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緋咲奇譚  作者: シエル(ニジマスの神P)
第一部・一章 緋色月リフレクト
14/15

13 悪魔の来訪


 何とか予鈴が鳴る前に教室に駆け込むことに成功したオレは、一人ぼんやりと窓の外を見つめていた。

 暇潰し用に何冊か文庫本を持って来ているが、こう騒がしくては集中して読書もできない。

 ちなみに今は休み時間ではなく、授業中だ。


 ホームルームが終わってすぐに自習を言い渡されたのが三十分前。

 DQN共は馬鹿騒ぎするわ、一軍女子達は持ち込み禁止の雑誌を広げてきゃあきゃあ喚いてるわで教室はお祭り状態。


 そうそう、祭りといえば皆祭りの興奮が冷めやらぬようで、花火がどうだったとか、何処の屋台を回っただとかを語り合っている。

 確かに一日目から大盛況だったし、広場から神社の境内にかけて並ぶ屋台の数も相当だった。

 近隣の町内会や子供会にも相当呼び込みをしたのだと露店巡りの最中にかなるんが自慢していたのを思い出す。

 言われてみれば、会場には家族連れの姿が多かった気がする。

 普段歩いていても人とすれ違うことなんて滅多にないのに、何処からこんなに人が来たのかと疑問に思っていたが、そういうことか。


「……それにしても、遅いな」


 左隣の席に目をやるが、こういう時、人の輪の中心で騒ぎ立てているはずの瑠奈の席には誰も座っていない。

 朝のホームルームが始まっても、午前の授業が終わっても、瑠奈は登校してこなかった。


「あれ? 瑠奈ちゃん今日は休み?」

「さぁ? 昨日寒いのに薄着ではしゃいでたから風邪でも引いたんじゃなーい?」

「でも無断欠席なんて珍しいよねー、黄月さん皆勤賞狙ってたのに」


 昨日の大騒ぎを知っているらしいクラスメイト達の話し声が聞こえてくる。

 風邪か……季節の変わり目だし、そういうこともあるだろうが……何故か釈然としない。

 さっさと彼女のアホ面を拝んで安心したかったオレは僅かな落胆を覚えた。


「おーい、緋咲!」


 一人物想いに耽っていると、騒がしい奴が一人やってきた。

 無視しようかとも思ったが、それはそれでべたべたしてきて鬱陶しいので渋々顔を上げた。


「……何だよ三浦」

「何だよってお前、昨日は大活躍だったみたいじゃん? 金魚すくいで瑠奈とガチンコバトルしたって噂だぜ? そうと知ってりゃ俺も盆踊りなんかしないで金魚すくい見に行ったのになー!」

「また噂かよ」


 どうやら自分の預かり知らぬ所で随分と見世物にされていたらしい。

 あの時は祭りの熱気に飲まれてテンションがおかしくなっていたが、こうして冷静になって思い返すとかなり恥ずかしいことを言っていたような気がする。


「……でもまぁ、偶には大勢で馬鹿騒ぎするのも悪くないかな」

「お? 緋咲がなんか悟ってるぞ」

「喧しい、散れ」


 手で払う仕草をして三浦を追い返そうとするが、三浦は近くの椅子を引っ張ってきて腰を下ろした。居座るつもりかこいつ。


「でも黄月は風邪で休みなんてついてないよなー、昨日の話聞きたかったのに。あいつが金魚すくい名人の娘なんて初めて聞いたぜ!?」

「まぁ瑠奈だからな。オレ達の想像を容易く打ち砕いてくれるだろうよ」

「……あんたの中の瑠奈は超人類か何かなの?」


 呆れたような幼馴染の声色が間近で聞こえ、オレと三浦は同時に飛び上がった。


「うわっ、かなるん!?」

「か、かか奏流ちゃん!? どうしてここに!?」

「御機嫌よう。貴方は……三浦先輩、でしたか?」

「は、はい!」


 かなるんがジト目から令嬢モードに切り替えて微笑むと三浦は真っ赤になり、声を上擦らせながら固まる。

 あの陶酔し切った目は間違いない。テレビの中だけでしか会えないアイドルを目の前にして上がってしまったドルヲタの目だ。


「楽しくお話中申し訳ありません。キンタロー君をお借りしたいのですが、よろしいですか?」

「緋咲? う、うん! 全っ然気にしないよ! 連れてってよし!」

「おい、押すな馬鹿」


 すっかり茹でダコ状態の三浦は目を回しかけながらもグイグイとオレの背中を押してかなるんに差し出す。

 放っておけばオレに熨斗をつけて送り出しそうな勢いだった。


 三浦の馬鹿が騒ぎ立てたせいか、クラスメイトは無関心を装いながらもちらちらとこちらを見ている。

 主に男子からの視線が痛いほど背中に刺さるが、無視してかなるんに向き直った。


「何の用だよ。教室まで押しかけてきやがって……」

「大事なお話があるの。ここじゃ言えないから、ついてきてくれるかしら」


 大事なお話。

 そのフレーズに、教室の至る所から悲鳴や歓声が上がった。


「おい、翠ヶ崎さんが緋咲に大事な話って何だよ!? しかもここじゃ話せないって……!?」

「ま、まさか告白!? あの野郎、ファンクラブの俺達を差し置いて何て羨ま……否、けしからん! すぐに幹部達に通達だ!」

「待て待て相手は緋咲だぞ!? 引っ掛けかもしれん!」

「うっそ告白!? でも緋咲君って瑠奈ちゃんと付き合ってるんじゃなかった!?」

「瑠奈とは遊びだったの!? サイテー!」

「この浮気男! もげろ!」

「ハーレム断固反対! 一夫多妻を許すなー!」


 おいコラ、待てお前ら。

 勝手に告白と決めつけるな、盛り上がるな! 後浮気っつったのは誰だ!? オレは誰とも付き合ってねーよ!


「ふ、ふざけんなお前ら! 誰が浮気だ二股だ、オレは誰とも付き合ってねーからな!?」

「騒いでないでさっさと行くわよ」


 理不尽な非難に全力で抗議していると、かなるんはさして興味もなさげにオレの後ろ襟を掴み、ずんずんと廊下へ進んで行く。

 三浦といいお前といい、オレを猫か何かだと思ってるんじゃなかろうか。


 階段に差し掛かり、クラスメイト達の声も遠くなった辺りでかなるんはぺいっと乱雑にオレを投げ捨てる。

 咄嗟のことに受け身を取れず、オレは顔面から綺麗に着床した。


「ぐほっ!? いってて、もう少し丁寧に放せよ! 今日だけで三回くらい吹っ飛ばされてる気がするぞ!」


 床に打ち付けた鼻柱を押さえながらかなるんを睨みつける。

 ……だが、いつもの憎まれ口は返って来なかった。


「……おい?」


 かなるんは壁にもたれかかりながら、ぼんやりと窓の外を見つめている。

 オレが呼びかけても返事することはなく、憂いを帯びた横顔からは感情を汲み取ることができない。

 よく見るとジャケットの肘辺りをギュッと掴み、落ち着きなさげに視線を揺らしていた。


 いつも戦車のように喧しい彼女らしくもない様子に、胸中で荒ぶっていた波が引いてゆくのを感じた。


「……どうしたんだよ。大事な話っていうのは何だ?」

「その前にあたしからも一つ良いかしら。さっきまで七家の緊急会議が行われてたって話、あんたは聞いてる?」

「緊急……会議?」


 不意に飛び出した七家という単語に顔が強張ってゆく。

 十六夜町で七家と言ったら、ほぼ間違いなく十六夜町を束ねる旧家七家のことを指している。

 七家が顔を合わせるのは月に一度行われる会議と、年末年始のパーティーくらいだ。それ以外では、余程のことでない限り集まることはない。


 この時のオレはぽかんとした顔をしていたと思う。

 かなるんはオレを睨みつけるように鋭い目で射抜いていたが、やがて悟ったようにふっと息を漏らした。

 

「やっぱり知らされてないのね。ま、当然か。あんたには教えないでしょうね」


 何処となく含みのある言い方だが、不思議と嫌味は感じられない。


「十六夜七家が雁首揃えて緊急会議って……何があったんだよ?」

「それは……えっと……」


 かなるんは暫く無言だった。はぐらかすというよりも、答えていいべきか迷っているような様子だったが、やがて心を決めたように大きく深呼吸する。

 次の瞬間、かなるんは今まで一度も見たことがない真面目な表情を浮かべていた。


「今朝六時頃、犬の散歩中の老人が沢のほとりにて女子学生の変死体を発見しました」

「は……?」


 世界が止まったような衝撃が全身を駆け抜ける。

 けれどそんなのは錯覚に過ぎなくて、時計の針の音や小鳥の囀りははっきりと、より大きく響き出す。


 女子学生の死体と聞いて真っ先に浮かんだのは、瑠奈に聞かされた三十年前の今日に溺死したという女子生徒だった。

 奇譚総集の生みの親である少女が不可解な死を遂げたのと同じ沢で、また女子学生の死体?

 まさか、三十年前と同じことがまた起きたというのか?


 頭の圧迫感と息苦しさを感じ、無意識に息を止めていたことに気がつく。


「で……でも、そんな事件あったらニュースになるはずだろ!? そんな話聞いてない!」

「この件には箝口令が敷かれています。七年前の事件でかなり好奇の目を集めてしまったので、七家と警察で話し合った結果、十六夜町への風評被害を考えて祭りが終わるまではマスコミ公表を控えるということになりました。貴方も知った以上はどうかご内密に」


 オレは今聞いた話を理解するのに必死で、頷くだけで精一杯だった。

 三度、祭りの晩に人が死んだ。三十年前や七年前のことがある以上、七家も慎重に対応せざるを得ない。

 だから箝口令が敷かれた……そういえば、今日自習になったのは緊急の職員会議が開かれることになったからだ。

 何の会議かは知らないが、学園の生徒が死んだから急遽会議を開かなくてはいけなくなったと考えれば一応筋は通る。


 それから、今朝学校に来る途中にも報せはあった。

 普段は車なんか通らない道でパトカーとすれ違った。確かあの山道は沢にも通じていたはず。

 冷静に考えれば納得できることばかりだった。だからオレは無防備に続きを促したのだ。


「死んだのは誰だよ? また小学生か?」

「いいえ、高等部の生徒よ。……あなたもよく知っている」

「オレがよく知っている生徒……?」


 オレの交友関係は狭い。高等部の生徒だと幼馴染のエミルにかなるん、この前知り合った夜桜とカノン先輩、それから瑠奈と瑠奈のグループの女子と三浦。

 その中の女子というと……


『あれ? 瑠奈ちゃん今日は休み?』

『さぁ? 昨日寒いのに薄着ではしゃいでたから風邪でも引いたんじゃなーい?』

『でも無断欠席なんて珍しいよねー、黄月さん皆勤賞狙ってたのに』


 ……待てよ。

 ちょっと待ってくれ、まさか。


 そんなオレの願いも虚しく、かなるんは残酷なまでに冷静に事実を述べる。


「亡くなったのは高等部二年二組、黄月瑠奈。鑑識によると死亡推定時刻は午前零時頃から二時頃。ま、公表してないだけで本当はもっと絞り込めてるでしょうけど」

「な……っ!?」


 瑠奈が、死んだ……?

 急に目の前の光景が遠くなり、足元の感覚が不安定になる。

 プールでふざけてビート板でサーフィンの真似事をした時のように、足元がグニャグニャと歪んでバランスが保てなくなる。

 ふらふらとよろけた時、手に階段の手すりが触れる。

 咄嗟の判断で手すりを掴んで倒れることは免れたものの、平衡感覚はまだ戻ってこない。

 目の前のかなるんの姿も二重三重にブレて見える。


「キンタロー!? ちょっと、大丈夫!?」

「……っ、別に問題ない」


 完全な強がりだった。

 本当は立っているだけでも辛いが、こいつの前では弱い自分を見せたくなかったので気力だけで立ち続ける。

 かなるんは哀しそうな顔でこちらを見ていたが、それ以上は何も聞かないでくれた。……それでいい。


「……瑠奈が死んだってどういうことだよ。溺れたのか?」

「いいえ。直接の死因は鈍器で側頭部を殴打されての撲殺。即死だったようだけど、生活反応のある傷が複数あったそうよ」

「……つまり……えっと……」


 瑠奈の直接の死因は鈍器で頭を殴られたこと。

 でも、他にも生活反応のある傷があった? 生活反応があるということはつまり、生きている間に負った怪我だから、えっと……


「分からない? これはただの事故でも自殺なんかでもない。立派な殺人事件なのよ!」


 いつまでも考え込んでいるオレに痺れを切らしたのか、荒々しい口調でかなるんは叫んだ。

 大声に驚いた小鳥達が羽ばたく音が聞こえる。


 警察と七家が動いている時点で何となく察してはいたが、いざ言葉として突きつけられると心臓が凍りついたように霜柱が胸から全身に広がり、呼吸ができなくなる。

 瑠奈は死んだ。

 それも、誰かに殺された。

 ……誰かって誰に? 何故殺される必要が? タイミングからしても、これは……


「まさか……奇譚ゲーム?」


 脳裏に緋色月がちらつく。

 あの夜、窓から覗いていた月はとても大きくて、禍々しくて、それをバックに開幕宣言をするあいつは更に恐ろしくて。

 あの時も、今も、オレはただ呆然と立ち竦む他なかった。


 ――十六夜の晩が終わるまでに奇譚総集を全て集めないと、死ぬ。


『十六夜の晩というのは恐らく十六夜祭りの隠喩じゃないかな。となると……まずいね、もうあまり猶予がない』


 ……あれ?


 惑乱の渦に陥っていた頭がすっと冷えてゆく。

 鎌首を擡げるのは、今感じていた恐怖とは全く別の恐怖だった。


「奇譚ゲームが関係してるかどうか分からないわ。一つだけ確かなのは、瑠奈は殺されたということ。だから――」

「なぁ、十六夜の晩っていうのは十六夜祭りが終わるまでってエミルは言ってたよな? 十六夜祭りは今日もある。ゲームマスターが行動を起こすとしたら今日の夜以降じゃないのか?」


 まだ何か言いかけていたかなるんの言葉を遮って尋ねると、かなるんは眉をひそめて不愉快そうな顔をしながらも一応答えてくれた。


「し……知らないわよ。十六夜の晩イコール十六夜祭りが終わるまでっていうのはエミルの仮定でしょう? あたし達が気付いてないだけで、別の意味が込められていたかもしれないわ」

「……別の意味か。うん、恐ろしいな」


 滑稽なのは、二人が危惧している方向が全く異なる所だ。

 単にエミルの仮定が外れていたというだけならまだ良い。最悪なのは、合っていた場合だ。


 この仮説をかなるんに話すには、もう少し確証を得てからの方が良いな。今は混乱させるだけだ。

 万が一ということもあるし、エミル……ついでに夜桜にも伝えておこう。


「とにかくね、瑠奈が殺された以上あたし達も危な――……」

「へぇ、面白そうな話してるじゃない。僕も混ぜてよ」


 軽薄そうな男の声が廊下に響き、かなるんが大きく肩を揺らす。

 声が聞こえたのは下からだったので視線を落とすと、スーツを着た若い男が踊り場からオレ達を見上げていた。

 直後かなるんがオレの前に立ちはだかったので男の姿は見えなくなったが、気配は鮮明に残り続けている。


「これはこれは、薄本さんの所の……えぇと、どなただったかしら?」

「どーもこんにちは、薄本さんの部下一号こと咲坂純です。あ、純ちゃんって呼んでくれてもいいよ?」

「咲坂さん、こんな所までやってきて盗み聞きとは感心しませんね。今とても重要な話の最中なので、用がないのならお帰りください」


 かなるんは表情を一切緩めないまま咲坂と名乗った男の軽口を無視すると、硬い声で告げた。

 だが咲坂という男も軽く肩を竦めたのみでへこたれる様子がない。

 何者だろう、この男。平日の昼間に堂々と学校に入れる大人は限られてるし、かなるんが異様に警戒しているし。オレだけが置いてけぼりをくらっている。


「おや、これは失礼。聞くつもりはなかったんだよ? 教室に行こうとしたら君達がそこで口論してるのが偶々聞こえちゃっただけ。それより、黄月瑠奈さんのお話をしてたなら丁度いいね」

「……あんた、なんで瑠奈の名前を知ってるんですか」


 瑠奈の名前が聞こえ、反応してしまう。

 その途端かなるんが振り返り、この馬鹿! とでも言いたげな顔で睨みつけてくる。


 オレを守るように立ちはだかるかなるんを押し退け、咲坂と対峙する。

 咲坂は遠目で見た時よりも若く、軟派そうな茶髪頭の男だった。

 スーツを着ているせいで就活中の大学生にも見えるけど、茶髪の就活生というのも妙か。

 けれど、人の良さそうな笑みとは裏腹にオレを見上げる瞳は獲物を前に舌舐めずりする肉食獣のように獰猛で、足が竦みそうになる。

 虚勢でもいい。かなるん以上に弱みを見せてはいけない相手だと本能的に悟った。


「……おや、ひょっとして君が緋咲キンタロー君かな? あの緋咲家のお坊ちゃんの――」

「緋咲キンタローはオレですけど。何か?」


 分かりきったことをわざわざ聞いてくる咲坂に腹が立ったので、言葉を遮って訊き返してやる。


「ふむ、つれないなぁ。まぁ良いや、ちょっとお話いいかな? 緋咲キンタロー君」


 咲坂は胸ポケットから黒い手帳を取り出し、オレの目の前に広げる。

 ……ああ、そういうことか。


「警察がオレに何の用ですか」

「ここじゃ何だから、場所を移して話そうか」


 咲坂は顎で階下を示す。この下にあるのは昇降口と職員室、それからカフェテリアだった。


「……かなるん、お前は戻ってろ」

「でも……」

「いいから。オレは問題ない」


 不安そうなかなるんの頭を乱暴に掻き回してから、オレは階段を降りた。




     *   *   *


 翠ヶ崎学園のカフェテリアは生徒全員が入っても余裕があるようにかなり広く作られている。

 昼休みには多くの生徒で賑わうが、今の時間となるとオレ達以外に利用客はいない。

 水を運んできた店員がちらちらと好奇の目でこちらを見てきたが、無視して水を一気に飲み干した。


「僕の奢りだから好きなの頼んでいいよ。パフェにする?」

「コーヒーで」


 メニュー表には食欲をそそる食事の写真が載っているが、全て無視してコーヒーを頼んだ。こいつに借りを作るのは何となく嫌だったからだ。

 それにオレ達は呑気に食事をしに来たわけではない。

 タイミングから考えて瑠奈の件の事情聴取だろうが、何故オレなのか?

 もっと瑠奈と仲が良い奴なんていくらでもいるだろうに。

 ……いや、考えられる理由は一つしかないか。


「うーん、じゃあ僕はクリームソーダにしようかな。すみませーん、クリームソーダとコーヒーください」


 咲坂は店員を呼び止めると、呑気に注文を言いつけた。

 見慣れない男の姿に店員は思いっきり不審な顔をしているが、咲坂は全く気に留める様子がない。

 無視しているのか、本気で空気が読めていないのかのか。


「警察がオレに何の用ですか?」


 店員が去ったことを確認してから再度尋ね返す。


「勿論、亡くなった黄月さんについてです。君達は黄月さんと仲が良かったそうだね? 放課後は旧校舎で密会してたとか」

「仲が良いと言われればそうかもしれませんけど、オレ達よりも瑠奈と仲が良い人なんていくらでもいますよ。あまり有益な情報はお話できないかと」


 つい素っ気ない口振りになってしまう。

 警察が瑠奈を殺したのは非科学的な呪いなどではなく人間だと証明してくれるなら喜んで情報提供するが、オレにはどうにもこの軽薄そうな男が油断ならないように感じて仕方がない。


「いやいや、そんなことないよ。君の証言が一番大事だからね」

「オレが?」

「そう。君、昨夜の十六夜祭りで彼女と会ったでしょ?」


 へらへらと笑ったままの咲坂の目が僅かに細くなる。

 ……ああ、そういうことか。

 オレの直感はあながち間違いでもなかったらしい。


「……友人二人と一緒に屋台を回りました。瑠奈はすぐに友達に呼ばれて行っちゃいましたけど」

「違う違う。その後だよ」

「その後?」


 咲坂はポケットから手帳を取り出すと、ぱらぱらと捲り、とあるページでぴたりと止まる。


「と、あったあった。展望台で花火見てたでしょ? 展望台に来てたカップルが君達のこと憶えてたんだよ」


 そこまで知っているのか。

 不思議と驚きはなかった。

 やっぱりな、というある種の納得と諦観が降りかかるだけ。

 オレが瑠奈に会ったのは十一時半から午前零時過ぎ、瑠奈の死亡推定時刻と被る。

 まさか、オレが疑われているのか?


 冗談じゃない。

 確かに何度か腹が立って殺してやろうと思ったことがあるし、殺すと叫んだこともあるが、それは一種のスラング。

 小学生が喧嘩をして暴言を吐き合うのと全く同じノリだ。

 曲がりなりにもオレと瑠奈は友達だ。

 本気で友達の死を願ったことなんてあるわけがない!


 感情のままに目の前の刑事の胸ぐらを掴んで怒鳴りつけてやりたくなる衝動を理性で抑えつけ、どこまで正直に話すべきか頭の中で整理する。


 落ち着け、冷静でなければ視えるものも視えない。

 第一オレは後ろめたいことは何もしていないのだから、堂々としていればいいじゃないか。


 まず、あの子供や神社での出来事は絶対に話すべきではないだろう。

 錯乱したと思われて話を聞いてもらえなくなるのがオチだ。


 昨夜瑠奈と会っていた。

 これは事実だから、誤魔化すとかえって疑われる。

 冤罪で捕まるなんて冗談じゃない、ちゃんと調べればオレが瑠奈を殺す理由なんて何もないことはすぐに分かるはずだ。


「ええ、瑠奈と会ったので軽く雑談しました。ほんの数分間ですけど」

「ふむふむ。で、君はどうして一人で展望台なんかに行ったの? お友達を放置してさ」

「迷っちゃって、山を駆けずり回ってたら瑠奈と偶々会ったんです。まさかオレが殺したって言いたいんですか?」


 巫女服の子供や神社の着物の女のことは省いたが、嘘はついていないので問題ないと自分に言い聞かせる。


「そうは言ってないよ。ただ、彼女と最後に会っていた君に話を訊きたいだけだよ。お友達の仇を取ると思って協力してくれないかな?」


 反吐が出そうなくらい巧い言い方だ。

 決してオレを疑っているとは口にせず、飽くまでも「警察への協力」という建前で情報を引き出そうとしている。

 何より、咲坂は瑠奈の為だと言えばこちらが断れないということも全て分かった上でそう言っているような気がしてならない。

 その狡猾なやり口に少しだけ鼻白んだ。


「……一応オレは友達を亡くしたばかりの未成年男子なんですけど、警察は気遣ってくれないんですね」

「まぁまぁ、分かる範囲で良いんだ。黄月さんの様子がおかしかったとか、誰かと会う予定だとか言ってなかった?」


 せめてもの意地で吐き捨てるが、咲坂は歯牙にもかけていない様子で宥めてくる。

 いかん、少し感情的になりすぎた。今は冷静に、細心の注意を払ってこの場を切り抜けないと……


「別にいつも通りでしたよ。瑠奈の方が先に帰ると言って、その後寮に帰ったものと思ってました」

「それは何時頃?」

「花火が終わる少し前だったから、多分零時頃かと」


 咲坂はふむふむと言いながら手帳にメモしていたが、突然ぴたりとペンを止めた。


「それ、証明できる?」

「……どういう意味ですか?」

「黄月さんの死亡推定時刻は君と花火を見た午前零時から、遅くても二時の間だ。同時刻、君は行方不明になっていて、町内会の人が探し回っていた記録が残ってる。……その間、君は何をしていたのかな?」


 どうやらオレが数時間失踪してたことも知られているようだ。下手に誤魔化さなくてよかった。


 昨夜、瑠奈と別れた直後まで記憶を巻き戻す。

 瑠奈の後ろ姿が消えた後も暫く動けずにいた。

 彼女の遺したヒントを読み解こうとして、結局何も分からなかった。

 肌寒さと静けさに耐え切れなくなったから帰宅して、人形を押し入れの奥にしまい直してから眠った。

 それから夢を見た気もするが、かなるんやエミルの訪問という賑やかなイベントがあったせいで掻き消され、あまり思い出せない。


「……瑠奈が行ってから暫く展望台でぼーっとしてました。家に帰ったのは一時か二時くらいだったと思います。その後はすぐに寝ましたけど、家族は眠っていたのでそれを証明できる人間はいませんね」

「あはは、仮に起きてたとしても家族の証言は証拠にはならないけどね」


 咲坂は薄笑いを浮かべたままだが、訝しんでいるのが伝わってくる。

 だって自分でもオレの動向は不自然極まりない思うのだから、刑事である咲坂はそれ以上に疑っていることだろう。


 焦れったい。

 何も悪いことはしていないのに、それを証明するのがこんなに難しいなんて……やっぱりかなるんにも来てもらうべきだったかな。

 あいつは事情聴取に同席したがっていたが、オレが追い払ったのだ。

 あの時はついムキになってしまったが、そもそも口下手なオレがプロの刑事相手に舌戦を繰り広げるなんて無茶なのだ。

 今からでもかなるんを呼び戻そうか、と考えかけた時。

 咲坂の肩越しにこちらに手を振っている人影を見つけた。


 少し離れたテーブル席に腰を下ろしている女子生徒。

 赤いラインの入った制服からして、二年生だ。

 あまり特徴がない地味めの女子生徒だが、瑠奈がいつも一緒にいる女子に似ているような。


 地味めの女子生徒は片手にスマホを持ち、それをちょいちょいと指さしている。

 スマホがどうかしたのだろうかと首を傾げた時、女子生徒の背中からぴょこんとケモミミが飛び出した。

 あれは……エミルか? どうしてあんな所に隠れてるんだ?


「お待たせしました、コーヒーとクリームソーダです」

「お、きたきた。ここのクリームソーダ美味しいんだよね〜」


 タイミング良く店員が飲み物を運んできた。

 咲坂がオレから注意を外している隙にこっそりテーブルの下で携帯の電源を入れる。

 通知画面にはこの数分の間に送られたメッセージが沢山表示されていて、送り主は全てエミルだった。


『ああああああキンタロー!』

『早く気付いて!』

『\(^o^)/』

『駄目だよキンタロー、落ち着いて! そんな喧嘩腰じゃ駄目!』

『今からでも一時頃、帰宅途中に僕と会ったってことにして。後は僕が上手く誤魔化すから!』

『はやk¥&%#°々』


 うん、少し落ち着け。


 しかしアリバイ証言を買って出てくれるとは、願ってもない提案だ。

 かなるんがエミルを呼んでくれたのだろうか? 警察に嘘を吐くことに多少の抵抗はあるが、ここはエミルを信じて有難く乗らせてもらおう。

 スマホの電源を落とそうとした時、バイブ音と共に新たなメッセージが表示される。


『話が終わったら唯ちゃんに合図して。しゃがんでるの辛くなってきた』


 顔を上げると、エミルが女子生徒の後ろで小刻みにぷるぷる震えているのが見えた。

 ……あいつ、本当に格好良く決めるの苦手だな……


 店員が去ったのを横目で確認しながらスマホをポケットにねじ込み、何事もなかったようにコーヒーにガムシロップと角砂糖を投入してかき混ぜる。


「……あ、アリバイになるかは分かりませんが一つ思い出しました。昨日の帰り、エミルに会いましたよ」

「へぇ、それ本当?」


 今思い出したとばかりに白々しく切り出すと、案の定咲坂は疑ってかかってきた。


「ええ。オレを探して町中走り回ってたそうで、かなり叱られました。疑うならエミル本人に確認を取ってもらっても構いませんよ」

 

 あまり自信満々だとアリバイを偽装したことを疑われてしまうので、そこで言葉を切ってコーヒーを飲む。

 後はエミルが上手く話を合わせてくれることを祈ろう。

 咲坂の目を盗んで女子生徒……唯に目配せすると、背後に隠れていたエミルが立ち上がり、こちらに向かって歩いてくる。

 まるで今来たと言わんばかりに悠然とした足取りだが、さっきぷるぷるしてたのを見ていたのを見てしまったオレは笑いを堪えるのが大変だった。


「咲坂さん、お話は終わりましたか?」


 エミルは堂々と咲坂に声を掛ける。

 咲坂は振り返ると、何食わぬ顔で会釈した。


「おや白澤君、こんにちは。まだ授業時間だけど、こんな所に居ていいの?」

「ご心配なく、本日は家庭の事情により早退しましたので。ですが、キンタローはこの後も授業があります。これ以上彼を取り調べるおつもりなら令状をお持ちください」


 エミルは取り付く島もないくらいすらすらと拒絶の言葉を並べ立てる。

 それは忠告というよりは警告に近い。

 もし咲坂がこの警告を無視したら、十六夜署に政治的な圧力をかけることも辞さないとでも言いたげな無表情で咲坂を見据えている。

 エミルから発せられる無言の圧力に咲坂は軽く肩を竦めると、大人しく席を立った。


「あっはっは、これは参ったなぁ。それじゃあ邪魔者はさっさと退散しますかね。……あ、そうそう。キンタロー君」

「はい?」

「僕も昨日警備で祭りの会場にいたけど、必死の形相で走ってる君を見かけたよ」


 かちゃん、と手の中のカップが音を立てた。


「それじゃキンタロー君、またね」


 咲坂は意味深に微笑むと、領収書を持って席を立った。

 その後ろ姿が完全に昇降口に消えるのを待ってから、オレはテーブルに突っ伏した。


「……またねってことはまた来るつもりかよ、あの刑事……」

「全くだよ、十六夜署には厳重に抗議しておかないとね」


 エミルは憮然とした顔のままオレの隣に腰を下ろす。


「エミル、さっきはサンキューな」

「当たり前のことをしただけだよ。今回の件は慎重に対応するよう要請したのに、キンタローを取り調べるなんて……かなるんが電話してきてくれて助かったよ」


 やはりかなるんか。あまりにもタイミングが良すぎたしな。


「そういえばかなるんは?」

「キンタローに追い出されたって拗ねてたよ。後でちゃんと謝ってね? じゃないと僕に延々と愚痴ってくるから」

「む……」


 あいつ、余計なことまで……オレがかなるんを追い出したのは昨夜のことを深く突っ込まれたくなかったからなのに。

 でもかなるんがエミルを呼んでくれたから助かったわけだし、感謝すべきか怒るべきか非常に悩ましい所だ……


「……あ、そろそろ休み時間終わりか。オレも戻るかな」

「強引に話逸らしたね……その前に僕からも聞いていい?」

「何だよ?」


 引き留められて一度浮かしかけた腰を再び下ろすと、エミルはまた真面目な表情を作る。


「昨日瑠奈ちゃんと何話してたの? 一緒にいたとか初耳なんだけど」

「ん? 知ってたから助け舟を出してくれたんじゃなかったのか?」

「まさか。僕もかなるんも今朝連絡がつくまでキンタローがどこで何してたか一切知らなかったし」


 そういえば、父さんがオレの帰宅に気が付いたのは朝だったな。

 少し迷ったが、エミルなら大丈夫だろうと思って山で迷って神社に辿り着いたことまでを語り聞かせた。


「うーん、狐があったってことは多分そこ桜孤神社じゃないかな。あそこには彼岸花も咲いてるし」

「桜孤神社……」


 沢での変死事件の次は桜孤様か。

 どちらも瑠奈が生前語り聞かせてくれた話だ。

 単にオレを怖がらせようとしたんじゃなくて、ちゃんと意味があったってことか……?


「でもあそこは立ち入り禁止だから、これからは勝手に入らない方がいいよ。迂闊に彼岸花摘んで行こうとするとすっごい怒られるから」

「実際に怒られてきたような口振りだが」

「……小さい頃の話だから。今はやらないよ」


 少し拗ねたようなエミルが可笑しくて、わしゃわしゃと頭を撫でてやる。

 やはりエミルは永遠の癒しだ。

 ほっこりしながら撫で回していると、途中でエミルがけすぐったそうに頭を引っ込めて逃げてしまった。

 ああ、もう少し撫でたかった……


 冗談はさておき、そろそろ二時限目が始まる時間だ。

 あまり長居をしては店員のおばさま方に苦言を呈され兼ねない。


「……さて、そろそろ予鈴鳴るから今度こそ戻るぞ。エミルも気をつけて帰れよ」

「大丈夫だよ。すぐそこだもん」


 名残惜しいがエミルと別れ、真っ直ぐカフェテリアを出る。

 お代は既に咲坂が払っていたので問題ない。

 でもあの空気の教室に戻る気にはなれなくて、何となく屋上を目指していた。


「……そういえば、奇譚総集はどうなったんだろ」


 瑠奈が最期まで追っていて、終ぞ解決できなかった事件。

 そして噂は現実であることを告げるように現れた本と、ゲームマスター。

 あの奇譚総集はもう警察に押収されてしまっているのだろうか。

 あそこに書かれていた歌詞をスマホにメモしておいたことを思い出し、メモを起動する。


「お、あった……」


 やはり不思議な既視感を覚える。

 遠い昔に聴いたことがあるような気もするが、気のせいかもしれない。

 取り敢えず、オレの手元にある奇譚総集のヒントはこれだけだ。


「……灯籠に浮かび上がる逢魔ヶ刻、か。灯籠といったら、やっぱり月光流したよな」


 月光流し。

 十六夜祭りの二日目に行なわれるイベントで、死者を弔う為に灯籠を流す……要するに灯籠流しだ。

 月光流しというのはこの地域独特の呼び方で、その灯籠を流す川こそが、瑠奈の遺体が発見された川なのである。

 ……瑠奈のことがあるし、やっぱり今年は中止になってしまうんだろうか。


「……おっと、センチになってる場合じゃなかったな。解読に戻ろう。えーと、赤い蜜滴らせそっと近づいた……幻想はいつも甘き夢魅せ溺れてゆく……?」


 この辺りは比喩的な表現が多くてよく分からん。

 一行目は恐らく川のことを指しているとして、赤い蜜だの幻想だのはどういう意味だろうか?

 取り敢えず続けて行こう。


「ほら貴方にも聴こえる、狐の足音。彼岸(あちら)此岸(こちら)、彼岸の花よ。願えども喚けども届きはしない。狐と鬼がこちらを向けば、長い夜は終ぞ明けない……」


 狐っていうのは十中八九桜孤様関連だとして、その次の彼岸の花っていうのは桜孤神社に咲いてた彼岸花のことか?

 狐と鬼がこちらを向けば、のくだりも意味不明だ。


 ……駄目だ、考えれば考えるほど錯乱しそうになる。

 この歌詞が何らかの暗号になっていることは間違いないだろうが、さっぱり繋がりが見えない。

 やはり雑誌のクロスワードで苦戦するレベルに謎かけやパズルの類が苦手なオレが挑むのは無謀なのだろうか。


 その後もあれこれ考えを巡らせるが、ぱっとした解釈は浮かばない。

 一人ブツブツと呟きながら階段を登るオレの姿はさぞかし変質者だろうな。

 長い階段を登り終え、錆びついた扉を押し開ける。

 梯子を伝って塔矢に登るが、夜桜の姿はない。


「流石に二日連続ってことはないか……」


 ジャケットのポケットを漁ると、昨日貰った式神が出てきた。

 丸一日入れっ放しだったせいか所々シワになっていたり、一枚は真ん中から真っ二つという不吉極まりない破れ方をしているが、まぁ大丈夫だろう。多分。


 誰もいないのを良いことに大の字に寝転がると、真っ青な空が視界いっぱいに広がる。

 この景色も風も全部オレの独り占めだ。


 初めの内は雲の形であれこれ連想して遊んでいたが、飽きてくると睡魔が押し寄せてくる。

 今日も昨日も気が休められず、中々寝付けなかったから、肉体的にも精神的に大分疲れが溜まっていた。


「よし、どうせサボるんだし次の時間まで仮眠しよう……」


 呟き終わるか終わらないかくらいで、オレの意識は急速に遠のいていった。

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