生徒会役員な私と彼らの転校生ちゃん迎撃作戦。
初投稿です。拙い部分は多々あると思いますが、多目に見てやってください。
乙女ゲーものを書いているうちに、いつのまにやらこんなことに…。主人公は間違っても窓から脱出するような子……でした。
私は今、輝かしい容姿の生徒会役員と、最近越してきた麗しの転校生ちゃんに道を塞がれていた。転校生ちゃんが口を歪めて笑う。おい、それは悪役の笑い方ではなかろうか。私は精一杯の悔しそうな顔をして吐き捨てるように話す。さあ、私は女優よ!
「悠……春翔くん達に近寄らないでよ!ちょっと前までは仲良くやっていけてたのに。貴女のせいよ!」
転校生ちゃんはあたかも傷ついたかのような顔で黙った。
後ろでは生徒会役員達が、転校生ちゃんを心配している……と思わせつつ、私に口パクで目薬!目薬!と伝えてくる。若干一人が棒読み!大根役者、と失礼なことを言ったやつを一睨みで黙らせ、私は急いで後ろを向いて目薬を点して、振り向く。
転校生ちゃんは、下を向いて泣いていると見せかけて笑いをこらえるのに忙しかったらしく、気づかなかったようだ。目が節穴で万歳である。生徒会役員があきれた顔をして、お前は早く集合場所に行けと合図してくるので、わざと転校生ちゃんにぶつかったあと走った。
集合場所である生徒会室に着くと、先客がいた。
「おかえりー。相変わらずの大根役者っぷりだね。これでばれないのだから転校生ちゃんの目は節穴に違いない。」
学園内の監視カメラを見ながら、そうゆるゆると話すのは、とてもじゃないが学校を運営しているとは思えない若い男だった。色素が薄めな茶髪に優しげな顔立ちの、都筑大和。どこから見てもイケメンだ。しかしながら今は対転校生ちゃん用に聖也、という名前になっている。
ここで生徒会役員も紹介しておくべきだろう。
明るい茶髪に王子様のような外見の工藤悠里。さっきの春翔くんだ。
黒髪で気の強そうな幾島颯天。今は赤髪で秋とか言う名前だった。
長めの黒髪を下の方でひとつに括った、少し冷たそうにも見える桐谷透。今回は真っ青な髪に、琉依とか名乗っていたはずだ。
金に染めている髪を無造作に下ろしている、ちょっと不良っぽいような感じを覚える竜胆由哉。髪の色はそのままに勇人だったか。
そしていつの間にか机に突っ伏して寝ている、マイペースな黒髪の和風美人の纏涼。紫に髪を染めて榴斗と名乗っていた。
そして、私こと水沢玲である。今回は英梨という名前で自己紹介をした。
理事長の言葉に胸をえぐられた私は泣いた振りをして自分が大根役者ではないことを納得させようかと思ったが、その前に役目を終えた生徒会役員がやって来たので諦めてやることにした。
悠里が口を開いた。
「また僕のことを悠里って言いかけてたでしょ。しかもあのやる気のなさには絶句だね。だいたい……」
思った以上に小言が続きそうなので、私はおとなしく現実逃避を始めた。
私は1カ月前を思い出していた。
「またどうせ転校生が来るんだろ?」
由哉が心底めんどくさそうに言う。それに対して素敵な笑顔を浮かべた理事長は、
「うん、だからいつものように準備お願い。あと、これが今回の設定だから!」
といいつつ私たちの前に分厚い設定資料を人数分置いた。もうここまで来れば言わずもがなだが、私たちは対転校生ちゃん用にガッツリと設定をねって、学園全体で迎え撃っているのだ。
ボーッとしていると、颯天と悠里が呻いた。どうしたのかと視線問うと颯天が、
「お前まだ読んでなかったのかよ。早く読めよ、167ページだ。」
と言って一冊押し付けてきたので、受け取って礼を言い手早くめくる。
「うわあ……これは。」
「だろ?また赤髪かよ。こんな髪色染めでもしないといるわけないのに、校則があるから染めてないって勘違いされてるし。染めてないのに綺麗って言われて笑いと怒りを抑えるこっちの身にもなれよ!」
そこには髪色と目の設定があったのだが、いつも通り目がチカチカする色だ。理事長いわくこれが流行りらしい。私は基本的にライバルかサポートなので染めなくても大丈夫だ。
「じゃ、各自で用意しといてー。あ、転入は3日後だから忘れずにね!」
そんな感じで私が現実逃避に耽っていると、聞いていないと気づいたのか悠里が飛びかかってきた。
「っ!?」
私はその攻撃をしゃがんでかわすと、悠里の下から突き上げるようなけりを放った。悠里はそれを間一髪でいなして床へと着地する。
「あ、あああ危なかったぁ……!ちょっと今のは女子としてどうなの?」
「え?今更すぎるでしょ。アクションを取り入れた設定の時にさんざん訓練したよね?」
すると部屋にいた全員がもはやなにも言うまい、とばかりに首を振った。解せぬ。
そして先程私は転校生ちゃんと対峙していたわけだが、今回の子は自分の容姿を鼻にかけたやつだった。あの素晴らしい思想にはついていけないが、話はあわせなくてはならない。予想してはいたが少し痛いものがある。是非とも青春の黒歴史として反省してほしいものだ。
どうせ今回も追い出すまでの辛抱だ。あのキラキラしい彼らも全力で協力してくれている。
そうしているうちに転校生ちゃんが迫ってくる予感を感じた私は、窓の枠に足をかけた。
どうしたどうした、と焦る生徒会役員に私はばっちーんと素晴らしいウインクを投げつけると、
「ドキドキ☆ちゃんと着地できるかな?~貴女の視界の外への脱出~」
と叫んで飛び降りた。ちなみに生徒会室は3階である。
全員が唖然として見送るなかで、転校生ちゃんが彼らの後ろに現れたのを見た私は早く転校生ちゃんが転校することを願いつつ、追い出す方法を考え始めたのだった。
大分文字がつまっていたにも関わらずここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。