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変人と悪魔  作者: 仁崎 真昼
赤:変人と悪魔
13/20

13 決意

 薄暗い路地裏で座り込んでいるまつりはぼんやりと空を仰ぐ。空には雲がかかっていて月の明かりはなく、町は深い闇に包まれていた。

 現在の時刻が何時かなど、まつりにはさっぱりわからない。知ろうとしなかった。何故ならもう既に行うことは決めていて、後はそれを実行するだけなのだから。当然、そのための決別も済ませてある。

 まつりはのろのろと立ち上がって、ビルの小汚ない壁にもたれる。

 何かに耐えるように目をギュッと瞑るまつり。少しの間そうしていると、自分が友達を持ってからの記憶が、自分が人となってからの記憶が、自分が恭平と出会ってからの記憶が、次々と脳裏に浮かんできた。その記憶は冬空の太陽のように輝いていて、まつりはそれを再び手に入れたくなる。再び経験したくなる。そして、そう思った途端、決意が揺るぎそうになってしまった。

 抗えばいいのではないかと、思ってしまった。

(は……今さら何を考えているんだか)

 しかし、奥歯を噛み締めそれを振り払う。まつりは自分にそんな弱さがあると認めるわけにはいかなかったからだ。だからこそ、まつりは路地を出て歩き始めた。

 へたり込みそうになる足を引き摺りながら、まつりは歩く。体の調子は高熱を出したかのようで、端的に言い表すならば最悪だ。左腕からの出血は止まっているが、少なくはない血を長い時間流し続けたせいで血が足りず、まるで酔っているかのように視界が揺れる。

 体はだるく力が入らない。実際に熱も出ているのかもしれない。まつりは断続的に襲いかかってくる吐き気を堪えながら、一歩一歩足を進めていった。

 浅く速い吐息が、まつりの口から漏れる。

 背を丸めた死神のように、坂をゆっくりと上って行く。

 足元を見つめる。

 体を揺らす。

 大きく息を吐く。

 足を引き摺る。

 鼓動。

 足音。

「――あ」

 まつりにとって気が遠くなるような長い時間。その永劫とも思えるような時間は、まつりがひとつの建物の前で立ち止まったことにより終わる。

 まつりの正面にはは古びた鉄筋コンクリートの建物があった。それは三階建ての校舎で、過疎の影響で生徒数が減り廃校になったものだ。

 まつりは建物の前でひとつため息を吐くと、その扉もない入り口を潜り抜けて行った。

 校舎の中は薄暗い。すぐ目と鼻の先に迫る闇は、まるで全てを呑み込もうとでもしているようだった。

 ツンと鼻を突く独特な臭いを嗅ぎながら、まつりは階段を上って行く。床のタイルは所々剥がれ、手摺は既にとれて無くなっていることから、校舎の古さがよくわかる。人がいなくなって幾年も経つと、自然とこうなってしまうであろうことが窺えた。

 階段を上りきり、三階へ辿り着く。三階の天井は少し低くなっていて、まつりはほんの少し息苦しさを感じる。いや、その息苦しさは建物のせいでは無いのかもしれない。しかし、まつりは一瞬足を止め、息を吐いた。

「ふぅ」

 その小さなため息には、疲労が色濃く籠められている。

 まつりは自分を奮い立たせるように頭を振ると、廊下を進んで行く。そして、廊下の突き当たりにある、ひとつの教室に入って行った。

 突き当たりだからかひとつしか入り口の無い教室は、やはり古びていて荒れていた。端に固めてある机や椅子。スプレーか何かで落書きをされた黒板。何かを燃やした跡がある床。どれもがただ虚しさを強調していて、どうしようもなく虚ろだった。

 まつりは壊れかけた教卓に手を添え、小さな小さな声で呟く。

「これでいい。もう必死になって頑張る必要は無いんだ」

 そんなわけ無い、とまつりの心は叫んでいる。しかし、もう何かをしようとしても遅く、既に何かを決定する時は過ぎ去っていた。

 後は自分の選択の結果が、自分に降りかかるのを待つだけなのだ。

 まつりは静かに目を瞑り、古びた教室に暫し佇んだ。

 数秒間の無音。

 まつりが再び目を開いたときには、目の前に男――いや、悪魔がいた。

「……やはり見張っていたのか。ならば勿体振らずにそちらが来ればよいだろう」

 まつりの自棄にでもなったよう呟きに、悪魔は嬉しそうに呟く。

「いや、何ということは無い。ただ貴様がどれだけ染まっているのか、少々試してみようと思ってな。……実際に来るとは思わなかったが」

 からかうような悪魔の言葉にも、まつりは疲れたような顔をするだけだった。いや、実際に限界だっただけかもしれない。しかし、それも既に関係はない。どちらにしても、まつりがもう逃げることに疲れているのは、疑い用の無い事実なのだから。

 その無気力さに悪魔はつまらなそうに鼻を鳴らした。

「フン、本当に弱くなったのだな。本当に闘えなくなったのだな。本当に――人間臭くなったのだな」

 悪魔の挑発するような言葉を聞いても、まつりの表情は変わらない。病人のように疲れきった顔のままだった。

 まつりはまるで他人事のように、淡々と語る。今、ここに死にに来た(・・・・・)理由を。

「……もうチカラを取り戻すことは無理だ。本来の姿に戻るどころか、四肢の一部を変えるのが精々だ。あちらに帰ることすら出来ない。……こんな弱い体で、こんなに汚い奴等と、こんなに醜い世界で生きるなんて、到底私には耐えられない。――もう、私は、死にたいんだ」

「……何故今になって? そんなこと、とうに気付いていたことだろう」

 まつりは悪魔に諭すように語り続ける。何を言われても、もう心が揺れることは無かった。

「気付いていた、とわかっていた、とでは全く意味が違うのさ。けれども強いて理由を言うならば、恩があったから、だな」

「人間ごときにか? ……やはり、弱くなったな」

 嘲るような悪魔の言葉さえも、まつりは苦笑して受け流す。

「ああ、人間臭くなったのかもしれない。ただひとつだけ言うならば、今回のこれは、ただの気紛れさ。……ただの気紛れなんだ」

 苦い顔をして黙り込んだ悪魔に、まつりは言った。悪魔を縛るための言葉を。

「さあ、『誓え』。『私が恩を感じた人間に、お前がこれ以降関わることは無い』ならば『私の魂を今すぐお前にやろう』」

 悪魔はまつりに対して警戒の眼差しを向ける。それも当然のことだ。この『誓い』に罠があったら、逃げられてしまうかもしれないのだから。僅かに躊躇ってしまうのも無理はない。

 しかし、迷いは一瞬。

 悪魔は注意深く言葉を選びながら、ゆっくりと『誓い』を口にした。

「『よかろう』。『お前がお前の魂を、今すぐ私に寄越す』ならば『私はお前以外のお前が恩を感じた人間に、これ以降関わることは無い』。お前は?」

 悪魔の『誓い』に付け入る隙は無かった。

 諦めと共にまつりは口を開く。

「私は――」

 その、と続けようとした時。

「ちょぉっと待ったぁ!」

 妙な声と共に扉が吹き飛び、まつりの『誓い』は中断させられた。

 入口の扉が無くなった教室に一人の青年が飛び込んでくると、そのままの勢いで悪魔に飛びかかった。

 その青年――恭平は悪魔が身構える前に腰にタックルを食らわせると、楽しそうに文句を言った。

「そんなことをされると困るなぁ」



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 恭平がまつりが去って行った方をぼーっと眺めていると、背後から蒼に声をかけられた。

「あの……兄ちゃん?」

「ん、どうかした?」

 おそるおそるといった様子だった蒼は、恭平の声が普段のものに戻っていることを感じ、少々安堵する。そして、先程のことについて訊いた。

「まつり姉ちゃんと、何かあったの?」

 その質問を聞き、恭平の顔が渋くなる。

「まあ、喧嘩……かな。ちょっと腹が立っちゃって、僕が一方的に怒った感じ。悪いことしちゃったな」

「ふーん。それは珍しいね。……けど、すぐに仲直りするんでしょ? もちろん、兄ちゃんが謝りに行って」

 自分が謝りに行くと信じて疑わない蒼に、恭平は苦笑する。

「僕が謝ることが前提なんだ……」

「だって兄ちゃん、友達と喧嘩したら、必ず謝りに行くじゃん。仲直りは早い方がいい! ってかんじで」

 そんなことは無い、と反論しようとするが、それが全くもって事実なことに気付いた。そして、顔がはっきりと苦笑いになる。

「そうかもね。……でも、今回は無理かもしれない」

 兄の弱気な台詞に、蒼は目を見開く。

「え! 何で!?」

「あの子はさ……どっか遠くに行くみたいだから、もう会うことは無いと思うんだ。それに、僕とは二度と会いたく無さそうだったし、行き先もわからない。……だから、仕方無い。仕方無いんだ」

 自分に言い聞かせるように繰り返し呟く恭平。穏やかな口調とは裏腹に、目は少し陰っている。軽く俯いた体勢で、蒼の目を見ようともしない。

 そんな兄の様子を見て、蒼は少し――本当に少しだけ――腹が立った。

「そんなの、兄ちゃんらしくないよ」

「え?」

 恭平は予想外な言葉を弟にかけられ、呆けた顔をする。

 その態度はさらに蒼を苛立たせる。その態度からは、いつでも堂々としている兄の姿など、一欠片も見出だすことが出来なかったからだ。蒼が敬愛してやまない、兄の格好良さというものが。

 蒼は声に怒りを乗せ、恭平を諭すように話す。

「仕方無いって何? そんな情けないこと、兄ちゃん言ったこと無かったじゃん」

 恭平は反射的に弟の言葉を否定しようとする。しかし、蒼は兄の言葉を遮りながら言い放つ。

「そんなことは――」

「あるよっ! いつでも自信満々で堂々としていて、いっつも自分の好き放題して、迷惑かけたら謝って、そうやって楽しそうにしてたじゃん! まつり姉ちゃんは友達なんでしょ? まだ好きなんでしょ? なら、仲直りに行かないと。もう一度会いに行かないと! ……絶対後悔する」

 弟の激励を聞き終えた恭平は、暫し呆然とする。しかし、その顔はだんだんと笑顔に変わっていった。

「そうだね……その通りだ」

 その言葉を聞くと蒼の顔は笑顔になった。

 恭平は背筋を伸ばし蒼の目を見詰めると、はっきりと宣言をした。その言葉に迷いは無く、その言葉が嘘なんてことは、有り得ないのだろう。

「仲直りに行くよ。もしまつりちゃんが望んで無くても」

「うん。頑張れ」

 恭平は蒼の応援を聞くと、いつもの楽しそうな顔になり、立ち上がった。そして、壁に掛けてあった大きな鞄をとると、物置に消えていった。

「何してんの?」

 物置をごそごそと物色する兄に、蒼は疑問の声をあげた。

 それに対して恭平は鼻歌を歌いながら返事をする。

「んー? 仲直りの前に、しなきゃいけないことがあるからさ」



■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



「おおおお、らあっ!」

 腹の底から響くような気合いの声をだしながら、恭平は悪魔の体をそのまま押してゆく。

「な……何故、ここにっ、ぐがっ!」

 恭平が悪魔を窓に叩きつけると、ガシャンと正大な音をたてて硝子が砕けた。頭を強く叩きつけられた悪魔の視界に火花が散る。

 怯む悪魔の顔を恭平はすかさず殴る。その際ガラスで腕を切ったが、恭平は全く気にしない。

「ぐうっ!」

「まだまだっ!」

 恭平は窓のサッシに掴まる悪魔の足を払い、悪魔の体勢を崩す。そして、肩に掛けている大きな鞄から素早く金属バットを抜くと、悪魔の顔面に力一杯叩きつけた。

 ぐらり、と悪魔の体が揺らぎ、上半身が完全に窓の外に出る。

「なっ……くそっ!」

 悪魔は慌てて恭平を掴もうとするが、恭平は慌てること無く伸びてきた腕をかわす。そして今度は金属バットを悪魔に投げつけた。「ぐあっ」

 ひゅんひゅんと音をたてて金属バットが悪魔へと飛ぶ。それを腹に受けた悪魔は、悔しそうな顔をして、ゆっくりと恭平の視界から消えていった。

 それを塵でも見るような目付きをして恭平は呟いた。

「落ちて死んじゃえばいいのに」

 そう言って息を吐いた恭平は、まつりの方へと振り替えるとにこやかに話しかけた。

「さて、と。……助けに来ましたよお姫様」

「なっ……」

 恭平は分厚いコートを羽織り、肩には巨大な鞄を袈裟懸けにかけるという出で立ちで、まつりに向かって手を差し出した。

 にっこりと微笑む恭平と、呆けた顔で恭平を見詰めるまつり。時間が止まったかのような静寂が流れる。

 不意に大きな怒鳴り声が教室に響いた。

「ふ、ふざけるなっ!」

 声を発したのはまつりだった。

 恭平が来たということを知ったとき、まつりはまず困惑した。自分がここに来るなんてことは一言も言ってないはずなのに、今この場所にいることに対して困惑したのだ。何故ならば自分はここに来るなどとは一言も伝えてはいないのだし、恭平には来る理由が無いはずだからだ。

 そして恭平が自分に会いに来たのだとわかったとき、よくわからない感情が吹き出てきた。怒りによく似た感情が。

 まつりは死ぬつもりだった。今ならばそれで全てが解決するのだし、自分以外の知り合いが傷つけられることもない。自分さえ我慢すれば何も問題は無い。そう、自分さえ気にしなければ守ることができる。自分さえ諦めれば。自分さえ。

 ――だから、死のう。

 そんな必死の覚悟を無駄にされた気がしたのだ。

 まつりは先ほどの悪魔とほとんど同じ内容のことを叫ぶ。

「何で……何でだっ! 何でお前はここに来た! お前には関係ないことだろう!」

「っ……」

 激昂。まさに爆発するかのようなまつりの様相に、一瞬恭平は息を呑む。

 前回まつりが激昂したとき、恭平は気圧されて何も言うことができなかった。言いたいことも伝えたいことも、溢れるくらいあったというのに、黙って見ていることしかできなかった。

 肝心なときに何も言えない歯がゆかった。

 後悔した。

 そして今日弟に、もう格好悪いことはしないと誓ったのだ。

 だからこそ、恭平は震えそうになる体を押さえつけ、精一杯いつも通りの顔で語りかける。

「僕はね、どうやら俗に言う天邪鬼ってやつらしくてね、来るなって言われると来たくなる性質なのさ。だから関係ないなんて言われてしまうと、余計に関係あるって主張したくなるような奴なんだよ」

 困ったもんだよね、と笑ってみせる恭平に、まつりは言葉を詰まらせる。

「っ……関係ないだろう! これはあいつと私の話し合いだ! 人間ごときが邪魔をするな!」

「関係あるよ。今の話を漏れ聞く限り、このままだとまつりちゃん死んじゃうじゃん。それは大いに僕が困る」

 大真面目な顔をして不機嫌そうに、恭平はしゃべる。

 まつりは心の底から湧き出てくる焦燥に身を任せ、恭平の言葉を否定しようとする。

「何故そんなことを気にする? 私がどうなろうと赤の他人のお前には何の関係もないだろう!」

 深く考えずに発したまつりの言葉を聞いた途端、恭平の目がスッと細くなった。それと同時に恭平の不機嫌さが増したことがまつりにもはっきりわかった。

「赤の他人? そんなわけ無いだろう」

 押し殺した声で恭平はまつりに語りかける。それは恭平にとって聞き捨てなら無い言葉だった。

 恭平の言葉に籠められた怒りに気付き、まつりは僅かに怯む。しかし、まつりの叫びは止まらない。

「他人だ! ついこの間出会ったばかりで、相手のことなんて互いに碌に知りもしない!」

「それでも、他人じゃないよ」

「なら何だと言うんだ? 私達は知り合いだとでも言うつもりか? 確かに知ってはいるかもな。だけど――」

「そうじゃない!」

 自分のことを否定しようとするまつりの言葉、を恭平は大きな声で遮る。

「そうじゃないよ」

 恭平は悲しそうな顔をしてまつりを見る。それはまるで自分を責めているかのようで、まつりの心は大きく揺さぶれた。

 縋りつくかのような声で、恭平は呟く。

「僕たちは……友達だろ?」

「え?」

 友達。

 その言葉を聞いたとたん頭の中にノイズが走ったかのような頭痛にまつりは襲われた。

「違う違う違う、私たちはそんなんじゃない、そんなわけが無い!」

 壊れたテープレコーダーのようにまつりは怒鳴る。壊れそうになる自分の心を守ろうとでもするかのように、頭を振り耳を塞ぐ。そんなまつりの声に負けないように恭平も声を張り上げた。

「何が違う!?」

「全部だ! 友達になるようなことはしていない!」

 まつりの否定に対して、恭平は喉が裂けんばかりに叫ぶ。

「僕たちは一緒に遊んだ! 一緒にご飯を食べた! ピアノを弾いている時、散歩をしている時、本を読んでいる時、僕たちは一緒にいただろう!」

「それはっ……!」

 恭平の言葉を祭りはとっさに否定することができなかった。恭平の言葉を聞いた途端その時(・・・)の景色が浮かんできてしまったからだ。

 その思い出を否定するかのように、まつりは教卓に手を叩きつけた。

 鈍い音が静かな教室に響き渡る。

「……そして決別をしたはずだ」

「違う。僕たちは喧嘩をしたんだ」

「何も変わらないだろう!」

「変わるんだよ。決別なんて大層なことはしてない。ただの喧嘩なんだよ」

 まつりが言い張っている『決別』と恭平が主張している『喧嘩』は、まつりにとっては大した違いは無いのかもしれない。しかし、恭平にとってはその二つは全く別物であり、それらの相違点がとても重要なことだった。

「だって、私は! あいつとさえ友達になれなかったのに!」

「……あいつ、が誰なのかとかは、僕にはわからない。けどね……」

 だから恭平は自分が一番大切だと思っていることを、簡潔に伝えた。

「仲直りすれば、また友達だよ」

 どくん、とまつりの心臓が跳ねた。

 まつりの心にその言葉が染み込んでゆく。

 恭平の言葉でまつりは自分の世界に入り込んで行く。信じられないものを見たかのように呆然とした表情で。

「……そんな……けど…………私は……」

「今すぐ認めてくれなくったっていい。だけど僕のことを許してくれると嬉しい」

 ペタンとまつりは地面に座り込む。頭が混乱して上手く考えることができないようだ。

 そのまつりの様子に考える時間が必要だと感じた恭平は後ろを振り返る。そして、いつの間にかそこにいた悪魔と目を合わせた。

(さて、ここからが正念場だ)


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