第22話 レベルを上げたい
どうも、小説のレベルを上げたい初心者Pです。
今回は初のダンジョン潜り。初心者用と言えど、油断はできませんよね。
このダンジョンでユウトは強くなれるのか!
ということで、第22話どうぞ~。
第22話 レベルを上げたい
ということで、やってきました『浪費の迷宮』!王都から徒歩5分で着いたよ。すごく立地はいいね、立地は。周りは木々が生い茂る森で、入り口は洞窟みたいになっている。THA・ダンジョンだ。
そんなことはどうでも良くて、重要なのは本当に人がまったくいないということ。ハインが言っていたことは本当のようで、ダンジョンに入る人も見張る人もいない。本当にこれでいいのか?
「ま、いっか。取り敢えず中を見てみないことにはどうしようもないしな」
俺は剣を抜き、ダンジョンへと入る。中は思ったよりも明るく、空気も澄んでいた。それが逆に気味悪くて、あまりいい気分にはならなかった。
ダンジョンに入ってすぐのことだ。上から何かがペシャっと落ちて来た。急いで剣を構えそれを見ると、青いゲル状の魔物……スライムがそこにいた。
「本当に初心者向けのダンジョンなんだな」
スライムはその場でくねくねと動いているだけで攻撃してくる様子はない。正直、こんな無抵抗な魔物を殺すのは気が引けるが、これも強くなるため。
「切り捨て御免!」
勢いよく振り下ろした剣はスライムに命中。したが、効果はナシ。やはり、液体状の魔物には物理攻撃が効かないらしい。
となると、やはりここは魔法で攻撃するしか手はないな。よし、まずは火魔法で攻撃してみよう。
「《ファイアーボール》」
放たれた火の玉はスライムに命中。すると、スライムは爆発四散し影も形もなくなってしまった。だが、さっきの威力は前回とはまったくもって別物だった。
ということは、俺は確実に強くなっているらしい。ステータスが上がって、魔法攻撃の威力も比例して上がったのだろう。嬉しいことだ。
「さて、それが分かっただけでもやる気が出てきたぜ!どんどん狩るぞ!!」
俺はやる気十分でダンジョンの奥へと進んでいった。途中、見覚えのある魔物と出会った。初めて会ったのはサリーを助けた時だったかな。
四足歩行で近付いて来たそいつは、俺の目の前まで来ると二足歩行になり体を大きく見せながら威嚇をしてきた。
「グガァァァ!!」
「久しぶりだな。グリズリー」
「ガァァ!」
「おっと、慌てるなよ」
俺がへらへらとしているのが気に食わなかったのか、いきなり噛みついて攻撃してきた。もちろん、あの程度は余裕で躱せるようになっているので何の問題もない。
「反撃させてもらいますよっと」
グリズリーの初撃を躱した俺は、スライムの時と同様に剣を勢いよく振り下ろした。すると今回はグリズリーを見事に一刀両断。真っ二つにすることに成功した。
やはり武器は大切だな。戦える体と、それに応える武器があって初めて戦闘は成り立つな。
「いやぁ、クレイモアは良い武器なぁ~……ん?」
「グルルルル」
「次が来たか」
グリズリーの血の臭いで来たのか、ウルフが4匹俺を囲んでいる。その内1匹は体が赤く目も赤い。おそらく、レッドウルフとはこいつのことだろう。
まさか初心者用ダンジョンでこんな上物に出会えるとは、これで俺のレベ上げが捗るな!
「グルルル、ガウ!」
「ガウガウ!」
「ガァァ!」
「おっと、やる気満々。来いよ犬っころ……俺が相手してやるよ」
俺の言葉が合図となりウルフ達が一斉に襲い掛かってくる。俺はそれを避けながら1匹、また1匹と剣で一刀両断していく。
そして、最後に残ったレッドウルフとのタイマン勝負となった。
「グルルルル」
「さて、残るはお前だけだぜ」
「グルルルル……ガァ!!」
「来い!!」
レッドウルフが飛び掛かってくる。俺はそれを避け反撃しようとしたが、既にレッドウルフは地面の上。物凄いスピードで飛び掛かってくるレッドウルフに翻弄されてしまっている。
この速さに付いて行くには剣が重すぎる。しかし、この剣を捨てる訳にもいかない。どうする、どうする俺。
「……仕方ない。片手剣スキルに頼るか」
レッドウルフへの対抗策を考えたが、結局この答えに行きついてしまった。これはしょうがない。今の俺の力で、一番うまく使えているのはこのスキルだ。
俺は剣を右手だけで持ち、レッドウルフに向け構える。構えはドラゴン戦と同じ、剣を相手に突き立て左手は添えるだけ。
「ガァァ!!」
「《一閃突き》!!」
レッドウルフの噛みつきに合わせ一閃突きを放つ。剣はレッドウルフの口を通り反対側へと突き抜け、串刺しにした。俺は勝利した喜びを胸に、倒れた魔物たちから使えそうな部位を探り切り取った。
その後、数分間は同じような敵しか出てこなかった。新しい敵と言えばゴブリンくらいだ。と言っても、単体でいることが多く、なんの脅威にもならなかった。
そう思いながら奥へと進んでいると、またゴブリンのような奴がこちらに背を向けて立っているのが見えた。
「(ここは奇襲を仕掛けよう。ゴブリン程度なら、一閃突きで一撃だ)」
俺は足音を殺し、ゴブリンにゆっくりと近付いた。そして、技の範囲まで来たと思った俺はすかさず一閃突きを放った。
決まった!そう確信した俺だったが、ゴブリンは真上に飛び避けた。しかも、そのまま落下してきて持っていた剣で俺の背中を斬りつけた。痛い、というよりも驚きの方が勝っていてただただ混乱するだけだった。
何故だ。何故、ゴブリンが俺の攻撃を避けられた?偶然……ではない。反撃してきた時点で気づいていたのは確定だ。だが、そんな能力普通のゴブリンにはないはず……。
そこまで考えて分かってしまった。このゴブリン、普通のゴブリンではない。どこか異質、特殊なゴブリンなのだと。
それを裏付けるのが見た目だ。通常のゴブリンよりも背が高くスマートで、装備も充実している。剣も錆てない切れ味の良いものを使ってるし、技も冴えてる。
「グギギャ」
「くそ、強いな。だが、退かない!」
今度は真正面から斬りかかった。しかし、特殊なゴブリンはそれを避け腹を横一文字に斬られてしまった。そして、俺が痛みでよろめいた隙を見てもう一度背中を斬られた。
「身のこなしから何まで全部違う。強い……俺よりも。ここは、コピー・オン!!」
ここは、こんな強い相手と戦うことになったことを悲観するのではなく、それをコピーできると思えばまだまだ戦える。
それに、もしかしたら奇襲を避けたあの技の原理を知れるかもしれない。
「食らえ!一閃突き!!」
「グギャ!」
また避けられた。ゴブリンは同じように俺に斬りかかろうとしている。だが、今回はこれで終わりじゃない!
「グ……薙ぎ払い!」
「ギャ!?」
俺は無理やり体の方向をずらしながらゴブリン目掛けて剣を振った。しかし、これもゴブリンの異様な反射神経で避けられてしまった。
だが、俺はこれで確信した。今の避け方は、俺が動く前に避ける動作に入っていた。つまり、俺が何をしようとしているかを事前に把握しているんだ。
「こんな相手、どう対処しろってんだ」
「グギャギャ……ギャ!」
「チクショウ!」
俺は必死に剣を振った。しかし、その全てをことごとく避けられ反撃された。そのおかげで、俺の体は斬り傷だらけ。これじゃあ、宿に帰ったらノラ達に心配されてしまう。いや、帰れるかどうかも怪しい……。
「って、何考えてるんだ俺は!」
修行中に死ぬとか笑い話にもならない。死にたくないけど、死ぬならやっぱり修行中よりも実戦中がいい。こんな死に方は嫌だ!
俺は残った力の全てを開放する勢いで剣を握り、頭上から真下まで降りぬいた。当然のようにゴブリンは避けた。しかし、俺の目的は当てることではなく。
「食らえ!《アースブレイク》!!」
「グギョエ!?」
俺の振りぬいた剣が地面に当たった瞬間、地面が大きくヒビ割れ、爆音が鳴り響き、砂煙が舞った。そして、その破片はゴブリンに当たりダメージを与えた。だが、それは致命傷と言うにはあまりにも弱く、掠り傷程度にしかならにだろうと予測できた。
でも、それで良かった。俺がしたかったのは、こいつに一泡吹かせること。それが叶えば十分さ。
「目的は達成した。さっさと逃げ……ん?」
俺が逃げ出そうとしたその時、ダンジョン全体が大きな音を立てながら揺れ始めた。そして、さっきつけた地面のヒビが大きくなり、終いには足元に大きな穴が出来てしまった。
俺はその穴に吸い込まれるように落ちてしまった。ゴブリンはどうにして逃げたようで、落ちてくる気配はない。
「ゴブリンめぇ!覚えてろよおおぉぉぉぉ!!」
声が木霊して聞こえる。俺は一体どこまで落ちるのだろうか。もしかして、ここで死んでしまうのだろうか。いや、自分で作った穴に落ちて死ぬとか、死因がかっこ悪過ぎて死ぬに死ねないな。こんなんじゃ誰にも言えないし、葬式でもきっと皆笑ってしまう。
「ふ、俺は絶対に死なnイテェ!!」
ドカンと勢いよく地面に叩き付けられた俺だったが、幸い地面が土だったので大きな怪我をすることもなく無事に着地した。いや、落下した。
だが、体は痛いのでゆっくりと起き上がり周りを見渡してみる。どうやら結構下まで落ちてしまったようだ。この空間の壁に地面の色がさっきまで見ていた色とまるで違う。
「ん?こんなこと前に聞いたような」
「グガァ!!」
「グルル!」
「グギャ!」
「グギャァ」
そう、ギルドマスターであるハインから聞いたモンスターハウスの話で出て来たんだった。色が違う空間は、気を付けろって。
ここ、完全にモンスターハウスですね。ウルフやグリズリー、ゴブリンなんかがわんさかいますよ。数がおかしい。これ、数十匹で収まるのかな?
「チクショウ!やってやろうじゃねぇか。お前ら全員俺のレベルの糧としてやるぜ!!」
モンスターハウスには気を付けろ……フラグ、回収。
さて、次回はモンスターハウスでユウトが無双します!
お楽しみに~。




