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地味なレジィ

 青い…

 愛理は全体がほの青く、空気にまでも青が感じられるようなそんな場所に立って居た。

 私、ここ、知ってる。2年前、聖歌隊が歌ってた…優がバスケしてた場所だ。

「優は今、来れないよ。ユーディと一緒になって下の方に居るから」

 声がすると同時に愛理の目の前に人の姿があった。愛理は、驚いて声の主を見た。

「こんにちはー」声の主は、にこやかに愛理に挨拶すると、周りを見て独り言のように呟いた。「『青の島』か…久しぶりに来たけど、やっぱ良いな、落ち着く。丁度良いや…ここでちょっと落ち着かせてから…」

「こんにちは」…誰?この子…しっぽが付いてないから、こっちだけの人だ

 寝ている間にこっちへ戻ってる人には、触れない銀色の紐がついてる。しっぽみたいな感じで。今の私にもちゃんと付いてる。こっちだけの生活の人にはしっぽがついてない。2年前にユーディに教えて貰った事。この子はこっちだけの人って事よね。

「そうそう、僕こっちだけの肉体持ってない人ね。レジィだよ。よろしく」レジィはかわいく小首を傾げてニッコリした。

「よろしく…」男?女?

「え、そこ迷う?別にどっちでも良いけど、一応男」

 どっちでも良いんだ…同い年くらいかな?

「どっちでも良いよ。男だろうが女だろうがあんまり関係ない。上に上がってくほど、差がなくなってく気がする。で、あー、歳は、ユーディより上かな?多分」

 へ?ユーディより上?っていくつ?いや、そんな事より、私しゃべってない…

「あ、ごめんね。守護者って心の声聞こえちゃうから。筒抜け。諦めて」レジィは人懐っこそうな顔で笑った。

 は?

「は?ってさ、そう言うもんなんだよ。ああ、僕、愛理の守護者なんだ」

「え?私の守護者って…アイリーンでしょ?」

「メインはアイリーンだよ。守護者って複数居るもんなんだ。ま、僕まだ、愛理に付いて2年ほどだけど。ほら、優と仲たがいした件、あれが一件落着した後くらいに交代したからさ。まあ、座ろっか」レジィがそう言うと、テーブルと椅子が現れた。

 あっ。そうそう、ここ、鏡とかウクレレとか、都合よく突然現れるんだっけ

「都合よく現れてるわけじゃなくて…これ、今、僕が作ったんだけどね」

「へ?」

「ま、良いから、ほら、座ってー」

 レジィににこやかに促されて、愛理は自然と座っていた。

 向き合って良くみると、レジィは小顔で黒目勝ちの目のかわいい顔をしている。髪は上半分をポニーテールのように上の方で束ねていて、毛先が元気にピョンピョン跳ねている。のだが、全体的になんとも落ち着いた色合い。髪は暗めのあずき色というか渋い赤紫というかそんな感じのシックな色合い。目もきれいではあるが落ち着いた茶色。服は暗い紺色と暗めのブルーグリーンで、これもかなり落ち着いた色目。良く見ると髪も服も本当にほんの少しだけ玉虫色に光っているようにも見える。

 男でも女でも関係ないねぇ…確かにどっちでも通りそう。けど、守護者ってみんなアイリーンとかユーディみたいにキラキラなのかと思ってた…レジィってなんか、すごく…地味

「アハッ、僕、地味?」レジィはおかしそうに声をたてて笑った。

「え?ん…地味。ユーディもアイリーンももっと鮮やかな色で輝きまくってたし。それに、なんていうか、中から出てくるものが半端なかった。優もそういうのあるんだけど、オーラっていうか…」

「光輝ね。確かに今の僕にはないだろねー。愛理は向こうでもそう言うの感じとれる人だよね。そのくせ、まだ自分を守るすべは知らない。だから、僕、大変なんだよ。ホントに」レジィは小さく溜め息をついた。

 はい?話が良くわかんないんだけど。

「かもね。わからなくて良いよ。ま、僕、ホントは派手だから」

 どこが派手?

「まあそれは良いからさ。じゃあ、わかる話しようよ。今日、音ちゃんに愛嬌でてきたって言われてたよね?あれ、絶対僕の影響だからね」そう言うとレジィはニコッと笑った。

「どういう意味?」

「僕、向こうでは愛理に一番べったりついてるんだし、影響出ないわけないんだよ」

「べったり?」影響?『一応男』の影響?

「うん。誰よりもべったりついてるよ。交代する前の人、サラって女性なんだけど、真面目な落ち着いた感じの人だからねー。あ、美人だけど。僕、愛嬌あるでしょ?」レジィはわざとらしくニマっと笑った。

 確かに一見地味でぱっとしないけど、気さくな感じで話しやすいし、表情も豊かでずっとニコニコしてるし…こういうのを愛嬌あるって言うのかな?んー、けど、『一応男』の影響で愛嬌でてきたって、なんか複雑。

「ふっ。愛理、わりとしつこいね。『一応男』だけどさ。さっきも言ったけど、考えてる事、筒抜けー、だしねっ」

「え?あ、ごめん」私、何考えてたっけ?

「ま、褒め言葉にとっとくよ。愛理は良いモノも悪いモノも寄せやすいからさ。僕くらいのがついてないと色々とやっかいなんだよね。こっちでの使命もあることだし」

「僕くらい?」

「あ、僕、腕良いの。守護にかけては、かなり出来るヤツなんだよっ」

「アイリーンは?」

「アイリーンは、導くって意味での守護。僕のは特殊な守護だから。祓師(はらえし)って呼ばれるんだけど、んー、イメージで言うなら退魔師みたいな感じかな。ちょっと違うけど」

「ん…なんとなく」

「ほんとは、もうちょっと早く愛理の守護者になるはずだったんだよ。けど僕が前に守ってた人が予定外に長生きしちゃって。あの人も寄せまくる人でねー、最後まで苦労した。まあなんとか無事終了。で、交代したの」

「寄せやすいって何?なんで寄せやすいの?」

「ん…体質だね。ま、だから、あっちで悪いのから僕が守ってる。ある意味一番守護してるよ。悪いのこれで祓いまくってる」そう言いつつ、レジィは背中の矢筒から矢を一本取り出した。それは、40~50cmほどの短い金色の矢だった。矢の先の方がオレンジと青緑の色味の強い虹色にきらめいている。

「矢?」

「うん。これが当たると退散!ってなる」

「へえ…キレイ。矢はもの凄くキラキラしてるね」

「だね。愛理に寄って来る悪いモノ祓うのに関してだけなら、今のところ僕まだ100%だよ。ただ、たまに、間違えて良いのまで祓っちゃったりするけど。気にしなーい」レジィは、くったくなくアハハと笑った。

 へ?

「あーそんな顔しないでよ。何事も完璧なんて無いんだからさっ。勿論目指してはいるよ?けど、どこまで行っても完璧って無いんだよねー。ま、だから目指せるんだけど。愛理の場合はさ、悪いのが入る方がやっかいそうだから。良いのはまた寄せれば良いだけだから。ねっ」

 そんなかわいく『ねっ』って言われても、良くわかんないけど…「そもそも寄せるって…何?」

「憑依」レジィはニコッと笑った。

「えっ、怖っ」この人、今、怖い事をかわいく言った。

「別に怖くないって。向こうじゃそんなのしょっちゅうある話なんだから。見えないからわかんないだろうけど、良いのも悪いのも憑依しまくってる。愛理、最近、楽になったでしょ?変なの憑かなくなったから。僕のお蔭なんだからね」レジィは今度は弓を取り出して(つる)を引いて見せた。

「何、そのかわいい弓」

「へ?あー、かわいいでしょ?キューピッドの弓っぽくない?」

 全長60cmほどの小さな弓。これも全体が金色できれいに光っている。弓の真ん中に薔薇色のハート形の大きな石が飾られていて、確かにキューピッドの弓っぽくもある。

「え?あ、そっちの意味でもかわいいけど、そんな小さい弓で当たる?」

「え、僕、命中率もすごいよ?まあ普通に手でも祓えるんだけどね、僕が守護する人って、寄せまくる難易度高めな人ばっかだから、たまにとんでもないの寄せたりもするからさ、矢で祓ってる。ま、手で祓うのって気持ち良いもんでもないし、手で払ってる祓師なんて居ないんじゃないかな。多分」

「手より矢の方が強いって事?」

「うん。そう。向こうでも僕、こんな地味ーな感じでやってるからさ、手だとあんまり力出せないんだよ。矢に力を込めてあるから、向こうだと矢の方が強力。ちなみに、交代前のサラはこれね」レジィは両手を重ねて人差し指を前に突き出し、狙いを定めるように片目を閉じた。「バンバンバン」

「拳銃?そっちのが強そう」

「んー、それがそうでも無いんだよね。まぁ一発で祓えるなら手っ取り早そうだけど…ま、その話は良いや。僕さ、愛理が起きてる間、せわしなくピュンピュン射ってさ、愛理が眠ってこっち来てる間にせっせと矢作り。僕、すっごい働いてるでしょ?」

 よくわかんないけど、そうなんだろうな…「ありがとう」

「いえいえ」レジィは満足そうに微笑んだ。「あ、でさ、基本的に、射るってね、僕、嫌なんだよね。だから、せめて可愛い感じにしてみてる」レジィはハートの弓を見せて、愛嬌たっぷりにかわいく笑った。

 嫌なら、やんなきゃ良いのに…

「そうも行かないよ。能力があるって事はさ、使わないと。与えられてるわけだから。嫌でも」レジィは初めて真面目な顔つきでそう言った。

「でさ、愛理」レジィはテーブルに両手で頬杖をつき愛理をみつめた。自然と上目使いになる。「今ね、アイリーンが大変な事になっててさ」

「え?アイリーン?」

「愛理の協力が要るんだけど。協力してくれる?」レジィは小首を傾げてかわいくお願いした。

 そんなかわいくお願いしなくたって…「そんなのするに決まってる」

「そ。じゃ、アイリーンとユーディの所へ行こうか」レジィは話は決まったとばかりに立ち上がった。

 ユーディ…赤い目のユーディ…怖い

「愛理、それ、誤解だからね。確かに、ユーディは愛理を刈った。けど、それ、アイリーンを救おうとしてやったこと。覚えてないだろうけど愛理も承諾した上でやった事。普通は向こう戻れば全部忘れるはずなんだけどさ…多分、ユーディに刈られた事が衝撃的すぎて、その場面だけが強く残っちゃったんだろね。ユーディは間違いなく、愛理を守る存在だから。安心して」

 愛理はレジィをみつめて、話を聞いていた。

「どう?この話、信じられる?」レジィは小首を傾げてニッコリ笑った。

 愛理はコクッと頷いた。

「じゃ、行こう。向こうで愛理が目覚ますまでに片つけなきゃーだからさ。ほら、早くジャンプして」

「ジャンプ?」

「あー、ユーディの所に行くって強く思えば行けるから。瞬間移動。ほら、ジャンプー」レジィは笑顔で両手を大きく下から振り上げて愛理を追い払うような仕草をした。

「ああ、そうなんだ」…ユーディの所へ行く!



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