20話: 協力と孤立の境界線
迷宮の階層が変わり、空間は静まり返っていた。
壁も床も揺らがず、幻影も現れない。
しかし慧は、逆にそれが異常だと瞬時に理解する。
「……静かすぎる。これは罠だ」
雫も頷く。
直感が、この空間に潜む圧力を告げていた。
前方に現れたのは、複数の参加者たち。
その表情は緊張し、互いに視線を避けている。
「協力するべきなのか……」 誰かが呟いた。
このフロアでは、情報断片は一切提示されず、
かわりに“参加者自身”だけが情報源となる。
誰を信じ、誰を疑うか。
協力か、孤立か。
判断そのものが試練となるステージだった。
慧は周囲の呼吸や動きの癖を観察し、
一人ひとりの意図を読み解こうとする。
雫は、空気の流れや会話の抑揚から、
不自然な“違和感”を感じ取っていた。
「慧……あの二人は協力者としては危ない。
気配が濁ってる」
「わかった。距離を取ろう」
だが、その判断が周囲を刺激した。
「おい……二人だけで何をコソコソしてる」
「情報を隠してるんじゃないのか?」
疑いの連鎖が広がり、場の空気が一気に険悪になる。
慧が一歩前に出る。
「落ち着け。俺たちは何も——」
その瞬間、背後で誰かが走り出し、
別の参加者に飛びかかった。
叫び声。
混乱。
疑念が暴走し、空間は一気に戦場のような緊張に包まれる。
「ここは……協力と孤立、どちらかを選んだ瞬間に“試される”ステージなんだ……!」
慧は事態を読み、雫と位置を変え、
混乱を避けつつ最適な行動ルートを確保する。
「雫、今は静観だ。
この混乱の“収束点”を待つ」
「うん……わかった」
二人は誰とも組まず、誰も敵にしない、
絶妙な孤立状態を保ちながら、
このフロアの核心へと歩を進める。
協力は時に刃となり、
孤立は時に盾となる。
その境界線に立ちながら、
慧と雫は次の扉の先へと進んだ。




