16話: 迷宮の核心:新たなる心理戦
迷宮の核心を突破した慧と雫の前に、さらに深い領域――
「心理戦区画」が姿を現した。
そこは、情報の揺らぎではなく、“心理そのもの”を操作する空間だった。
参加者の感情の波が可視化され、恐怖・迷い・期待・疑念が霧のように漂う。
「……ここは、心を読まれる側にも回る場所だ」
慧の声は低く、慎重だった。
雫は霧に触れた瞬間、何かを感じ取る。
「情動……私たちの心理が、試されてる」
進めば進むほど、二人の思考や感情が映像となって浮かび上がる。
その中には、互いがまだ口にしていない不安や迷いもあった。
心理戦区画では、他の参加者も同じように心が露出している。
その情報をどう読み取り、どう利用するかは各自に委ねられていた。
ある参加者が、慧の映像化した記憶を見て微笑む。
「へぇ……君にも弱点はあるんだな」
挑発。その瞬間に揺らいだ感情の波を、空間が誇張して増幅する。
反射的に動けば、心理の罠に嵌る――慧はそれを理解していた。
「……雫、感情波を抑えて。揺れると空間が反応する」 「うん。でも……全部丸見えなのはキツいね」
二人は互いの心理の揺れを補完し、
可視化された心の波を読み取りながら慎重に進む。
突然、空間に巨大な「疑念の影」が立ち上がった。
参加者たちの恐怖と不信が形を成したものだ。
「これ……みんなの“疑う心”が固まってるんだ」
雫は影の動きを読み取り、慧は影の形成情報を分析する。
「動きのパターンは単純に見えるが、実際は複層構造……
でも、弱点は必ずある」
影が放つ揺らぎの一瞬の空白――
雫の直感がそれを捉え、慧の分析がその穴の位置を確定する。
二人は迷いなく駆け抜け、疑念の影の隙間を突破した。
空間が静まり、道がひらける。
「……突破成功」
雫が微笑んだ。
慧も静かに息をつきながら言う。
「ここから先は、もっと“内部”に踏み込むことになる」
それは、心理戦がさらに深くなるという予兆だった。




