第11話 たとえ奴隷でも…前編
どうも、初心者Pです。
今回の話と、次回の話は戦闘よりも登場人物達の心の中を書いたものです。
それと、視点が途中で変わります。
それでは、第11話どうぞ~。
第11話 たとえ奴隷でも…1
「それは、本当か?」
俺はジーンの肩を掴み、揺らしながら聞いた。これほどまでに心を乱したのは何時ぶりだろう。そんな考えが頭の片隅に思い浮かんでしまうくらいに、俺は動揺していた。
「本当だ。これを見ろ」
ジーンが俺の手を肩からはずし、1枚の紙を渡してきた。そこには、書き殴ったような字でこう書いてあった。
~ユウトへ~
ユウトが奴隷を増やすと言った時、とても悲しい気持ちになりました。
でも、私は自ら奴隷になったので何も言えなません。
それでも、気持ちの整理がつきません。
探さないでください。
~ノラより~
うわぁぁぁぁ!?ノラが家出したぁぁ!!しかも、完全に誤解してる!た、大変だ、大変だ!何が大変って、ノラのおかしな語尾が発動してないということは、結構マジってところだ。
俺が手紙を握りしめ狼狽えていると、ジーンが肩を揺すってきた。
「ユウト、それを見つけたのはついさっきだ。早く探しに行こう」
視線を手紙からジーンに移すと、真剣な顔でそう言った。ジーン達に気付かれずにどうやって宿屋を抜け出したのか、気持ちの整理とはどのようなものか。分からないことは多いが、見つけて誤解を解かないと。
うん、落ち着いた。
「ありがとう、ジーン。そうだな、探しに行こう」
ノラ、変な奴らに絡まれてないよな。攫われたり、してないよな!?
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視点変更 ノラ
私の名前はノラと言います。ユウトの奴隷です。でも、本当にそうなのか……分からなくなってきたのですよ。
ユウトが奴隷を増やすと言った時、胸の奥がズキリと痛くなったです。
あれは、一体どういうことなのでしょう。私はユウトのことが好きですよ。でも、奴隷を増やすと言われて嫉妬するなんて、それはおかしい気がします。
奴隷は奴隷、ユウトと恋人関係になるなんてありえないです。分かっている、はずなのですよ……。
「はぁ……」
自然とため息がこぼれてしまう。下を向き、ここがどこかも分からない街を一人でトボトボと歩く。
ユウトは、私だけが奴隷ではダメなのでしょうか。やはり、たくさんの女の子に囲まれたいと思うのでしょうか。
それを止める権利は、私にはないのですよ。でも、でもでも、やっぱり嫌だと思ってしまうのですよ。たとえ、奴隷でも……。
そんなことを考えながら歩いていると、突然知らない男の人が声を掛けてきました。
「お嬢ちゃん、どうしたの俯いちゃって。迷子かい?」
見上げると、優しそうな顔をした男の人がいました。周りを見渡すと、どうやら気づかぬ内に薄暗い路地に入ってしまったようでした。
男の人の身に着けている鎧や剣をみると、職業は騎士の方なのでしょうか。
「私は迷子ではないのですよ。ただ、ちょっと考え事をしていただけなのですよ」
「考え事?もし良ければ、聞いてもいいかな?」
「……はい、ですよ」
見ず知らずの人に、こんなことを話すなんて普通なら考えもしなのに、何故だかこの時は誰かに聞いてもらいたかったのです。
私はユウトが言ったこと、それに私が感じた思いなどを話しました。でも、何故だか話の中で奴隷という言葉が使えなかったですよ。
取り敢えず誤魔化して話しましたが、やっぱりモヤっとして良く分からないのですよ。
「……という、ことですよ」
話し終えてみると、不思議と心がすっきりした気がしたのです。さっきまでのモヤッとした気持ちはまだあるけど、でも少しマシになったですよ。
「(ですよ?)…そっか、それは酷い人だね。その、ユウトっていう奴はまったくデリカシーがない」
男の人がユウトのことを勘違いしているのです。ユウトはそんな人じゃないですよ。強くて、優しくて、かっこよくて、私の大好きな……あれ、だったら何でこんなにユウトを酷いと思う気持ちが湧き出てしまうのです?
「でも、一人でこの辺りを歩くのは危ないよ。親はどこにいるの?」
「いません。ユウト……ご主人様もどこにいるか」
「ご主人様?」
私がご主人様と言った途端、男の人の声が冷ややかなものになりました。男の人の顔は怖いくらいに真顔で、冷たい視線で私を見てきました。
「もしかして君、奴隷なのか」
「は、はい」
ギリッと男の人が歯ぎしりする音が聞こえました。男の人はさっきの表情とは変わってとても辛そうな、悲しそうな顔をしていました。
この人は奴隷が嫌いなのでしょうか。でも、嫌いならこんな顔はしなはずですよ。だったら、何故?
「どうして、そんなに辛そうなのですか?」
「ッ!?……何でもない。君は、奴隷のままでいいのか?」
「え?」
この人は何を言っているのですか?奴隷のままでいいのかって、良く分からないのですよ。
私が首を傾げて「?」となっていると、男の人が私に向けて右手を突き出し何かを詠唱し始めました。
「私が求めるは破壊、絶対の魔法をもって、契約を破壊せよ。《ブレイク・コントラクト》」
男の人の詠唱が終わると右手が光った、とも思ったらすぐに収まってしまいました。男の人は困惑して何かをぶつぶつと呟きながら私を見ています。ちょっと怖いです。
「……そうか、だが、いやそれしかない。君、奴隷契約をしていないな?」
奴隷契約、聞いたことがあります。奴隷と主人を結びつける絶対の契約。これを結べば、奴隷を結んだ相手の物となります。人を物として扱う奴隷制度、あまり好きではありません。でも、ユウトなら……。
私が男の人の質問に「はい」と答えると、男の人はまた自分の世界に入ってしまいました。私は怖くなりその場から逃げようとしました。しかし…
「どこへ行く」
男の人に腕を掴まれてしましました。男の人は私の腕を痛いくらいに握りながら引っ張ってきます。
怖い、怖いです。とっても怖い……。こんなことなら、ユウトから逃げなければよかったのですよ。
「い、いや……」
「お前を主人の元へ返す訳には行かない」
男の人の目は血走っていて、正気か疑うくらいに息が荒くなっていた。
私は必死に男の人の手を振りほどこうとした。しかし、人間とは思えないくらいの強さで腕を握られていて、振りほどくことはできなかった。
「ユウト……ユウトー!!」
つい叫んでしまった私のヒーロー。自分から離れておいて助けを求めるなんてわがままだけど。ユウトに助けてほしいのです。
ドゴォォォォン
目を瞑ってユウトのことを思い浮かべたその時、男の人の後ろから大きな音がしました。男の人も驚き、音のした方を見ています。
「おいテメェ、死ぬ覚悟はできてるんだろうな?」
巻き上がっていた砂煙が風にあおられて消えていくと、そこには私が待っていたヒーローが立っていました。でも、少し様子がおかしいです。
「生きていたことを後悔させてやる」
ユウトの顔は私が見て来たあの優しい顔ではなく、本当に人を殺そうとしてい人の顔でした。
/(^o^)\ナンテコッタイ
ノラが襲われている!?
早く、ユウト早く助けてくれ!!
次回、ユウトが本気で怒ります。
お楽しみに~。




