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魂鏡〈たまかがみ〉〜古代変身ディスクを宿せし者たち〜  作者: 月乃 そうま


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魂鏡三〇、レプリカ


 神浮橋入口付近。

 最近の『マナガルム』による自衛隊挑発事件の多発によって、座り込みデモの人数は随分と少なくなった。

 数百人規模で神浮橋、東浮橋、ビッグドリームブリッジと三か所で展開されていた座り込みデモだが、今では集まって数十人規模まで縮小してしまった。


 だが、これはある意味、不満のはけ口を内へ、内へと溜め込むようなものだった。

 デモに参加し、大きな声を出して、不満をぶつける相手がいるというのは、ある種のストレス発散効果があったのだが、『マナガルム』の登場によって、そこがいきなり戦場になるかもしれないという恐怖が生まれてしまった。


 不満が溜まれば、浮島区内では『ムーンディスク』保持者による暴走の危険性が高まる。

 『ムーンディスク』保持者になったものの、今まで『直居覚醒』が起きていなかった者たちまで、もしくは理性を残していた者までもが、暴走してしまう事例も起き始めていた。


 そうして、それならばいっそと『マナガルム』に傾倒していく者も出始めたのである。


 もう、『マナガルム』は三人では済まなくなった。

 堂々と『魔凱着奏』して神浮橋に現れたのはジャガーを模した鎧を着た怪物だ。


「我コソハ、ジャガーマンノ権能ヲ持ツ『マナガルム』デアル。

 腐リキッタ政府ニ断罪ヲ!」


 『マナガルム』が現れてしまえば、それでもと座り込みデモを続けていた人たちも逃げ散るしかできない。

 自衛隊側も無駄と知りつつも銃器によって進行を押しとどめようと、すぐさま防御陣を築き、発砲を開始する。


「撃て!」


 すでに各個での迎撃は意味をなさないことが分かっているので、必然、号令一下、集中攻撃が敢行される。

 身体の中心線に向けた攻撃である。


 しかし、ジャガーマンはその攻撃を華麗なフットワークで避けた。

 それは太古の精霊の踊りのようでもあり、一般的な動きとはかけ離れた無駄に決めポーズだらけな避け方にも見える。

 それはジャガーマンの余裕の表れなのだろう。


 そして、その余裕は、だるまさんがころんだを見ているように、ジャガーマンを自衛隊へと近付けた。


 ジャガーマンが一人の自衛官の前に立つ。

 それから、自衛官の持つ小銃を取り上げた。

 くにゃり、と小銃を片手で粘土でも弄ぶように曲げて見せる。


「コノ程度ナノカ……」


 ジャガーマンが自身のポテンシャルを確かめるように、手を握ったり開いたりしている。

 小銃を取り上げられた自衛官は、尻もちをついて、それでも逃げ出そうと必死に手足をバタつかせて逃げる。

 ジャガーマンは、次の獲物を探すべく、目を細めた。


 その時である。


「撃ち方やめろ。俺が相手してやる……」


 自衛隊の防御陣の後方から、巨大なライフルケースを担いだ男が歩いて来る。

 情報規制がされているからなのか、防疫服を着ていない。


「フン……弾速ノ早イ遅イデハ意味ナドナイゾ?」


「ああ、だからコイツを作らせてもらった……」


 男が取り出したのは、国宝指定されている七支刀と呼ばれる剣、それにそっくりだった。


「ナンダソレハ?」


「さて、名称は七支刀レプリカとあった……まあ、学者先生の実験らしい。

 ひのきの棒で戦えと言われりゃ、そうするしかないのが俺らの仕事でな……効果があるといいんだが……」


 中央の直剣を支えに、左右に枝が伸びるかの如く支剣が六本、その支剣を男が音叉にそうするように、小さな鉄棒で叩いていく。


 コォォォーーーン!

 カァァァーーーン!

 キィィィーーーン!

 リィィィーーーン!

 ゴォォォーーーン!

 ガァァァーーーン!


 各支剣ごとに異なる音が鳴って、それらが混じりあって、共鳴したかのように、ブォォォーーーン! と全体が鳴った。


「おら、どうした?

 来いよ! まさか怖いのか?」


「馬鹿ガ……呆レテイルノダ……銃ヨリ遅イノデハ、話ニスラナラントナ……」


 ジャガーマンが一陣の風のように動いた。


「点がダメなら線でってのは、あながち間違いでもないんだぜっ!」


 男は喋ると同時に、剣を振り切った形で止まった。

 残心というものだった。


 ジャガーマンの全身から血が吹き出した。


「ナッ……我ガ魔凱ガ……」


「やれやれ……どうにかなったな……昔の人間はこんなモンで戦ってたかと思うと、畏れ入るとしか言えないな……」


 手足がちぎれ飛ぶ寸前のジャガーマンはすでに動くことすらままならず、その場に倒れた。

 瞬間的に何度も切りつけられていたようで、それは男の剣技の凄まじさを物語っていた。


「麻酔が効くといいんだがな。

 嫌だぜ、コイツの檻代わりにされたら堪らん……」


 言って男は七支刀レプリカを大事そうにケースに戻した。


「お疲れ様です、水野少佐」


 男と同じケースを担いだ女性が男に声を掛ける。


「坂本中尉、命令は後方待機だろ」


「そうなんですけど、この子の使い心地を水野少佐の言葉で聞いておきたいと思いまして……」


「まあ、斬れはする。

 坂本中尉ほどの腕があればの話だ。

 もし富士で言われた通り、音が関係するなら、この音を録音して弾丸にでも仕込む方が、よほどマシだけどな……」


 水野少佐と呼ばれた男は、うんざり顔でそう答えた。

 個人の力量で運用される兵器は現代にはそぐわない。

 そういう顔だった。


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