端に、その子の悪口が始まる。女同士のコミュニティではよくある光景。うまく合わせて笑いながら、自分のことはなんて言われているんだろうなんて怯える毎日。

あまり関わりたくないのが本音。でも、一人は、寂しいし怖い。


幸い、他人とは適度な距離を取っていたと思う。頭の出来はそこそこで、高校はいいほうの成績で卒業し、大学もそこそこのところにストレートで入学、留年なんて他人事な日々を過ごし卒業した。いつも気の合う同級生とつるんで、先輩たちとお酒を飲みに行くこともあった。ちょっとした悩みくらいなら相談相手に困ったこともない。まだ小さい頃は軽い嫉妬を受けてちょっとした嫌がらせを受けることもあったけど、それが日常に発展することもなく、単独犯の単発の嫌がらせに、私の味方になってくれる子ばかりだった。


けれど、コミュニティを離れてしまうと、付き合いは続かなかった。当然だ、私自身が関わらないようにしてきたのだ。いまや携帯の電話帳には、顔と名前の一致しないたくさんのデータが、タンスの肥やしのように眠っている。



逢坂奏、23歳。

今日も一人帰路につく。地元から遠く離れて就職した私は、ひとり暮らしのアパートから毎日15分程度電車に揺られて通勤している。

ホームで電車を待ちながら考えるのは、仕事のことや夕飯のメニュー、それから当然のように予定のない明日からの連休のこと。

読みかけの本をゆっくり読むことにしようか。雑食で軽い哲学書からライトノベルまで幅広く読む私は、一度読書にはまりこんでしまうと寝る間を惜しんで読み続けてしまう悪い癖が有る。多少の寝不足が許される連休は、読書にふける絶好の機会だった。


大型連休を控えて、駅のホームもいつもより賑やかだ。まだ夜は長い。これからどこか遊びに行くのだろう、はしゃいだ空気が特に色濃い女の子たちが騒いでいる。

自分たち以外は目に入っていないのだろう、人混みにぶつかりながらもきゃあきゃあと騒いでいる。

ああいうの、嫌いだなぁ。

周りの迷惑は考えたほうがいいと思うんだ。


もうすぐ電車が来る。彼女たちの嬌声を耳障りに思いながら、前を向く。

帰ったらゆっくりして、適当にご飯を食べて、とにかく怠惰な夜を過ごそう。

そんなダメ人間な決意をしたところで、背中に衝撃が。

何かぶつかった?混んでるし誰かぶつかったのかな、誰かの荷物かも。


背中に当たった何かを確かめようと目を向けると、騒いでいた彼女たちが、手に持った大きめのバッグを抱きしめて、焦ったような、信じられないような顔でこちらを見つめていた。


ああ、あのバッグが当たったんだな。


そう理解した私の視界いっぱいに、迫り来る電車が、映った。


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