魂鏡二二、河童星人
鎧の河童星人は左手を前に、右手を少し引いて、全身の力を弛緩させつつも、そこはかとない緊張感を全身に満たして立っていた。
「私ハ帰ル、邪魔ヲスルナ……」
「帰すわけないでしょ!
『ムーンディスク』は未知の危険が溢れてるのよ!
大人しく投降なさい!」
「邪魔者ハ、排除スル!
智器照臨、超高圧水流斬!」
河童星人が手刀を振ると、それに合わせて指先から水の線が走る。
龍人となった莉緒は本能的に危険を察知し、青龍偃月刀で受けるのではなく、その射線を躱した。
射程にして数メートルだろうか、水流は地面を抉り、河童星人の指先の動きに合わせて細い線を描いた。
莉緒はその水流に戦慄を覚えた。
昔、動画サイトか何かで、水を超高圧で射ち出すと何でも切れますとかいう科学実験動画を観た記憶がある。
その時は、鉄板をいとも容易く輪切りにしていたと記憶している。
水を操る龍人としての力で、それを再現できないかと模索中だった莉緒としては、その正解を見た気分ではあるが、それを敵が使ってくるというのは想定外のことであった。
いかな鉄壁を誇る龍人の鱗といえ、銃弾に傷つく程度の強度ではあるのだ。
無防備に食らっていい攻撃ではないと判断した。
青龍偃月刀の一撃は、最初こそ頭に血が上って暴走気味に放ってしまったが、河童の『ムーンディスク』を発現させた相手を斬り裂くには充分な威力がある。
狙い所が悪ければ、相手を殺傷してしまう。
本来ならば、殺傷することなく取り押さえるためにこの力は使うべきだ。
必然、莉緒の動きは消極的なものにならざるを得ない。
「やあぁぁぁっ! はぁっ!」
青龍偃月刀を回して、石突きでの刺突を繰り出すが、河童星人の鎧に当たっても、フォーーーン、と力ない音が響き、致命打にはなっていない。
一方、河童星人の『超高圧水流斬』は容赦なく莉緒の正中線を狙って繰り出される。
莉緒はこのままではまずいと悟った。
手足の一、二本は両断してやるという勢いで気合いを入れ直して、右に左にと青龍偃月刀を振り回す。
しかし、命を奪うべく戦う河童星人の方が思い切りよく動ける。
MD研究室の実務員たちは遠巻きに見るしかできない状況。
なんとなれば河童星人の超高圧水流斬の被害を抑えるために、一般市民を下がらせるくらいしかできない。
そんな中、河童星人に後ろから躍りかかったのは、『直居覚醒』を果たし、復活した橙里だった。




