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アイリーン

「どうして?一体何があったの?アイリーンどうしたの?」愛理は潤んだ瞳でユーディを問い詰めた。

 ユーディは首を左右に振り、目を伏せた。

「その…ごまんといるもっと上の人たちになんとかして貰えないの?」愛理は今度はレジィに食ってかかった。

「勿論、協力はしてもらってるよ。アイリーンは自分でこうしてるんだってさ」

「へっ?アイリーンが自分で?なんで?」

「さあ」レジィは肩をすくめた。「自分でやってるってことは、自由意思だからさ…誰にもどうにも出来ないんだよ」

「そんな…」

「けど、アイリーンが自分でこうしてるって言うなら、何か理由があるはず。きっと、こうするしかなかったんだ。でも、それが何なのか、どうしてこうしないといけないのか、誰もわからない」レジィは珍しくニコりともせずにずっと真顔でしゃべっている。「僕は、何かを守る為だと思うけど。愛理なのか、自分なのか…他の何かなのか」

 愛理は色と光を失って横たわるアイリーンを呆然とみつめた。

「アイリーンの中に何かが入り込んでるんだってさ。下層の者が入り込んでるんなら、ユーディの鎌で取り除けるはずって言われてるんだけど…でね、その何か、アイリーンの中だけじゃなくて、愛理の中にも一部入りこんじゃってるんだよね」レジィは少しニコッとして見せた。

「えっ?私の中に?」愛理は面食らった様子でお腹に手をやった。

「あ、大丈夫。僕、今日一日愛理についてたけど、特に何も影響ないみたいだった」

「そう…」って言われても、何か入ってるって…良い気はしないな。

「だから…私は」ユーディが重い口を開いた。「アイリーンと愛理を同時に…切り割いた。すまない、愛理」

 あ、そういう事…

「でも…取り除けなかった」ユーディは呟くように付け加えた。

 やっぱり違う…こんなユーディ…青い炎みたいだったのに……何が違うのかわかった

 炎が消えてるんだ



 ユーディはモノトーンのアイリーンの頬にそっと手を当て、哀しげな瞳でじっとみつめた。


 光輝あふれるアイリーン、私が憧れてやまないアイリーン…

 流れるようなウェーブの明るい金色の髪も、ラベンダーカラーの愛らしい瞳も、素晴らしい歌声を放つ薔薇色の唇も、アイリーンの全てが全身が色んな色にきらめいていたのに…溢れるほどのやさしい光を放っていたのに…

 何故こんな事に…


 何もかもいつも通りだった。いつものように、アイリーンが歌い、七色の美しい光の環が辺り一面に広がり、耐えられずに飛び出してきた黒いモノたちを私が鎌で刈取る…いつもの使命を果たしていた…いつも通りだった。アイリーンの透き通る歌声が途切れるまでは…


『アイリーン?』

『あ、ユーディ…』アイリーンの体から銀の紐が消えると同時に、アイリーンからみるみる全ての色と輝きが消え去っていった。


 私はただ、全てを閉ざし、色を無くしたアイリーンの体を支える事しかできなかった。

 あの時、アイリーンは何かを言おうとしていた…一体何を?

 私は飛び出してきていた黒いモノたちを確実に刈り取っていた。アイリーンの方へ向かうモノなんて居なかった。例えアイリーンの傍で急に出てきたのだとしても、あれが体に入り込むなんて事はないはずだ。何があったんだ…

 上はアイリーンと愛理に何かが入り込んでしまっている、私の鎌で取り除けるはずだと。ただし、刃先に触れるだけでなく、刃を中にくい込ませる必要がある。と…

 私に、アイリーンと愛理の体に銀の月を突き立てろと…私がずっと守ってきた2人に…


 けど、それが助ける方法なのであれば、やるしかない…



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