理由
『本当のところ』、つまり真実というのは誰にも分からない。
死人に口なしとはよくいったもので、改めていろんな人の意見を聞いてつくづく思うのは、結局残った人、それぞれの視点でしか、死者のことは分からない、ということだ。
しかし、少なくとも私の目に映った彼女は、こういうことを望んでいたように思う。
弔い小説、なんて表現が正しいなんて、全く思わないし、流行りの不謹慎厨からすれば、全力で叩きに来る対象だろう。
(もしかしたら、それほど不謹慎厨じゃなくても、叩きに来るぐらいの話かもしれない)
けれどそう、繰り返すが、私の目に映った彼女は、こういうことを望んでいたと思うのだ。
それこそ自分が、物語の主人公になる、ということを。
ただ、残念ながら、彼女は主人公ではない。
物語の重要な人物ではあるが、結局は生き残ったものが物語を綴るのだから。
そして冷たいようだが、私は既に死んでしまった人よりも、今生きている人、生きようとしている人を、大切にしたいと思う。
だからこそ、一度自分たちを見つめ直すためにも、何が起こったのかを順当に明らかにするためにも、出来得る限り、残しておきたい。
彼女と、彼女に関わった、多くの人たちのことを。