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魂鏡〈たまかがみ〉〜古代変身ディスクを宿せし者たち〜  作者: 月乃 そうま


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魂鏡四三、変身ブレス


 東アジト急襲作戦から数日。

 直居教授によって、黒木、望月、浅黄、藍沢が『MD研究室』に呼ばれた。


 四人が通された場所は防護実験室と呼ばれる体育館くらいの大きさの部屋で、宇宙服の防護能力を計測したりするのが本来の目的の部屋らしい。

 部屋には四人の他にも三人の職員らしき男女が呼ばれていた。

 そんな中で直居教授が話し始める。


「急に呼んでしまって、すまないね。

 今日、集まって貰ったのは、コイツを試して欲しいからなんだ」


 直居教授が台座に載せて持ってきたのは、スマートウォッチだろうか、腕輪に液晶が付いた代物だ。


「簡単に言えば、変身ブレスレット付きスマートウォッチという所だね。

 少しゴツくなってしまったが、内部には少しの興奮剤と安全に『魔凱着奏』するための祝詞を高周波に置き換えた、高周波発生装置が内蔵されている。

 完全な魔凱着奏とはいかなかったが、充分、実用に耐える機能が入っている。

 ……ああ、もちろんスマートウォッチとしての機能も充実している。

 アプリ『スペースデベロッパーズ』では給与明細や隊員の稼働状況、各員が好き勝手書いていい掲示板、他にも優待券の配布、研究成果発表などが見られる上、通常のスマートウォッチとしての機能もひと通り入っている。

 どうだね?」


「つまり、それを使えば誰でも安全に『魔凱着奏』ができるようになる、ということですか?」


 『MD研究室』の隊員と思しき男性が聞いた。


「理屈で言えばそうなる。ただし、誰でも使えるという状況を避けるため、安全装置として個人用のメモリーバッヂを識別させる必要がある。

 常にメモリーバッヂとスマートウォッチを携帯してもらう必要があるが、敵に奪われて使われてしまうという状況に保険は掛けられる」


「あの〜」


 燈里が恐る恐る、手を上げる。


「何かね?」


「バッヂがそれぞれ違うのは?」


「研究員の趣味だ。三徹してデザインを完成させたらしい」


 義己のバッヂは闘牛を思わせる意匠がされており、莉緒の物は青龍、そして、燈里と叶和はポップなデザインの兎と猫だ。


「えっと……せめて義己っちみたいにカッコよく……」


「三徹、したそうだよ。このデザインのために……高見班長は……」


 いい大人が個人識別用バッヂの装飾に三日間徹夜でデザインを考えたらしい。

 しかも、あの才女然とした高見班長が、という事実に燈里は口を噤む以外の道を見出だせなかった。


 直居教授は、大人の圧を纏った頷きをひとつ。

 それから、小さく咳払いして、話を変えた。


「えー、まずは各員、『魔凱着奏』と叫びながらの変身を試して欲しい。

 暴走の危険性はないが、一人ずつ行こう。

 まずは外村くんから……」


「ま……これ、叫ぶ意味は?」


「そうだな。本来の『魔凱着奏』はスマートウォッチを必要としない。

 その変身プロセスを実際に感じることによって、脳を慣れさせるため、としておこう」


「実際は?」


「無論、それが変身ヒーローの宿命だからだが?」


「う、うす……」


 外村は納得いかない顔で、それでも直居教授の圧に負けた。


「ま……、コホン。

 ま……『魔凱着奏』!」


 外村がバッヂとスマートウォッチを近づける。


 個人認証コードを受け付けた、ピピッ! という音がして、短いロックテイストの音楽が流れる。

 音楽の終わりと同時に外村の全身に灰色の鎧が装着された。

 その姿は狼男だろうか。

 ウルフマスクの口の中に無機質な人を表すマスクが付いている。

 全身の鎧は少し軽装という感じで、二の腕や太ももはタイツのような物で覆われている。

 完全に全身を魔凱が覆わないのは、直居教授が言う所の完全ではない『魔凱着奏』だからだろうか。


「どうだね、初めての『魔凱着奏』は?」


「はイ。多少なりとも衝動はアりますが、抑エられなイ程ではなイと思イます」


「ふむ、衝動はあるか……」


「アると言っても、自分の場合は肉が食イたイとか、その程度でしょウか……」


「なるほど……抑えられる衝動なんだね?」


 直居教授はメモを取る。


「目の前に肉を出されても、イきなりがっつく事はなイと思イます」


「概ね成功ということでいいかな……」


 直居教授はおそらく外村の名前に丸をつけた。


「よし、では黒木くん、お願いできるかな?」


「俺!? でも、普通に鎧状態になれるけど?」


「だからこそだよ。

 スマートウォッチ変身と普段の変身、その際の違いを教えてもらいたい」


「なるほど。そういうことなら……『魔凱着奏』!」


 義己は恥ずかしげもなく叫んだ。

 しかも、ちょっと決めポーズ付きで個人認証を済ませる。

 音楽が鳴る。外村の時はロックテイストだったが、義己の時はハープを、トゥラララララン、とかき鳴らす音で、異国情緒溢れる感じに纏められていた。


 そうして義己の全身が鎧に覆われるが、やはり軽装鎧という感じで、二の腕と太ももは焦げ茶色のタイツ、他は元の魔凱という姿になった。


「……ちょっと頭に響く声が遠くなった?

 これが衝動が抑えられてるってことなのかな?」


 となりにいる燈里に義己が言う。


「アレは? 義己っちの道が分かる能力」


「……あれ? 今、食堂への道を探ったんだけど、、なんか普段よりダメかも?

 普段なら直感的にどこを曲がればいいか分かるかんじ感じだったけど、方向と距離が何となく分かる程度っていうか、とにかく、精度が落ちてる感じだな……」


「固有能力が落ちていると?」


 直居教授が聞く。


「そんな感じっす。

 でも、動きはいつもの『魔凱着奏』より楽な感じがします」


「不完全には、不完全なりの欠点と利点がありそうだね。

 黒木くんには、状況による使い分けを考えてもらうのもアリかもしれない……。

 よし、次は望月くん、行ってみようか」


 燈里はバッヂを腰の横辺りに付ける。

 服の裾を出しておけば、バッヂは簡単には見えない。

 ポップな絵柄のうさぎバッヂに対する、せめてもの抵抗だった。

 中二病男子としては、変身ポーズは拘りたい。

 その思いを胸に、精一杯カッコよく決めポーズ。


「『魔凱着奏』!」


 郷愁を誘う音楽が鳴る。それは───────うーさ、ぎ、うーさぎ、なにみて、はねる。十五夜、おっつきさーま、みて、はーねーる───────という、『うさぎ、うさぎ』という童謡だ。


 カッコイイ決めポーズと裏腹に、何とも言えないシュールな空間で燈里は初めての魔凱着奏をしたのだった。


明日から、少し不定期になるかもです。

書き溜めが尽きてしまいました。すみませんm(_ _)m

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