4.5話
凛子は純介が映ったテレビを消した。
座っている椅子から倒れてしまいそうな眩暈に襲われる。机の上で頭を抱え、混乱した
頭の中を整理する。
数分もすると眩暈も収まり、落ち着きを取り戻す。それと同時に今度は苛立ちがこみ上げてくる。
「あのバカッ! いったい何をしてるのよッ!」
怒りの矛先は友人の近藤純介だ。彼はテレビという公共の電波を使ってとんでもないことを言い出したのだ。
凛子はそれに苛立っている。
机の上に置いた手紙が目に入った。送り主は純介だ。
一度読んではいるが、その時はまったく理解できなかった。そしてあの映像を見た今はもっと理解できなくなっていた。
手紙に手を伸ばし、もう一度読む。
『もうラピスに関わるな。後は俺がやる』
たった二文だけの言葉。
「俺がやるってなんなのッ!? あんなことしていったい何がどうなるのよッ!!」
怒りは頂点に達し、持っていた手紙を二つに破り捨てた。
少しは気が晴れたのか、大きく息をはき深く椅子に腰かける。
純介が何を考えてるのかわからないが、誰かが止めないといけない。
高校の時から滅茶苦茶なやつだった。純介が自発的にことを起こすと必ずトラブルになった。それを止めていたのは彼だけだ。
今でも凛子はあの天才を止められるのは彼だけだと思っている。
だが彼は未だに眠ったままいつ目覚めるかわからない。
ならどうする?
「私がやるしかない」
凛子は机に飾られた写真立てを見つめた。
自分と、純介と、そして彼が映った写真。楽しかった高校時代の写真だ。
「ごめん、優人。純介を止めるまで少し待っててね」
凛子は静かに写真に語り掛けた。