第9話 ランクって、案外早く上がるよね
レッドグリズリーに何とか勝利したユウト。今回はそんなユウトのラブ……コメ?
ノラとほんのちょっとだけ仲良くなります。
では、第9話どうぞ~。
第9話 ランクって、案外早く上がるね
「……ん?……」
あれ、俺ってなんでこんなところで寝てるんだ?
「……ふみゅ」
「へ?」
あれ、なんで横でノラが寝てるんだ?あれ?
「んふ……ふみゅぅ」
あれ?まさか……俺が?いやいやいや、そんなことはありえない!絶っっっっっっ対にありえない!!
「おいノラ。ノラ!」
ノラの体を揺すって起こす。幸せそうな寝顔をして寝ていたので、少し可哀想ではあったが。
「んん……あ」
「おはようさん」
ノラは俺と目が合うと石のように固まってしまった。
「おーい、ノラさーん?」
手を顔の前で振ってみる。しかし、反応がない。
「どうしたん、だっはぁ!」
ノラの頭突きが俺の腹に直撃!寝っ転がっているので回避は不可能。受身も取れないので衝撃は直に俺の体へと伝わる。
「うぐぐ……の、ノラ……いきなりどうした……」
いくら高いステータスを持つ俺でも痛いものは痛い。俺は痛みに耐えながらノラを見る。ノラは頭突きをしたと思ったが、俺の胸に顔を埋めただけだった。
「ノラ?」
「ぐすっ……」
鼻をすする音がする。きっとノラが泣いているのであろう。
「ごめん……なさい。私が……私がユウトのところに行ったから……」
思い出した。そうだ、俺はレッドグリズリーと戦って、勝ったんだった。いや、正直あれは勝ったと言っていいのか分からない。最後はほとんど自爆に近かったからなぁ。
「ユウトが怪我しちゃって……ユウトのことが心配で・・ぐすっ」
はぁ……怒ろうと思ったが、なんだかそんな気分になれないな。まぁ、本人が反省しているなら何も言わなくていいか。
「ノラ、ちゃんと反省してるんだよな?」
「うん……ごめんなさい」
「それなら、俺は何も言わないよ。ノラが反省してるなら、怒る必要もないしね」
「……ほんと?おこってない?」
ノラが上目使いで聞いてきた。お前、それをどこで覚えた!く、俺はロリコンではないが……想像以上の破壊力だ!
「あ、あぁ。怒ってない。だからもう泣かないでくれ」
「ユウト!」
ノラが抱きついて来る。しかも、抱き付く力が半端じゃない。
「ノラ、心配かけたな」
俺はノラの頭を撫でながら抱き返した。
あの戦いを経験した俺は、無茶は誰のためにならないと思った。たとえ力があっても、油断していては本末転倒だ。俺は今を噛み締めて生きていく。そう、誓った。
俺が起きたことを知った村長が村の人たちを集めて宴をするといい始めた。それに村の人たちは大賛成と言った感じで準備を始めてしまった。
ちなみに、俺とノラが抱き合っている(変な意味はない)時にちょうど村長が部屋に入ってきた。そして、俺達を見るとニヤニヤとし始め、「いやはや、お邪魔しました」と言って部屋を出て行こうとした。
俺が、「別に変な事はしてませんよ!?」と言っても、「はっはっは。いいんですよ?」なんて言う始末。
ノラは俺と村長が言い合っている間、顔を真っ赤にして俺の胸に顔を埋めたまま動かなかった。
それを見て、また村長が「はっはっは」を笑い出し、その後もてんやわんやでした。
「はぁ、村長も人が悪い。まったく……」
俺はノラと共に宴が開かれる村の広場まで歩いて向かっていた。その途中で俺は今さっきの事を思い出し、溜息を吐いた。
今さっきまで村長の誤解を解くため、必死になって言い訳(?)をしていた。そのため、謎の疲労感が俺を襲っていた。
「ユウトは……」
「ん?」
「ユウトは、私と……その、一緒にいて……嫌?」
ノラが変な事を聞いてきた。何故そんな事を聞くのかと聞くと、「だって、今さっきのユウト。不機嫌だった」と言われた。別にそんなつもりはなかった。
まぁ、確かに勘違いされたので不機嫌ではあったが……。
「ノラは勘違いしてるな?」
「え?」
俺の横を歩くノラの頭に手を置き、話を続けた。
「一緒にいて嫌な奴の頭を撫でるはずがないだろ?ましてや、危機的状況で守ったり、お前を守るなんて言う奴がどこにいるんだ?」
「~~~っ!!」
ノラは俺のセリフに真っ赤になる。こいつ……チョロイ。そう思ってしまった俺を、誰が責められるだろうか。
「俺はノラと一緒にいれて嬉しい。あの時、ノラを守りきれたと思えたときは本当に嬉しかった」
そうだ。俺は赤熊を倒そうと思ったのはノラがいたからだった。ノラがいなかったら、きっと諦めていただろう。でも、ノラがいるから、ノラを守りたいから戦った。そして、倒せたんだ。
「それに、ノラは俺の大切な……奴隷、だからな!」
ニッとノラに笑いかける。対してノラは顔が爆発するんじゃないかってくらいに真っ赤になっていた。
「そそそ、それは……あああ、あのなのですよ?」
お、ノラの謎語尾が発動している。さっきまではなんとか抑えていたようだが、俺はこの語尾が好きなのであえて動揺を誘った。
「ははは。さ、皆が待ってる。行こうか」
「あ!ちょ、ちょっと待ってくださいなのですよー!」
村の宴はとても楽しかった。村の人たちは俺を英雄やら救世主やら言っていたが、なるべく無視していた。
村長は俺に、「ノラをユウト様の奴隷にするのは、やぶさかではありませんぞい?」と耳打ちしてきた。
まさか、孫娘を嫁としてではなく奴隷として、昨日今日知り合った冒険者の元に送り出すとは……この村長、相当できる!
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一夜明けた次の日
「ふわぁ…………昨日は楽しかったなぁ」
俺はベットから起き上がり、昨日の宴を思い出しながら頭痛に身をよじる。
「イテテ、まさか……。コピー・オフ」
そう呟くと、頭痛が引いていく。まさか、気絶したとしてもコピーの力はオフにならないなんて……。覚えておこう。
「ふぅ……さて、ずっとこの村に滞在してしまっているなぁ。早く町に帰って、ギルドに報告しないと」
依頼を受けてから2日間、俺はこの村の村長宅に泊めていただいている。はぁ、依頼を受けたその日に帰って報告をする予定だったのに……。まぁ、いいか。
俺は村長に挨拶するため、部屋を出てリビングに行く。
「お、ユウト様。お目覚めになりましたか」
「おはようございます、村長。さっそくで悪いのですが、俺は町に帰らせてもらいますね」
「おぉ、それは急なお話……でもありませんか」
そうだな。俺は帰る帰る言って、結局帰れていない身。本来なら今、この村にいること自体がおかしいのだ。
「そうですね。準備する事もないので、俺は行きますね」
「そうですか……それでしたら、ノラ!」
「はい?」
村長が呼ぶと台所からひょっこりとノラが顔を見せた。
「ユウト様がお帰りだ」
「え!?もう行っちゃうのですか!?」
「あぁ、帰るけど」
「何をしてるか!さっさとお前も行かんか!」
「わ、分かってるのですよ!」
うわぁ、なんか嫌な予感がするぞ?俺が言ったことではあるが、本当についてくる気なんだな。しかも、奴隷として……。
ノラはそそくさと準備をし、俺のもとまで走ってくるとペコリとお辞儀をした。
「ユウト……いえ、ご主人様。不束者ですが、これからよろしくお願いします」
て、丁寧語だと!?お、落ち着け俺!素数だ。素数を数えるんだ!
なんてアホなことを考えていると、村長がニヤニヤしながらノラの後ろに立った。
「ノラは少々抜けているところがありますが……何とぞ、よろしくお願いします」
そう言うと、村長もノラと同様に頭を下げた。
「やめてください!……・はぁ、分かりました。しばらく、お孫さんをお預かりします」
村長は俺の言葉を聞くと、さっきと同様にニヤッと笑う。
「しっかりやるんだぞ、ノラ」
「はいです!」
「それでは、またいつでもいらしてください。歓迎いたしますので。それと……」
村長がまた耳打ちしてくる。
「預かる、ではなくそのままユウト様のものにしてしまっても良いですよ?」
「なっ!?」
俺はそれ以上言葉が出てこなかった。この村長……もう、(訳)分かんねぇなぁ。
俺はノラと共に町へと凱旋した。
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「ただいまでーす、依頼完了してきましたー」
俺は町のギルドに直行し、例の人のところへと来てそう言った。
「あ!ユウト様。ご無事で何よりです。ジーン様がご心配なされていましたよ?」
「え、そうなんですか?」
「はい。ですので、この後直ぐにジーン様の元へと行かれた方がよろしいかと」
そうか、ジーンが俺の心配をしてくれていたのか。これは、食事でもおごってやるか。
「そうします。じゃあ、依頼の報告いいですか?」
俺は冒険者カードを差し出しながらそう言う。
「かしこましました。それでは確認いたします」
例の人は俺の冒険者カードを受け取ると確認作業に移った。そして、直ぐに驚愕といった表情になった。
「ゆ、ユウト様?まさか、レッドグリズリーを倒されたのですか?」
「え、はい。倒しましたね。それが何か?」
「…………」
例の人は口をぽかんと開けたまましばらく動かなくなってしまった。
あれ?俺、何かまずいことしたかな?それとも、やっぱりE級冒険者がC級モンスターを倒すのは想定外のことなのか?
そんな事を考えながら数分間、例の人が戻ってくるまでノラの頭を撫で回して待っていた。
頭を撫でられたノラは、最初は恥ずかしがり嫌がったものの「ノラは俺の奴隷なんだろ?だったら拒否権はなよ」と言ったら、大人しくなった。
なので、しめしめと思いながら存分に堪能した。ノラは相変わらず顔を真っ赤にしていたがな。
ハッとして戻ってきた例の人は「ちょ、ちょっとお待ちください!」と言って、受付の奥に行った。そして、直ぐに戻ってくると俺のランクがCまで上がったと言われた。
ランクが上がるのって、早いね。
はい、ノラ可愛いです。そして、可愛いは正義です。
チートな主人公が強い魔物を倒して、一気にランクが上がる。はいはい、テンプレテンプレ。
でも、それが作者は好きなのです。気に入らなった方、申し訳ありません。
次回はヒロイン候補が増えます。
お楽しみに~。