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魂鏡〈たまかがみ〉〜古代変身ディスクを宿せし者たち〜  作者: 月乃 そうま


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魂鏡二三、兎

遅くなりましたm(_ _)m


「愛器光臨! 霊搗(ひつ)大杵(おおきね)!」


 橙里が振り上げた拳に光が満ちて、手には両端が杵になっている大杵のミニチュアのような物が握られている。


 河童星人の背後から、握り込んだミニチュア大杵で殴り掛かる橙里には、当初ぶちかましで車に突っ込んだ時の怪我はもうない。


 河童星人が振り返るが、もう遅い。


 フォーーーン! 魔凱によって得た河童星人の鎧が、打撃の無効化を示すように鳴るが、起こったのは不思議な効果だった。

 黒地に緑のラインが入った鎧が、橙里に打たれた箇所だけ白く変色し、ぷにぷにとした餅になったのだ。

 みょ〜んと餅よろしく、橙里の拳に鎧の一部が引っ付く。


「ナニヲッ……」


 殴られ、左肩に違和感を感じたものの、ダメージはない。

 河童星人は白く変色した鎧を見たが、気に止めることなく右の張り手を橙里に叩きつける。


「智器照臨、水爆張リ手!」


 橙里はアッパー気味に繰り出された張り手を腹に食らって、数メートルほど打ち上がる。

 作業服の上半身が爆発でちぎれ、橙里の全身が水蒸気による水ぶくれと裂傷で見るも無惨な姿になってしまう。


「望月! このっ!」


 莉緒の青龍偃月刀が河童星人の左ふくらはぎを斬り裂く。


「グヌッ……我ガ曲霊ヲ斬リ裂クトワ……」


 ガクリ、と河童星人が(かしず)くような格好になる。


「片腕、貰うわよ!」


 莉緒が青龍偃月刀を大きく振りかぶる。

 だが、河童星人の左脇から覗かせた右手の先から超高圧水流斬(ハイドロカッター)が後方に向けて飛ぶ。

 ソレは莉緒の左脇腹を貫通して点を穿つ。


「荒キ波ヨリ意図ガ漏レ出タナ……愚カナリ……」


 点はそのまま莉緒の左へと移動して、その左脇腹を切り裂いた。


「かはっ……」


 莉緒がその龍の口から苦しそうに血溜まりを吐いた。


 ドシャリ、と莉緒が崩折(くずお)れる。


 反対に河童星人は左ふくらはぎから血を吹き出しながらも、立ち上がると、辺りを睥睨(へいげい)する。


 遠巻きにしながらも、それら一連を動画撮影していた一般市民たちは逃げ出し、MD研究室の実務員たちは息を飲んで覚悟を決めようとしていた。


 シュウシュウ……と音がして、水蒸気爆発の痕が生々しい橙里が、跳ね起きる。

 橙里は全身に痛みを感じながらも、その傷が癒えるものだと確信していた。


「逃げたいところだけどさ……浅黄が頑張ってるのに、俺が逃げちゃダメだよね……」


 裂けた皮膚が復元して、禿げた白い毛が元のフサフサとした毛皮に戻っていく。

 橙里は、ぎゅっとミニチュア大杵を握り締めて、代わりに膝を緩めると、一瞬で跳んだ。


 河童星人は一瞬のことに橙里が消えたように見えた。

 それから河童星人は慌てて意識を切り替える。

 魔凱着装した者は全ての能力が跳ね上がる。

 それは元・力士だった男の気配を読む力も例外ではなく、土俵の円の中ならば相手が何処にいるか分かるという力が増幅され、倍ほどの距離で相手がどう動いているかも理解できるような察知能力を獲得していた。

 背後から河童星人を苦しめた莉緒が脇腹を穿たれたのも、この力によるものだ。


 河童星人は、はたと気付く。

 上だ。


 橙里は兎としての強靭な脚力をジャンプ力に変換して、跳び上がっていた。

 しかし、河童星人が気付いた時には既に遅い。

 橙里がそのことに気付いていた訳ではなかったが、河童星人の気配を読む力は上に対して、ほぼ距離を持たなかった。


 結果として、橙里の兎としての力、脚力を活かしたキックが河童星人の頭頂部にヒットしたのだった。


「グアアアアアアァァァッ……」


 河童星人の頭頂部、いわゆる河童の皿は弱点とされている。

 皿が乾いた程度で全身に力が入らないとされているのに、その皿が割れてしまったら。


 河童星人の頭頂部から水が噴き出す。

 それは何千リットルという量の水だ。

 噴水どころか、消防ホースから吐き出される水のように、高く細く遠くへと水が舞った。

 まるで雨のように辺りへと落ちる水は、そこだけ集中豪雨が発生したかのようだった。


 河童星人が干からびていく。


 鎧が(ほど)けて、後にはやつれた男が残された。


 橙里は男が動けなくなっているのを確認すると、、慌てて莉緒の元に駆け寄るのだった。


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