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◆1不倶者の街◆

この小説の登場人物は、障害者が殆どです。


お読みになる際には、充分にご注意下さい。


◆1 不倶者の街◆



少年は、肢体不自由者だった。

草1本生えておらぬ砂漠を、四つん這いで這っている。

服装は上半身裸で、両肘に肘当てを着けて、両掌には籠手。

背中に荷を背負っている。

下半身には裾のない肌着を着け、その上からスカートの様な鎧を穿いている。

両足の膝には、やはり膝当てが着いていた。


「今日はここまでか」

少年は背中の荷を下ろし、西の空を見た。

日は既に沈んでいる。

頑張ればまだまだ進めるだろうが、無理は禁物である。


「さっさと準備しなくちゃ」

少年は荷を解いて、夜営の準備を始めた。


「冷えるな」

少年はテントを張って、その中で火を焚いた。

その時、初めて少年の詳しい全身像が明らかになった。

肌は小麦色に日焼けし、両腕は、太さはそれ程でもないが、筋骨隆々としている。

腹筋もそれなりに鍛えられており、およそ少年とは思えぬ程だ。


だが、殊更不似合いなのが、その顔つきだった。

少年というより少女のような日焼けした端麗な顔つきに、サラリとしたショートカットの黒髪という容姿。

少年の名はハヤト。

ここより東に四ヶ月程歩いた所にある小さな街の生まれであるが、身障者であった為に蔑まれ、虐げられて生きてきた。


「もう、戻らない」

ハヤトは毛布に体を包むと、そのまま眠りに着いた。




翌日、ハヤトは偶々通りかかったキャラバンのラクダに乗せてもらって、目的地に行く事にした。


「どこまで行くんだ?不倶者よ」

『不倶者』と呼ばれても、ハヤトは別段気を悪くしなかった。


「ちょっとね。故郷を捨てて旅をしてるんだ。かと言って当てがないわけじゃあ無い。『ハーランド』って知ってるかい?」

その名を聞いた途端、キャラバン全員がハヤトの顔をかわるがわる見た。

ハヤトは苦笑した。それもその筈である。

ハーランド。

世間から虐げられた障害者達が、自分達の街を作った。

それがハーランドである。

ハヤトもそこを目指していた。


昼過ぎ、ハヤトはキャラバンに別れを告げて、ハーランドを目指した。

目的の街は、目の前であった。

先ず、目に入ったのは巨大な鉄の門だった。

門をくぐると、様々な障害者が街中を闊歩していた。


「思ったより多いな」

一歩街中に入ると、今までと違う地面の感触が掌と膝にあった。

見ると、街の地面は舗装された土であった。


「ようよう兄ちゃん!美味しいリンゴはいらんかね」

やけに威勢のいい果物屋の主人が、声を掛けてきた。

ハヤトは店のカウンターに膝立ちすると、金袋を出して金を払い、リンゴを買った。


「うん、美味い!」

リンゴを齧りながら、ハヤトはハーランドの街を這い回った。

その結果気づいたのが、ここの住人は障害によって、様々な役割を与えられているという事だった。

例えば、この街にも兵隊がいる。

その兵隊もまた、障害者だ。

ハヤトの見た限りでは、口の利けぬ者や耳の聞こえぬもの、眼の見えぬものが大半だった。


一方、商人や飲食店の店員などは、ハヤトと同じ足の不自由なもの、若しくは腕の不自由なものが大抵である。

精神や脳に障害のあると思しき者達は、何やら街角でブツブツと本を読みながら呪文らしきものを唱えていた。


「待ちやがれぇ!!」

突然、街中に怒号が響いた。

ハヤトが声のした方を見てみると、2人の人間の姿が眼に入った。

一人は女性であり、ハヤトと同じく足が不自由らしく、必死になって這い回りながら追跡者から逃げている。

女性を追い掛け回しているのは、長い金髪に金の顎鬚を生やした大柄の男である。

男の左足は、義足であった。

手には、包丁を握っていた。


「大丈夫!?」

女性が自分の隣を通り過ぎようとした時、ハヤトは女性の腕を掴み、自分の背後に回して匿った。


「何だてめぇ!他人の内輪事に首を突っ込むんじゃねぇ!」

男は大分いきり立っているらしい。

包丁を振り上げ、ハヤトの肩目掛けて振り下ろした。


ガッ!

ハヤトはそれを難なく受け止めると、男のみぞおちに拳をお見舞いした。

「グハァッ!」

男はいとも容易く倒れこみ、気絶した。


「有難う」

「どういたしまして・・・」

改めて女性を振り返った時、ハヤトはその美しさにハッとした。

女性は少女と思えるほど若く、白のヘソ出しタンクトップに赤茶けた半ズボンを穿いており、黒い髪が肩まで伸びていた。


「えっと〜、僕の名はハヤト。此処へは来たばかりなんだ」

ややぎこちなく自己紹介をすると、少女はクスリと笑った。


「あたしはアイカ。16歳よ。宜しく」

何と、彼女は本当に少女であった。


「ねえアイカ、何であんな奴に追いかけられてたの?」

一番気になっていた疑問を、ハヤトは訊いた。


「それは・・・」

アイカが答えようとした時、彼女の表情が凍りついた。

ハヤトも恐る恐る振り向く。

気づくと、赤い布を体にまいた街の僧侶と思しき者達が、何時の間にか2人を包囲していた。

忽ち、2人は抵抗する間もなく僧侶に取り押さえられ、気絶させられてしまった。



初めましてジュニアです。


全くの初心者ですが、宜しくお願いします。

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