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忍者side4 勇者side5

 

 忍者side4


コガネとミドリは、ダンジョンについた。ここまでの道中はコガネにとって大変だったようだ。ミドリがコガネのことをよく聞くのだ。忍者関連はぼかして伝えたが、なぜかミドリは、幼少期に付いて聞くことはなかった。

「やっとついたな……」

 少々疲れたような様子で、コガネは言った。ため息まじりな一声だった。

「まぁ、本番はこれからだけどね……」

「まぁ、そうだな。というか、足跡?」

 コガネは足元に足跡を見つけた。三人分? いや、逆方向に一人。三人入って、ひとり帰ってきた? いや、靴の感じが違う? 別の出口?

 いろいろな思想が思い浮かぶ。

「変な足跡だな。三人入って一人でてるが、その足跡は全て違う……なるほどな……」

「何がなるほどなの?」

「いや、別の出口があるのかなって思って」

「そんなの誰でも考えると思うわ。僕でも考えるし」

「本当?」

「嘘」

 漫才にも到達しないやりとりが繰り広げられた。ミドリはミドリで、何か考えているようだ。

「とりあえず、この足跡の調査をやってから行くという慎重論と、無視して特攻するという、軽率な感じがする案の二つがあるけど」

「僕の考えを言わせてもらうと、この足跡をたどって行くというのが、一般的だと思います。この足跡の人が、一つ目の曲がり角の先で死んでいない限り、先にいる魔物は倒されていると考えていいでしょう。なおかつ、罠等も解除されている可能性が高いですね」

「なるほど。それで、この外へ出ている足跡はどうする?」

「続いている先が違うようだし、こっちは敵に待ち伏せされている可能性が高いと思います。それに、上位種の魔物が、この人を追っている可能性もあります。その場合も、引き返した可能性も高いので、この道は危険だと思います」

「じゃぁ、この道を進もうか」

「そうですね」

 二人は少し歩いた先に、ビンを見つけた。正確には瓶の割れ後。その横には、

 ゴブリンの死体。

 何度かは見たことがあるとはいえ、獣より、人に近い形状の死体を見て、コガネは、息をのんだ。

「ひどい光景だね」

 コガネの一言が漏れる。ミドリはモンスターの死体に感想を漏らす冒険者を見て、

「軟弱な冒険者もいるんですね」

 と言った。

「ハハハ、軟弱はひどいだろ。まぁ、何度見ても、人に近い獣人の姿にはなれないがな」

 勇者よりも人間らしい忍者は、獣人に同情しているようだ。

「いくら人間ではなく魔物だとはいえ、死体を見たときに、悲しさを表すことは生物として必要だと思う。だけど、俺は人間として倒した奴を卑下することはできない。襲ってくる獣人は倒さないとだし、自分の目的と他人、他種族の命を天秤にかけないといけない時は、いくらでも来るよ」

 そう言いながら、コガネは小刀を構える。

「優しいのですか、冷酷なのですか、よくわからない人ですね」

「まぁ、見るのは嫌だけど、利用するには厭わないってことだよ」

 そうして、コガネはゴブリンに残されたスカーフを盗る。いや、取る。それを分けるときは、永遠に来ない、言葉の選択。

「さて、先に行きますか。先に来た方々も、まだ見えないしね」

「そうですね。」

 二人は、歩きだした。


 勇者side5


 フウセンは、剣を振るっていた。辺りを埋め尽くすゴブリンに向かって。

「どんだけいるんですかっ……!?」

 言葉を発する間にも、剣は止まらず、振るわれる。

「私にもっ、わからないっ!」

 魔法を使う隙が見つけられないのか、アカネも細剣を刺し続けている。

「とりあえず……逃走か、戦略的撤退か、逃げるボタンを選択するか、我々は決めないといけない……」

 弓が使える間がないのか、ソラは瓶を投げる。魔法の瓶亜種、手榴弾だ。弱気になっても、数は減らすつもりらしい。

「逃げるわけないじゃないですか! 進みっ、ますよ!」

 爆撃の音を背景に、フウセンは大剣を振るう。

「少しは、掃けてきたところです! このまま押し切るしかないでしょう!」

「見えたよ! 簡易型光魔法だ!」

 アカネが、瓶を出す。

「我らの光よ、敵を怯ませ!」

 フウセンとソラ、それに術を行使した者は目を瞑る。

 当たりのゴブリン。数十匹いたはずが、今では数匹になったゴブリンは、目を晦ます。

「今です!」

 勇者の剣、魔法使いの細剣に、手榴弾が辺りの獣人を薙ぎ倒す。

 その後、最低限の、戦場処理をし、ゴブリンから、貴重品らしき物を剥ぎ取った。

「先に…行かないと……まだ、鍵は見つけてないから……」

 ソラが、疲労した声を出す。血の臭いと、肉の断面、赤く輝いた二人の剣を見て、吐き出しそうになった。

「またこんな数を出されたら、帰れるかもわかりませんね」

 フウセンが弱気になる。翳った光を放つ剣。赤と光の対比が、王に貰った剣に翳りを与えている。

「まださー終わったわけじゃないんだがら、先にいこうよ。鍵の前に、敵が出ないこともありえるっしょ? 次の小部屋か、一旦戻って、ひとつ前の小部屋で休憩をとってから、鍵を探そうよ」

 返り血を拭き、細剣を鞘に収める。

「休憩では、疲労回復呪文をメインに撃つからさ」

 フウセンは、アカネを尊敬した。この状況で、弱音の一言も無いなど、波の精神力では出来まい。

「わかりました。一つ先の部屋は危険かもしれないですし、ひとつ前の部屋に戻りましょう」

血を拭くのに時間がかかったらしく、ようやく大剣は鞘に収まった。ジャキッという音と共に、戦闘の雰囲気は消え去った。

「とりあえず……手榴弾はすごく減った……」

 ソラは、戦闘で減ったアイテム類の確認をしていたようだ。

「疲労回復の瓶をあまり持ってこなかったから、数が厳しいかも……フィールドワークの方が疲れるという予想が、外れた……」

 道が整備されているダンジョンの方が疲れないと思ったらしい。ビンの数は、体力回復、補助、攻撃、疲労回復、妨害の順で、瓶を持ってきたようだ。

「どうしますか。全部疲労回復の瓶を使ってしまうのも躊躇われますね」

「でも使わないと仕方ないと思うなー? というか、そろそろ一旦前の小部屋に戻らない?疲れたし。」

 二人とも同意して、前の小部屋に戻り出した。そのとき、ある魔物が、次の部屋に行ったなら、確実に倒せたのよね。と人間にはわからない言葉で呟いたことを、勇者たちが知る由は無かった……


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