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魂鏡〈たまかがみ〉〜古代変身ディスクを宿せし者たち〜  作者: 月乃 そうま


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魂鏡二五、マナガルム


 MD研究室に戻った橙里と莉緒は、少しよそよそしくも、お互いを意識するような、そんな雰囲気のまま待機室に着く。


 高見班の面々はそれぞれ報告書を作成したり、河童男を拘束したりするとかで、待機室にはいない。


 莉緒は高見班の実務員たちから、ことの顛末を教えられて、死にかけていたこと、それを橙里が救ったこと、それから莉緒が問答無用で橙里を殴ったことなど聞かされて、かと言って素直に謝るのもできず、もじもじ、そわそわ、と所在なさげに目を泳がせる。


 橙里も橙里で、思いの外痛かった『弟ガチ泣き拳』による心理的抵抗と、『アースディスク』の見せた幻視が食事の話だったこともあり、つい莉緒に向かって口走ってしまった「ごちそうさま」の反省が相まって、はぁとか、ふぅとか、そんな言葉が口から漏れる。


 ひと言で言ってしまえば、お互いに気まずい。


 こういう時、きっぱり好き嫌いを口にする明里がいれば違ったのかもしれないが、この場には橙里と莉緒の二人きりだ。


 がちゃり、と扉が開く。


「おかえり、二人とも大変だったって?」


 風呂上がりのような、さっぱりとした顔で義己が入って来る。

 実際、検査の後、シャワーを浴びて来たのだから、タオルで頭を拭いたりしている。


「いや、まあ、うん……」「ええと、まあ、そうね……」


「なんだよ、二人とも歯切れ悪いな……」


「……あ、そういえば義己っちは『マナガルム』って聞いたことある?」


 橙里が思い出したように尋ねる。

 すると、義己は深刻そうな顔になって、こちらも途端に歯切れが悪くなる。


「まあ……な……」


 橙里もしまったという顔になって、どうにか言葉を紡ぐ。


「今日の河童になった人、『マナガルム』の関係者らしくて……その……瓜生って名前、出してたから……」


「瓜生って、瓜生(うりゅう)(ハジメ)

 たしか、あんたたち同じクラスよね?」


「ああ……喧嘩になるのはいつも俺と高桑だけど……瓜生は高桑の入ってる不良グループの頭って話だ……」


 義己が後悔の念に苛まれながらも、そう口にする。


「じゃあ、その不良グループが『マナガルム』?」


「たぶん、な……」


 義己は瓜生に誘われて『ムーンディスク』制御のために知らなかったこととは言え、人を殺めたトラウマがある。

 たとえ、誰が許したとしても義己はそれを背負っていく覚悟はしているが、そのことに触れようとすると、何とも背筋を冷たい物が走る。


「俺が連れて行かれた場所は、もう榎田さんに伝えてある……」


「そっか。じゃあ、榎田さんたちの判断待ちだね」


 話はここまでという風に橙里が無理やり割って入る。


「あ、ああ……」


「高桑か……あいつにもケジメつけさせなきゃ、ね」


 莉緒が呟く。

 葵の件は当然、同じ剣道部である莉緒にも届いている。


「まだ捕まってないらしいな」


 義己が橙里に確認するように聞く。


「区役所からは何も……榎田さんも探してくれるとは言ってくれたけど……」


 三人とも捕まった『ムーンディスク』保持者がどのような待遇になるのかは知らない。

 そもそも、法律がないのだ。

 『覚醒風紀委員会』では、その場の対処だけで、その後は『MD研究室』か『浮島区役所・特別事案対策課』に任せてしまう。

 基本的には単なる暴走ならば病院、悪意が認められる、または再発の危険性が高いと『MD研究室』で拘束らしいとしか知らない。

 ただ今のところ大きな問題が出ていないということは、それなりに効果的な拘束なりができているのだろうと推察はできる。


 怪物のいる島という汚名がある限り、外との接触は厳しいというのが大方の見方というものなのだ。


「もしまた学校に来るようなことがあるなら、絶対に教えなさいよ。

 二度と他人を襲えないようにしてやるんだから!」


 莉緒の息巻く姿に、義己と橙里は、ひぇっ、となるのだった。


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