第5話 装備を整えよう
どうも、初心者Pです。
今回も話が進まなかった……。
それでは、第5話どうぞ~。
また一夜明けて、今は宿屋の食堂でジーンと食事を取っている。
「ユウト、昨日は無事に依頼を達成できたか?」
「ん?あぁ、できたぞ。その時にサリーという人を助けて、一応仲良く……なったのかな?」
「サリー!?」
ジーンがガタッと立ち上がる。
「サリーって、あのサリーか!?」
「どのサリーかは分からないが、多分そうだ」
「……お前、その縁は大事にしろよ」
「あ、あぁ」
俺は食事を終え、部屋へ準備をしに戻ろうとした時にふと思い出した。
「なぁ、ジーン。『世界の倉庫』っていう店がどこにあるか知ってるか?」
俺がそう聞くと、ジーンは呆れた顔をして答えてくれた。
「おまえなぁ、その店の場所を知らないのはお前くらいだと思うぞ?」
え、まじっすか。あれ、でもあの本にはそんな事書いてなかったような?
ジーンが親切に店の場所を教えてくれたので、俺はさっそく行ってみた。
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「あのー、サリーさん居ますか?」
俺は店に入り、受付にいた店員さんに聞いてみた。
「サリーさんでしたら奥に居ますが……。何かご用でしょうか?」
「えっと、用と言うか、来てくれと頼まれたと言うか……」
「え?まさか、タチバナ様ですか?」
「え、えぇ。そうですが」
「しばらくお待ちください!」
俺がそう言うと、店員さんは慌てるようにして店の奥に行った。
しばらくすると、サリーさんが出てきた。
「これはこれは、タチバナ様。来ていただけるとは、ありがとうございます」
サリーさんはニコニコとしている。これが営業スマイルというやつか。まぁ、別に不快ではないけど。
「まぁ、買いたいものもありましたしね」
「買いたいものですか?」
そう。今日来たのは昨日の事で思うところがあったからだ。昨日のゴブリン討伐の時にね。
「えぇ、ここに武器や防具ってありますかね?」
「はい、こちらには何でも揃っていますよ。まぁ、奴隷などはいませんが」
奴隷!?や、やっぱりいるんだ……そういうのが。奴隷か、ほしくない訳ではない。が、今は必要ないしなぁ。
「そうですか。だったら、装備を買わせてもらうかな」
「ありがとうございます。何かご希望はありますか?」
「希望?……そうですね。まず武器のほうですが、頑丈で長持ちし、切れ味の良いものが好ましいですね」
「それでしたら……・こちらはいかがでしょうか」
サリーさんが一つの剣を取り出した。見た目は長めの片手剣。刃の長さは大体50~60センチだと思う。
「こちらは『バスターブレード』と言いまして、少し重めではありますが丈夫です。あまり無茶な使い方をしなければ長持ちするでしょう」
「へぇ、持ってみてもいいですか?」
「どうぞどうぞ」
サリーさんに渡されたバスターブレードを持ってみる。たしかに重かった。が、その重さのおかげで振りやすいというのが、正直な感想だった。
「とてもいい剣ですね。それと防具も欲しいんですが、こっちは軽めでお願いします」
「分かりました。ではでは……これなんかどうでしょう」
サリーさんが薦めてきたのは全身真っ赤な皮防具だった。
「これは『レッドウルフ』という魔物の皮を使った防具です。軽くて機動性に優れていますよ」
「なるほど……。でも、ここまで赤いのは」
実際は赤と言っても黒っぽく、くすんだ赤なのだが……。
「しかし、これ以上に軽いとなると……。今直ぐにはご用意できません」
「そうなんですか……」
悪くはない。悪くないが、目立たないか?
「……仕方ないか。これを買います。それと、外套なんかはありませんかね?さすがに、これを着て町を歩くのはちょっと。あ、色は黒系でお願いします」
俺の言葉に察したのか、サリーさんは直ぐに外套を持ってきてくれた。
「こちらなんかどうでしょうか。色は黒で、【物理耐性・中】と【魔法耐性・少】が付与されています」
「ほぉ、魔法が付与されているんですか」
この世界では、ただの装備と魔法で強化されている装備がある。もちろん、魔法が付与されている方が強い。だが、その付与魔法を使えるのは魔法使いの中でも極僅かの人物だけだ。なので、価値が高い。それも、一般的な冒険者ではほいほい買えるものではないのだ。
「えぇ、ですのでお値段が・・まぁ、お察しの通りなのですが。タチバナ様は私の命の恩人。なので、今回はお安くさせていただきます」
「それはありがたいですね。それじゃあ、それも含めた全部を買わせてもらいます」
「まいどありがとうございます。バスターブレード、レッドウルフ防具一式、外套、全部で30万コルでございます」
30万コル。銀貨で300枚、金貨で3枚だ。高いと言えば高い。だが、バスターブレードが5万、レッドウルフ防具一式が15万、外套10万と言ったところだろう。しかも、外套は安くなっている。きっと20万くらいしたのではないだろうか。そのくらいしてもおかしくはない。そのくらい、魔法が付与された装備は高いのだ。
「それじゃあ、これで」
俺は金貨3枚をサリーさんに渡す。
「はい、ちょうどですね。武器などはここで装備なされますか?」
「あ、はい。そうさせていただきます」
俺は装備を一式買い、装備させてもらった。
「タチバナ様、良くお似合いですよ」
俺の姿を見て、サリーさんがそう言ってくれた。
「ありがとうございます。それじゃあ、俺はこれで」
「あ、ちょっと待ってください」
俺が店を出ようとすると、サリーさんに止められた。なんだろうか。
「タチバナ様、これを受け取ってください」
サリーさんが差し出してきたのは金色に輝くカードだった。
「これは?」
「こちらは私の店のお得意様に差し上げているカードでございます」
「え?でも、俺は今日が初めてですよ?」
「そうですね。ですが、これからも私の店をご利用くださるようにと差し上げたのです」
なるほど。顧客ゲットのためか。特に不利益はないならもらってもいいだろう。
「それで、それを貰うと何か良い事があるんですよね?」
「はい。このカードにはランクがありまして。最初がブロンズ、次からシルバー、ゴールド、そして最後にプラチナという感じにですね。そして、そのランクに合わせて店では特典が付きます。ブロンズなら全国の店で会計の5%オフ。シルバーなら15%、ゴールドなら25%。そして、プラチナは50%オフになります」
「そ、それってすごいお得じゃないですか!」
「そうですね。しかし、このお得意様になるにはある一定以上の金額分、商品を買っていただいたお客様に限りのお話なので」
それもそうか。そのくらいの縛りがないと、この店は大赤字になってしますだろう。
「そうですよね……。でも、いきなりゴールドっていいんですか?」
「ダメですね」
「即答!?」
まさかの即答いただきました!
「ですが、今回のように命を救っていただいたのは初めてだったのです」
「え?」
「私がサリーだと分かると、助けてくれる人はたくさんいたのですが……。タチバナ様のように、何も知らず、自分に利益がないかもしれないのに助けてくれる人は……1人も居なかったのです」
その人たちの気持ちは俺にも分かる。魔物との戦いには自分の命が掛かる。なので、他人のために、しかも利益がないかもしれないのに自分の命を掛ける奴などほとんどいない。でも、目の前で襲われている人が居て、その人を見捨てる奴が居るのなら……俺はそいつの気持ちを理解できない。
「なので、私は感動したのです。タチバナ様はお強い。しかし、その力に自惚れず、確実に魔物を仕留めるその手際。そして、自分だけでなく相手を思いやる気持ちに。とても、感動いたしました」
「は、はぁ。俺が勝手にやったことですので、そこまで言われるのはおかしいと思いますが……」
「そんなことはありません!」
この後、数十分間のトークが俺を襲った。
「……サリーさん。俺の事、タチバナ様なんて呼ばないでください」
「え?そ、それは……」
「気軽にユウトでいいですよ?」
「それでは、私のこともサリーとお呼びください。それと、敬語も要らないですよ。これからよろしくお願いします。ユウト様」
様付けは直らないのか……。
「よろしく、サリー」
俺は心の中でサリーに感謝しながら、『世界の倉庫』を後にした。
助けた人が実は有名人で、色々と贔屓にしてもらう。はいはい、テンプレテンプレ。
だが、それがいい!
次回はヒロイン…かもしれないキャラが出てきます。
お楽しみに~。