魂鏡四〇、首輪
「浅黄、大丈夫か!?」
燈里が聞くのに、莉緒はなんとか頷きを返す。
「……叶和のおかげでね」
「ああ、藍沢って強いのは知ってたけど、あんなに強いんだな……」
「うん、叶和はウチの部でもセンスが飛び抜けてるから。
ねえ、望月はこの身体の痺れみたいなのは取り除けないの?」
莉緒に言われて、燈里がオーラを見る。
たしかにオーラの出方というのだろうか、普段ならば四色のオーラが大きさは違えど、それぞれに漏れ出ているのが見えるのだが、それがギザギザになっているというか、オーラが出たり、出なかったりしているのが分かる。
「叩いてなんとかなるって感じでもないな……栓が詰まってる感じというか……たぶん、今すぐどうこうできるモノじゃないな……頭の中に響く声がない」
それは感覚の話で掴みどころがない話ではあるが、覚醒者にしてみれば納得できる話だ。
「ダメか……」
「そんなまずい感じ?」
「しばらくは痺れて使い物にならなそう」
莉緒がお手上げという風に手を動かす。
その動きはやはり緩慢で、指先などに震えが残っているのが分かる。
「大丈夫か?」
穴が拡がるにつれて、榎田、下根、義己がやって来る。
「すいません……痺れが取れなくて……」
「いや、こちらも気付くのが遅かった。
申し訳ない……」
言いながらも榎田は自身のリュックから一本の首輪を取り出す。
「下根くん、充填と拘束を頼む」
「お任せを」
下根は首輪に触れて、指先を押し当てると、毒液を充填していく。
それから、おじさんの首に首輪を嵌めた。
「こいつは帰りに拾うとして、これで大丈夫ですな」
おじさんはトロンとした目をして、気力なさげに座り込んでいる。
「逃げられたりしないニャ?」
「大丈夫ですよ。
首輪は無理に外そうとすると、首が腐り落ちるようになってまして、GPSで居場所もバッチリ分かる使用ですから、でゅふふ」
「腐り落ちるニャ……」
叶和が怖い想像に身体を自分で抱きしめた。
気付いているのか、いないのか。下根が続ける。
「まあ、その前に激痛で不可能だと悟るでしょうね。でゅふふ」
下根が笑う。
榎田は莉緒の体調を確かめて言う。
「さすがに浅黄さんをひとり残して行くのは無理だな。
肩を貸せば歩ける?」
「歩くくらいなら、ひとりでも大丈夫です。
少しすれば、痺れも取れると思いますから……それより、ここに一人残されても、道を覚えきれません」
「……うん。じゃあ、しばらくは僕と一緒に後方で行こう」
「はい」
この中で榎田だけが『ムーンディスク』保持者ではない。
榎田は責任を取るために同行しているのだ。
ミノタウロス、ニーズヘッグ、兎人間、猫人間、龍人という異形に囲まれて、榎田は道を示しながら、先へ進むのだった。




