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魔王side3 忍者side5


 魔王side3


 ニセクロは逃げていた。追われていないが、逃げていた。

「危なかったな…というか、なんでコガネたちがここにいるんだよ……」

 魔物と勇者の決着の場に、親しいものを巻き込みたくないのだろう。見つけた瞬間、隠密魔法を使い、逃げた。

「あのミドリって奴のせいなのか……? というか、アカマムシも探さないとな……逃げてきたから場所が分からん」

 適当ぶりに磨きをかけ、歩き出す。

「方角どっちだっけかなー? というか、ここどこかなー? わからないかしらー」

 暇だったのだろう。誰とも取れない人間?いや、人形の声まねをする。

「道に迷っちゃったかしらー場所が分からないかしらー」

 傍で聞いている人? 魔物? がいたら気持ち悪いと感じる高い声で、声まねをする。

「何をやっているの?」

「ギャァァぁぁぁぁぁぁァァァァあっアッァアァァァ」

 厨二時代の黒歴史を大学時代になってから覗かれた、不幸な人のように、叫んだ。いや、叫ばずにはいれなかった。というか、反射的な?

「なんでシースがここにいるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 叫んだ。

「え? 魔王様が困っている様子でしたので、急ぎ駆けつけたんです。具体的に言うと。卵好きな、第二番目の、鳥の名前と同じ人形の声まねをし始めたところあたりからかしらね。ものすごくいそいだんですよ。」

 完全におちょくられにこられたことを悟ったのか、死んだような目を魔王は見せる。

「まぁ、後半は冗談だとして、迷ったなら、道案内してあげるわよ、魔王様?」

「昔の呼び方に戻せないのか?」

「もう年的に無理だわね。年齢分かって言ってるんですか? 魔王様?」

 嘘だ。嘘だ。嘘だ。俺が二十歳いや、魔王即位式…十八の時か…それから呼ばれ方は魔王様だ。ここ十年、いや、十五年以上。魔王様という呼ばれ方だ。

「まぁ、魔王様は、魔王様なんだから、威厳を……」

「わかった。早く案内してくれ」

 ニセクロは、話を中断させ、先を急かした。これ以上言わせたくないらしい。

「わかったわ」

 シースの雰囲気が変わる。幼馴染と接する態度から、魔王に使える魔物の態度に。

「では、魔王様、こちらでございます。この先に、仲間であるエイグレトの配下である、アカマムシがおります」

「というか、よく道がわかるな」

「私めは、配下との交信魔法が得意ですので。そのおかげで、広報情報集収部隊の隊長を務めさせていただいております」

「日毎から、ありがとうな。お前のおかげで、魔王軍は成り立っていると言っても、過言ではない。今回の勇者討伐作戦も、お前とエイグレトの考案だったな。近辺の日時に、褒美をつかわそうと思う」

「ありがたき幸せでございます。魔王様」

歩きながら、二人は話す。事務的な会話でも、魔王は不安で、配下は期待。が入り乱れる。ただ、両方の願いは……

 

 少し時が経ち、アカマムシを見つけた。ギンマムシと違い、知能が微妙に高いので、人語も話せるらしい。

「これはこれは魔王様、私などがお会いでき、非常に光栄でございます。話は変わりますが、少しお見えになるのが、遅かったですね。何か問題でも起きたのですか?」

 ニセクロはアカマムシに言われて気づいた。そういえば、シースにコガネたちのことを話してないと。まぁそれでもいいかいいかと、瞬時に思い、

「あぁ、少しな。俺の人間の友人が見つかったんだよ。遺跡付近でな」

 シースが驚く。昔は、私にくっついていただけなのに、今は友達を作れるレベルにコミュ力が上がって……みたいなことを。

「どうするんですか?計画に支障が出るかもしれないわね」

 軽く、日常的な声に戻り、コミュ力が上がった魔王に言う。

「まぁ、多分大丈夫だろ。あいつらのレベルで、到達できるダンジョンだが、勇者の方がひと足もふた足も早く入ってたし、なんなら、勇者を倒してくれるかもな」

 そう言いながら、アカマムシに、コガネの特徴を教え、こいつは攻撃するなと釘を刺す。

「じゃぁ、アカマムシ、お前は、ここに出てきた、勇者たちに圧倒的な攻撃力で止めを刺してくれ。ギンマムシとゴブリンの波作戦で、勇者の疲労は溜まっているはずだ」

「わかりました。全力を尽くします」

アカマムシはそう言い、所定の位置についた。

「よし、シース、オレらもここらで見張ってるか。アカマムシと、ギンマムシの保険をかけておいても悪くはあるまい」

「そうだねぇ。まぁ、不確定因子もいることだし、保険があってもいいんじゃない?」

 完全に魔王と配下という立場は忘れているらしかった。


 忍者side5


 コガネとミドリは、迷っていた。足跡をおうつもりが、戦闘現場は、血で足跡は消え、さらにいろいろな部屋からの足跡と混ざったらしく、完全に足跡は消えた。

「足跡がないというか、ゴブリンどんだけいるんだよ…」

 コガネは絶句する。部屋から部屋から部屋から、ゴブリンの足跡はあった。

「この数は異常ですね。まるで以前から来客があるのがわかってて、罠にはめたような感じですね。」

 的確すぎる意見を言う。勘がいいのだろうか。

「数十匹単位でいそうだな。こんな数に襲われた先客に合掌。」

手をあわせるコガネ。

 ザッ、と物音がした。足と床の摩擦音…

「チッ、敵かよ!?」

 コガネが懐から刀。短剣より短く、普遍的な刀よりは短い刀。所謂忍者刀を出す。

「まぁ、雑魚だし、暗器は使わなくていいか…」

 ひとりごとのように、いや、独り言をコガネは呟く。

 コガネの言葉を聞いてか聞かずか、ミドリも武器を構える。杖の上方である木の部分を取り、なかから片刃が出てくる。

「珍しい武器だな。」

「まぁ。」

 軽く会話を交わしてから、コガネは少し先に居たモンスターに向かい、忍者刀を振るう。空気を裂く音に遅れ、肉を裂いた音。

「これは僕が武器を用意する必要はなかったかもですね。」

 刀を切り終わったあと、上に向かい切返す。名前も知らぬモンスターは数刻で命を絶たれた。

「案外弱かったな…もう少し強くてもいいだろう。」

「まぁ、上位種じゃないただのゴブリンですからね。なんで僕武器出したんだろ。」

コガネは刀をしまい、ゴブリンと分かった魔物の所持品を漁りだす。

「というか、なんでこいつだけここにいるんだよ…ほかの魔物と合流すりゃーいいのに。」

「まあ、一匹くらい迷ったゴブリンがいたんでしょう。偶然会うのは。リアルラックの低さじゃないでしょうかね?」

「なんか、微妙にわかる人とわからない人が居そうな言葉を使うなよ…」

「メタるのとどっちが重罪でしょうかね?」

 所詮どっちも変わらなそうなことを二人は言い合う。

「というか、地図はどこやった。冷静に考えれば、それがあれば迷わないはずだろ。」

「多分、偽物売りつけられましたね。」

「マジかよ…」

 偽物の地図を出した。

「ほら、見てください。どう見ても偽物でしょう?」

「というか、この部屋配置。暗号で偽物ってなっているぞ。売ってる業者の人は地味に親切だな。」

「まじですかー」

 その地図は忍者暗号が使われていた。というか、わかる奴少ないと思うが、作ったやつはなんで日本以外でこんな地図作れたんだよ。的なことをコガネは考え、

「でも、解読できる奴は少ないだろ。結構専門的な暗号だぞ。」

「売っている人は、地図じゃなくて、土産として売り出してたのか…」

 ミドリは軽く落胆した。そうして、二人は先に進んだ。


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