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勇者side4 魔王side2


 勇者side4


 フウセンは『鍵の在処』の入口に立った。薄暗い洞窟には、湿気がこもっている気がした。

「これが、魔王城に入る鍵があると言われる『鍵の在処』ですか……大事なものを守っていそうな厳格な雰囲気がありますね」

「私には、しめぼったくて、薄暗いだけのダンジョンにしか見えないけどなー なんか、オーラとかあるもんなのかねー」

「アカネ…雰囲気をぶち壊すようなことを言わないほうがいい……常識的に考えて……」

 フウセンが多少ふざける。いまから血と肉を引き裂くのだ。慣れているとはいえ、軽口でも言わないとやってられない。

「そんな常識はどこにもないよー? 少なくとも私の中にはないねー」

 軽快な話をしながら、フウセンたちは、遺跡に入っていった。ザッ、と、地面をこする音がする。

「というか本当に薄暗いねー 結構怖いやー」

 暗い中、アカネはモンスターや獣が襲わないかと不安になっているようだ。

「おっと、松明を出すのを忘れていましたね」

「それって結構重要じゃない?」

「フウセンって意外と天然……?」

 馬鹿にするように二人が言う。

 仲間二人に罵倒されながら、フウセンは松明に火をつける。

「二人ともひどいですね。まだ歩いて数分じゃないですか…… 別に数分くらい暗い遺跡の雰囲気を楽しませてくださいよ……」

 松明を火につけたかわりに、不平不満が消えるということはないようだ。

「だって、暗いのは嫌だしねー モンスターとか怖いじゃんか?」

「アカネに同意…… 全面的にフウセンが悪い……」

「!???」

 フウセンの前に、人影が見えた気がした。フウセンはそれに火を近づける…

「アカネ! ソラ! ゴブリンです! 戦闘準備!」

 見えたものはゴブリンだった。数は一匹。群れで行動するゴブリンにしては、珍しい。フウセンたちも一瞬疑問に思ったが、そんな些細なことは関係ない、と自らの思考を切り伏せた。

「了解! とりあえず、光魔法で、視界明るくするね!」

 アカネが光魔法を使うための瓶を出す。フウセンは松明を消し、剣を鞘から抜く。ソラは回復魔法用の瓶を準備し、背中の弓を構える。

「天なる恵みの光よ、大地なる我らの知識と融合し、我らの助けとなれ!」

 アカネが光魔法を使う。視界が明るくなる。

「ッ!?」

 前衛に居たフウセンがゴブリンの棍棒の一撃を食らう。

「結構痛いですね……」

「撃つ……」

 シュッという音と共に、ソラの矢が宙を舞い、ゴブリンに命中する。ゴブリンは悲鳴をあげ、一歩退く。

 ゴブリンが退いていた時、フウセンの剣がゴブリンに命中する。ゴブリンは、手に持っていた棍棒で防ごうとするが、間に合わない。ザシュッという音と共に、ゴブリンが地面に倒れる。

「ふぅ、疲れましたね」

 フウセンがため息をつく。ソラは弓を下の位置に戻し、アカネは攻撃魔法の瓶を、バッグに戻す。

フウセンが松明を付け直そうとした頃、異変に気づく。

「皆さん……非常に言いにくいのですが……敵、また来ましたね」

 続々と出てくるゴブリンを切り倒しながら、勇者たちのダンジョン攻略は続く。


魔王side2


 その頃、魔王であるニセクロは、ダンジョンの最深部にいた。そばには、異形の怪物。鋼鉄の体という表現にふさわしい。というか、鉄そのものの怪物だ。

「頑張ってくれよ、お前は役割的には足止めだが、勇者を倒せる力も持っている。その気になれば、勇者だって、倒せるんだから」

「ギャー。ギャオー」

 人間にはわからない声で、魔物は頷く。ちなみに『分かったでガンス! 俺様が勇者ごとき、ケチョンケチョンにするガンス!』って言っているらしい。わからないものだ。

「と言っても、お前の本分は、あくまで、勇者の疲労を溜めることだ。それを忘れては困る」

「ギャオ。ギャオ! ギャァオオオオ!」

 魔王の激励に、魔物は頷く。正確にはわからないが、しっかり勇者を倒して欲しいと魔王に言ったらしい。さっきの翻訳は想像だ。

「じゃぁ、俺は勇者の視察と、アカマムシにでも、挨拶してくるわ。頑張れよ、ギンマムシ。」

 ギンマムシと呼ばれた魔物は頷いた。

 ギンマムシと別れ、ニセクロはダンジョンを歩いていた。

「昔は家の庭のように、ここを歩いたな……」

 ニセクロは寂しげに呟く。ニセクロにとっての庭は、勇者にとっての通過点であり、忍者にとっての、金づるだった。

「なんで、ここで殺し合いが始まるんだろうな」

 罠を仕掛け、勇者を嵌めようとしているのは自分自身とその仲間たちなのだが、それを棚に上げ、呟く。人に聞かれていないのだから、問題はないのだろう。

「みんなのために、何より、シースのために、外敵は滅ぼさないと……」

 誰も聞いていないと思い、魔王は呟く。シースが偵察部隊を率いており、なおかつ、魔王がいるダンジョンは、シースの管轄下なのは解っているのか、判っていないのか、それとも分かっているのか。

「なんで、俺の世代に勇者なんて出たんだよ……魔物は確かに人間を敵とする。だが、友愛派の奴もいるし、俺だって友愛よりだよ……なんで、人間は魔物全体を敵にするんだよ…」

 覆すことができない、運命に呟く。人間共が俺らに歯向かわなければ、俺たちもやり返すことはないのにな、と、続ける。

「出口か……勇者には会わなかったな」

 魔王はそこで見た。コガネと、半分程度忘れていた美少女……ミドリを……


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