魂鏡三四、警備詰所
昨日は体調不良でお休みしてしまいました。
申し訳ないm(_ _)m
『警備詰所』から出て来たのは、宗教絵画に描かれるような薄布を一枚纏っただけの、剣を持った有翼の人間、天使だった。
天使は一人ではなく、全く同じ天使が六人、七人と出てくる。
「あの三人は『マナガルム』の敵だ!
打ちのめして、捕らえろ!」
高桑の言葉に天使たちが反応する。
全ての天使が祝福の笑顔に溢れた顔のまま、抜き身の剣を振り上げ、三人に殺到する。
莉緒、叶和、明里の三人は竹刀袋から竹刀を抜く暇もなく、天使たちを迎え打つ。
「なんなの、こいつら!?」
明里が天使の速いが鋭くはない剣を竹刀でいなして、胴を打つ。
オオーーー!
天使の口から声とも音とも取れる叫びが上がる。
「小手、胴ーーー!」
叶和の攻撃が決まるも、その違和感に叶和は首を傾げた。
「うにゅ? 素手に私の渾身の小手を食らって、剣を取り落とさないとは……アンタ、手に剣くっつけてんのかい!」
叶和なりの賛辞。
まるで筋肉を褒め称えるかのようにそう言ったが、それはあながち間違いではなかった。
天使たちは、どれだけ小手を打たれようと、剣を竹刀で絡め取ろうとしても、剣を手放すことはなかった。
ただ、打たれる度に、オオーーー! と、声とも音とも取れる叫びを上げるだけなのだ。
速いだけで鋭さのない剣。
天使たちが七人がかりでも、莉緒たち三人の剣技の方が圧倒的ではある。
しかし、触れれば切れる剣と打撃の竹刀では、千日手になりかねない。
「高桑あああっ!
ニヤニヤ見てんじゃないわよ!
直居覚醒!」
キレた、いや、キレっぱなしの莉緒が勢いのままに、『直居覚醒』した。
全身に鱗が生えたと思うと、大きさはそのままに、龍人としての莉緒がそこに顕現した。
「おっと……覚醒者かよ……」
高桑は驚きながらも、未だ余裕の笑みは崩さない。
だが、莉緒の次の言葉で冷や汗を垂らした。
「勇器来臨。【青龍偃月刀】!」
「くっ……勇器だと……」
莉緒が青龍偃月刀で小手を放つ。
斬れた。
剣を持つ腕を斬られた天使が音もなく、ぐずぐずと崩れていく。
それは、色のついた塩の固まりになってしまう。
「こいつら……まさか……」
莉緒が次の天使を頭頂から唐竹割りにする。
やはり、天使は色つきの塩の固まりとして崩れていく。
「誰かの特殊能力でできてる!」
勇器なのか愛器なのか、それとも別の力なのかは分からないが、莉緒は確信する。
天使の叫びは、魔凱や莉緒の勇器と同じ物質、榎田研究員が教えてくれた『音を固めた物質』でできている。
つまりは人形に過ぎないのだ。
「せいっ! やあああっ!」
龍人の莉緒が一撃、二撃で一人、また一人と天使を塩に帰す。
「やべっ……」
途端に高桑が逃げ出した。
「あ、待て! 高桑あああ!」
龍人が吠えた。
しかし、数の上では三対三、明里と叶和に決定打がない以上、莉緒が追うことはできない。
高桑は逃げながら、次々と手近な扉を開けていく。
天使、天使、天使が続々と出てくる。
「気持ち悪っ!」
「ひょええ、皆さんめっちゃ、笑ってますけど……」
「くっ……この卑怯者がぁ!」
「ははは、こいつは戦術ってやつだ!
恨むなら、自分の頭の悪さを恨みな!
ああ、ついでに絶対的な差ってやつを見せてやるよ。
『直居覚醒』!」
天使の群れの中に、ポツンと赤い鬼が巨大な図体で立っている。
これが絵画だったなら、作者の脳内は酷いことになっているだろう。
怒りの体現であるレッドオーガとそれを祝福の表情で囲む天使たち。
狭い通路にびっしりと詰まった白と赤。
決してめでたくはないだろう。
「趣味の悪い風刺画みたい……」
明里はそう評した。
「ククク……俺様ニ近ヅケルカナ?」
言って高桑だったレッドオーガは天使の一体を掴みあげると、その膂力でぶん投げてきた。
「ひえっ……」
投げられた天使は叶和の近くを通過。
オオーーー! と叫びを発して壁に激突。
それから、おもむろに立ち上がって、背後から叶和を襲った。
「やばっ……」
投げれば弾体。躱せば背後を取られる。
それはたしかに、戦術だった。




